「600年の歌」犬王 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
600年の歌
能楽なんてまるで馴染み無い世界。言葉通り能を付けて演技や舞踏をする日本の伝統芸能。
二つの朝廷が睨み合っていた南北朝~室町時代に実在した能楽師・犬王を、大胆解釈で描く。
映画祭でも軒並み評価は高く、何より鬼才・湯浅政明監督の新作という事で鑑賞。
が、馴染み無い世界。話や設定も入り難く…。独特の湯浅ワールドが拍車をかけ、正直期待ほどではなかった。『夜は短し歩けよ乙女』『夜明け告げるルーのうた』の方が好きかな…。
劇中たっぷり披露される歌唱やパフォーマンスは圧巻!
伝統芸能・能を題材にしていながら、ロック・ミュージカル。
琵琶をギターのように弾き、現代音楽が鳴り響く。
湯浅監督ならではの異色さと斬新さ。
大友良英による音楽や楽曲が素晴らしい。
見事な歌声を聴かせてくれた主演二人のボイス。
犬王の声はアヴちゃんとか言う中性的な魅力のバンドのボーカル。本業なので当然だが、驚いたのは森山未來の上手さ。
魂の熱唱は聞き応えがあった。
醜い容姿故面を被り、人を食ったような言動の犬王。
ある呪いで盲目となった琵琶法師の友魚。
歌う事でこの世界を生き抜いていく。
斬新で見た事ない歌がウケ、ヒット曲を連発。
その評判は人々や朝廷の耳にまで入るのだが…。
時代の寵児というのは瞬く間に稀有な存在となり、その存在を疎ましく思われる。
朝廷から不要とされ、彼らの末路は悲しい。
地縛霊となってこの世をさ迷い続ける友魚。
そんな彼をようやく見つけた犬王。
悲劇的でもあるが、天に召されていく。
600年の時を経て。
彼らの歌は時代に届く。