ジョアン・ジルベルトを探してのレビュー・感想・評価
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私もジョアン・ジルベルトに感染して20数年なので
私もジョアン・ジルベルトに感染して20数年なので、シンパシーを感じながら観ていました。(私の場合は、「Estate」という曲でした。)
この映画は、ガショ監督自身が、先に憧れのジョアンを探す旅をしてたマークにも憧れるようにして、自身も憧れのジョアンを探す映画で、それを観ながら私も監督の探し旅に憧れました。リオの温度が感じられるような旅の風景にも憧れます。
会えない神様を探すけど、、、というのは、まるで「ゴドーを待ちながら」みたいだと思いました。
ドキュメンタリーではありますが、冒頭と最後のシーンの映画的演出でドキドキしました。
けれど、ジョアンが地球上にいて、あのリオの夜の灯りのどれか一室にいるんだと思うと、限りなく低い可能性にも希望が持てますが、私がこの映画を観て憧れて、これから自身でリオに探し旅に出ようとしても、もうその可能性はゼロになってしまった訳で、寂しい限りです。
昨年12月に先に亡くなってしまったミウシャとジョアン・ドナートの共演シーンも貴重で微笑ましかったです。
最高でした
最高の映画でした。こんな話が現実にあるものなのかと驚くようなストーリー。伝説と言われるミュージシャンがメディアに出ないどころか、友人や家族にすら会わない生活を送り、今なお音楽を作り続けてるなんて想像できますか?成功者が隠居して穏やかな余生を過ごすとかそういうレベルの話ではないです。作中にも出てくるように「ジョアンジルベルトは本当に生きているのか?実在の人間なのか?」と疑いたくなるような状況で、なんとかして本人と会うために試行錯誤する道中を記録した映画です。
作中の音楽も素晴らしいです。有名な曲が作られた背景なんかも垣間見えて、にわかボサノヴァファンとしては興味深かったです。とくに「小舟」のシーンは映像と曲がマッチしていて鳥肌が立ちました。
日本でボサノヴァと言えば心地よい BGM の印象がありますが、この映画を見ると「歌」なんだなと思い知らされます。みんなギターひとつあればボサノヴァを歌い出すんです。
そしてラストシーンもこの作品を象徴する素晴らしいものでした。もしラストに本人が笑顔で出てきて握手でもしていたら興ざめでしょう。まさにこれしかないという終わり方でした。
監督が主人公
ジルベルトは何処?
原題の通り、終始この想いを抱えながら、演者も観客も、当て所なく彷徨う。
事の発端は、ボサノバとその父ジョアン ジルベルトに魅せられたドイツ人、そしてその邂逅を目指した著書を読んで触発されたフランス出身監督の10年に及ぶ憧憬。
ついにボサノバの故郷ブラジルに降り立った監督は、ありとあらゆる伝手を頼りに、本家本元との対面、せめてもの一見を目指す。
ドイツ人の著作に協力した現地エージェンシー、元妻、料理番、理容師、共演者、共作者、そしてなんとマネージャー!!
それらの人々への取材を通して、ジルベルトの人となりが薄皮を剥ぐように徐々に明かされる。
しかし肝心の本人は、いつまでたっても梨の礫。
追いかけても追いかけても、掌からこぼれる星砂のように一瞥もできない。
粛々とその過程を紡いでゆく冷徹なまでの映像。これは夢か幻か。エンタメとは対極な、これぞドキュメンタリー、これぞカフカ的欧米の個人主義的芸術伝統文化。
解る人にだけ伝わればいい、これが私にとって今最も大事なイベントなんですと表現されては、60年ほど前のこの世に、ボサノバという新しい音楽を産み落とした人の生い立ちや経緯を知りたいなどという浅はかな興味本意は、木っ端微塵に打ち砕かれてしまったのであった。
ひとつ、客席に、大きなギターケースを背負われた、スペイン語を解される異邦人の男性がおられ、時折「クスリ」と取材の台詞に反応されていたのが、せめてもの救いであった。
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