「懐の深い物語」糸 森のエテコウさんの映画レビュー(感想・評価)
懐の深い物語
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始まりから20分で物語に引き込まれ、終りの20分で感情が持っていかれた。
幾度となくすれ違う運命の二人の物語は、ドラマとしてありがちではあるが、抑えられた演出で嘘臭くならず、物語が進むにつれ気持ちが静かに高揚していった。
そして、後半になると心の汗が止まらないのであった。
中学生役の二人が成長した二人に移り変わる様に違和感がなく、スッと物語を追って行ける。
「泣いて悲しんでいる人を見たら抱きしめてあげなさい」という亡き母の言葉を実行する娘に、気づかされ、励まされ、背中を押されて前に進んで行く大人たち。
この作品は、中島みゆきの『糸』『時代』『ファイト』という楽曲を縦糸に、中島みゆきの出身地である北海道の地に生きる人々を横糸に織り成された平成の世の中で巡り会う人々の「仕合わせ」の数々を描き、今を生きる全ての人々の日常を受け入れようとする、北海道の大地のように懐の深い物語である。
心の汗は日常を洗い流し、明日に向かう気力を養い、デトックス効果実に大きな映画であった。
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