「革新性を求めた評論家が映画を撮るとこうなるといった作品」気狂いピエロ カツベン二郎さんの映画レビュー(感想・評価)
革新性を求めた評論家が映画を撮るとこうなるといった作品
30年以上前に鑑賞して以来だが、2Kリマスターというものだと映像が美しすぎて作品との相性はどうかと思ったが、海、空、洋服、ペンキ、ダイナマイトなどの原色が鮮やかに映え、古いテレビとレンタルVHSでの初見とはまた違った印象だったため、改めていま劇場鑑賞して良かったと思った。
終始、詩的で哲学的な会話が繰り返されることから、登場人物達がシチュエーションに見合ったリアクションを取ってくれず、観ている側が当たり前のこととして期待するやり取りにはならないため、意味がわからんという人がいるのは仕方がなく、映画を難しく考え始めた時代の代表作であり、当時としては最先端でシャレオツで極めてアーティスティックな作りであった事は理解した上での鑑賞がマストな作品かなと思う。
本作は世界中の数多の評論家や先生達が批評し論じていることから、作品の本質や作り方などついて何かを言う事は控えるが、現代においても色褪せず誰もが面白く鑑賞できる作品かというとそうではなく、その時代であったからこそその時代の知識層に評価される類の最高峰の作品であった事は間違いないのではないかと思う。
しかしながら作家性が前面に出過ぎて鑑賞者に寄り添うようなエンタメ性が全く見られないところや役者の個性を活かしきれていない印象があり自分には合わない映画である事を再認識した。
ジャン=ポール・ベルモンドはゴダールと共に世に出たと言っても良い役者だが、きっちりとスーツを着て、髪型もこざっぱりとしているにもかかわらずちょい悪感を醸し出しているところがカッコいい。
拗ねた顔立ちとタバコがそう見せるのかはわからないが、この作品を機にゴダールと決別したというのは何となくわかるような気がした。
余談だが、
ピエロと呼ばれ必ずフェルディナンだと言い返すのは「児島だよ」的で好きなシーンだが、楽屋落ちか何かと思うのは単なる深読みだろうか。