劇場公開日 2022年2月11日

「スピルバーグはミュージカルをもっと信じるべき。」ウエスト・サイド・ストーリー カツベン二郎さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5スピルバーグはミュージカルをもっと信じるべき。

2022年2月12日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

言わずと知れたストリートミュージカルの金字塔で不朽の名作「ウエストサイド物語」のリメイク版。
(いつからオリジナルは「ウエストサイド物語」で本作リメイク版は「ウエストサイドストーリー」になったのかw)
自分自身にとっても幼少期に母がよくサントラを聴いていた事もあり、特別な映画の一つである。
そう言った意味でも、いかに巨匠スピルバーグと言えども勇気があるなと思いつつの鑑賞だったが、やはりオリジナルと比べざるを得ず、いただけない部分にどうしても目がいってしまった。
特にオリジナルでは説明不足(とは全く思わないが)な部分をドラマパートで補完しようとした事はミュージカルを信じる事ができない演出家の臆病なところかなと感じた。
警察やドラッグストアのシーンは全くもって不要で、LGBTの子に至っては何の効果を狙ったのかが全く理解できず、上映時間をただ長くしただけにしか感じられなかった。
エグゼクティブプロデューサーとして名を連ねていたオリジナル版の主要キャストだったリタ・モレノ(ご存命だったとは)がジェット団が出入りするドラッグストアの女主人を演じており、仮に彼女へのリスペクトだとしても時間を割き過ぎた感は否めない。(お前が歌うんかい!と言うのも含め)

オリジナルではキレッキレのダンスと高く上がった脚で世に強烈なインパクトを残したベルナルド役のジョージ・チャキリスとラテンのノリで明るいダンスを披露したアニタ役のリタ・モレノが完全に主演の2人を喰ってしまった印象(2人ともアカデミー助演賞を獲得)があるが、それらはあくまでも偶然の産物であり、本作では意図通り全体にバランスの取れた配分となっているが、その分無難な印象を受けた。

ただ、そうは言ってもミュージカルパートになるとやはり胸が熱くなり「マンボ」、「トゥナイト」、「アメリカ」(脳が痺れた!)、「クール」、「マリア」では鳥肌が止まらないほどの感動を覚えた。
特にアニータ 役の アリアナ・デボーズのダンスとマリア役のレイチェル・ゼグラーの歌唱は目を惹くものがあり、今後注目していきたい女優になった。
またオープンセットや空撮シーンはオリジナルよりも完成度が高く思え、それだけでも十分見る価値のある映画だと思った。

カツベン二郎