劇場公開日 2022年2月11日

「前作を超える骨太のミュージカル」ウエスト・サイド・ストーリー オカピさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5前作を超える骨太のミュージカル

2022年2月14日
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鑑賞方法:映画館

興奮

ミュージカル好きの私も満足の、よく出来た映画でした。さすがスピルバーグ、面白かったです。
『ウエストサイド物語』は、61年の映画は、もちろん、3年前にアラウンド東京でやった舞台も観ました。
今回も、ストーリー自体はオリジナルに基づいていて、新しく解釈がされていたり、エピソードが変わっていたり、ということはなかったです。

冒頭のカメラワークがすごい。さらにセットの素晴しさが際立だっています。
50年代後半、ニューヨークにリンカーンセンターを中心とした文化施設を建てるために、ウエストサイド60番街辺りに住む、貧しい若者の、縄張り争い、恋や、やるせなさや、豊かなアメリカに対する憧れが、名曲と共に展開していきます。オペラハウスに美術館、高等な文化のために、貧しい人々の行き場がなくなるというのが、なんとも皮肉なものです。この話は、当時の社会的な問題を孕んで、生まれたものだったのです。

今回の役者さんたちは、厳しいオーディションを勝ち取り、スピルバーグ映画に出演するために、演技だけでなく、歌、踊りに精進したのだと思うと、すごい!と思いました。とにかく人気アイドルを主演させて、ちゃっちゃ、と作った学芸会のようなものを、ミュージカルと呼ぶ、どこぞの国とは違いますね。アメリカのショービズに関わる俳優さん達の、層の厚さを思い知らされました。

ウエストサイドストーリー自体は、ロミオとジュリエットをベースにしたお話ですので、ラスト、死んだと思わせておいて…というところも、よくわかるように展開して、納得でした。今回、際立って強調されたジェッツとシャークスの対立よりも、基本はトニーとマリアの悲恋の話なのだ、とは思いますが、個人的には、トニーはなぜこの人?と思いました。この映画の減点箇所はそこです。

私のイチオシはリフ役のマイク・ファイスト。少し前に映画になった、ディア・エバンハンセンのコナー役を舞台で務めていた俳優さんです。(映画は出てない)

また、映画の終盤で、61年の映画で好演した、リタ・モレノが歌うsomewhere に心揺さぶられました。まあ、1番の盛り上がり箇所に、これを持ってくるスピルバーグのあざとさに、やられたわけですが。
ニューヨークの話なのに、アフリカ系もアジア系も出でこない。50年代ですから。でも、見ている私たちの脳内に、見えない人種の対立が浮かび上がってきます。スピルバーグが敢えて、オリジナルに忠実に作ったのは、いつの時代も、人間の愚かさは繰り返される、ということを伝えたかったからではないでしょうか?

歌だけでなく、ダンスもキレキレで素晴らしく、セットといい、カメラワークといい、ミュージカルに違和感がなければ、見応えのある映画だと思います。おすすめします。

オカピ