「クセになる“一周回って新感覚”なジャパネスクホラー」恐怖人形 ハル⊿映画好きさんの映画レビュー(感想・評価)
クセになる“一周回って新感覚”なジャパネスクホラー
VFX、CG全盛時代に あえてアナログ感にこだわって作られたホラー意欲作。
アイドル映画でしょ? とナメてかかると完全に意表を突かれるだろう。
ある種 古典的で王道ながらカルト&キッチュな風合いを持つ
ネオジャパニーズホラーエンターテインメントの誕生だ。
大きくなった日本人形がチェーンソーをもって追いかけてくる姿は
恐怖と同時に笑いも必然的にもたらす。
笑い、悲鳴、恐怖、怒りといった人間の感情とは、そも薄い皮一枚で表裏が入れ替わるもの。
この映画はその感情を絶えず刺激的揺さぶってくる。
笑えるけど怖い。怖いけど笑っちゃう。
そんな、映画というフィクションを味わう醍醐味を
存分に味あわせてくれる「コワ面白い」作品。
「死霊のはらわた」シリーズや「スパイダーマン」を撮った
サム・ライミが大好きな僕はこういう作品が大好き。
おそらくサム・ライミもコレ気に入ると思うな。
主演の小坂菜緒は、実年齢より年上の女子大生を
リアリティをもってナチュラルに好演。
映画の王道よろしく 出来事を通して一回り逞しく成長する姿を見せてくれる。
世間が持つアイドルという先入観を確実に超えてくる
演技力の持ち主ということが、この映画で判明した。
なによりも 彼女には眼差しで語る「眼芸」ができる。
これは強み。
若手俳優陣もそれぞれ個性をきっちりと際立たせた安定的な演技を披露。
その脇をベテラン俳優達がしっかり締めている。
萩原聖人は若い頃より今のが断然いい。
ワケありそうな飲んだくれ中年が、本当に様になってる。
さらに粟根まこと、黒沢あかねの二人が
非常にアクの強い演技合戦を繰り広げるので、思わずニヤニヤしながら観てしまう。
いろいろと見どころは多いのだが
特に僕が好きなのが、粟根まこと演じるマッドサイエンティスト(オカルティスト?)が
人形と二人きりの密室で呪いを引き出そうとするシーン。
さらに極めつけは 後半で催されるバースデーパーティ。
これは、ホラー史上に残るシュールな名シーンだと思う。
この2つだけでも何度でも観たくなる名場面。
観終わって、僕はなぜか大昔に観た大林宣彦監督の
初劇場映画「HOUSE ハウス」を思い出していた。
あれにも当時の人気絶頂アイドル・大場久美子が確か出ていたな…
宮岡監督には、2019年の今 あえてトップアイドル小坂菜緒主演で
これを撮る「逆張り」のセンスの良さを感じる。
そして、エンターテインメント映画に対する深い愛とこだわりも。
小坂菜緒が好きならもちろん必見だし、
ホラーやサスペンスなどエンターテインメント映画が好きなら
絶対に見て損はない。
10年後もニヤリとしながら
「アレ!面白い映画だったよねぇ」と心の片隅に永遠に爪跡を刻む
一作になったことは間違いない。