劇場公開日 2019年8月24日

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「意外にもミステリー映画だった」ジョアン・ジルベルトを探して ローチさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5意外にもミステリー映画だった

2019年9月29日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

ミュージシャンを扱ったドキュメンタリーは近年すごく多いのだけど、これはその中でもかなり異色な作品だった。まず、ジョアン・ジルベルトという、隠居した伝説のボサノヴァミュージシャンを探す監督の旅を捉えた作品なのだが、一向に見つかる気配がなく、本当に存在しているのかという気分になる。まるで、ありもしない都市伝説でも追いかけているんじゃないのかという思えてくる。監督がジルベルトを探すために参考にするのが、かつて同じようにジルベルトを探していたドイツ人ジャーナリストの本なのだが、このジャーナリストが本の刊行後すぐに自殺しているという事実が明かされると、映画はミステリーの様相を呈してくる。ジルベルトを知る人物の1人は彼に近づくことは危険だと告げたりもする。
一体ジョアン・ジルベルトは何ものなのだと、ボサノヴァに詳しくない人でも引き込まれていく。ラストの終わり方も味がある。音楽家よりも、音楽家に魅せられた人の心の迷宮を描いたような作品だ。

杉本穂高