「私とこの作品は“糸”で結ばれていなかった」糸 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
私とこの作品は“糸”で結ばれていなかった
邦画のヒット・ブランドの一つ、名曲モチーフ。
近年だと中島美嘉『雪の華』、GReeeeN『キセキ』、ちょっと前だと一青窈『ハナミズキ』、森山良子×BEGIN『涙そうそう』など。
いずれもヒットしたり、話題になったり。
本作はいよいよ、日本を代表する歌姫、中島みゆき! 曲は、『糸』。
聞くと、あ~この歌か!…と歌に疎い私でも知っている。
見る前はちょっと期待していた。
何故か名曲モチーフはベタなラブストーリーが多いが、本作はそうであっても、平成~令和に渡る愛の軌跡。話も良さそう。
監督は瀬々敬久。3度目の共演となる菅田将暉&小松菜奈他、キャストも豪華。
今のところ個人的この手のジャンルの暫定1位は『キセキ』なのだが、ひょっとして…?
ところがどっこい!
共に平成元年産まれ。
平凡だが、一途な蓮。母親の恋人からDVを受けている薄幸美少女、葵。
13歳の時に出会い、二人で逃避行をしようとする。
それぞれの道を歩み始めるも、再会とすれ違い。
別の相手と結婚し、自分の夢を成功させ、今度はもう、淡い過去の思い出になったかに思えたのだが…。
この手のジャンルでは『ハナミズキ』といい勝負。まさか、ここまでベタだったとは…!
いや何も、ベタがいけない訳じゃない。ベタはベタでいい。
力量不足は作品そのもの。
すれ違いや再会の繰り返しは勿論の事、悲恋、悲運…お馴染みのオンパレード。蓮や葵が幸せや成功を手に入れても何となく察しが付く。
過去、現在の交錯。そこに、平成の事件や出来事を背景にして、平成と共に生きた私たちの涙をさらう。こういうの、例えば『弥生、三月』でも同じなのだが、あちらは捻りや巧く物語と絡めていたのに対し、こちらは捻りも無いし、ただの泣きや悲劇の出汁にしていたような感を受けた。
葵はキャバクラ嬢時代に出会ったイケメン社長と一緒になり(その後別れ、シンガポールでネイリストとして大成功! ワォ!)、蓮は地元・北海道のチーズ工場で出会った先輩・香と結婚。
人生なんてどんな風に転がり、誰と出会うか分からないが、オイオイ、お互いにとって“運命の糸”で結ばれた相手じゃないのかい…?
別に未練だらだら描けとまでは言わないが、何だかダイジェスト的で、登場人物らもステレオタイプ。これらも作品の作り不足。それ故、ラストシーンの再会も感動に欠けた。
ほとんど菅田将暉&小松菜奈の主演二人の為の作品。
ナチュラルな演技、葛藤、複雑な内面、繊細さは、さすが。作品にいまいち感動出来なくとも、二人の掛け合いや佇まいには魅せられる。なるほど、公開時、噂も出るわな。
共演に成田凌、斎藤工、山本美月、倍賞美津子、二階堂ふみ(初登場時気付かんかった…)他まだまだ豪華なキャストが揃っているが、見事なアンサンブル!…には後一歩。
しかし、全キャストの中に、それこそ主演二人すら抑え込んでしまうほどのMVPが。
榮倉奈々。
北海道で出会い、蓮と結婚した香役。
明るい性格で、まだ過去を引きずる蓮を叱咤激励する。
実はその一方、香自身も未だ引きずる過去の悲恋あり。蓮に叱咤激励される。
こういう事があって、お互い…って、こっちの方が運命的じゃない?
結婚。妊娠。
幸せな時にそれは告げられた。
ガン。
命覚悟で出産。
残り僅かな命を、産まれてきた愛娘と愛する夫に捧げる。
この時香が娘に掛けた“○○な人になりなさい”という言葉、蓮と話した“糸”の意味…。
本作の全てのような気がした。
彼女が主役で見てみたかったくらい。(いや、それとも助演だから良かったのか)
榮倉奈々に★一つプラス。あれ、と言う事は、本来の採点は…。
共に平成元年に産まれ、平成と共に波乱に満ちた半生を生き、再び運命的な再会を果たす。
新しい時代、令和と共に。今度こそ、君と共に。
この手を離さない。運命の糸を。
今、令和を生きる私たちにとっても、ハッピーエンド。
でも残念ながら、私とこの映画は運命の糸で結ばれてはいなかったようだ。
(あ、勿論、中島みゆきの曲はいいんだけど、ちょっと使い過ぎと、エンディングの菅田将暉によるカバーが…(^^;)
こんばんは。弥生3月派です。私もやはり。
榮倉奈々が運命の糸じゃない?確かにちょっと思いましたね。彼女の存在感が良かったに同意です。僕は永島敏行さんも響きました。
共感をありがとうございますm(__)m!
近大さんのレビュー とても共感しました!榮倉奈々さん この病人役のために2週間で7Kgも減量したそうです…凄まじい女優魂!と言うべきなんでしょうが…健康的には絶対ダメなので、褒めたくないです。演技は素晴らしかったですが。
たしかに 中島みゆきさんの曲 使い過ぎましたよね。