「ギャンブルそのものというより、社会批判とかメッセージを比喩で表していると見ればすごく面白いと思う。」カイジ ファイナルゲーム Push6700さんの映画レビュー(感想・評価)
ギャンブルそのものというより、社会批判とかメッセージを比喩で表していると見ればすごく面白いと思う。
カイジの原作は読んでいて、最近の『和也編』も『24億脱出編』も読んでいる。
スピンオフの『中間管理職トネガワ』や『ハンチョウ』も読んでいる。
自分では思っていなかったけど、もしかしたら大ファンなのかもしれない。
映画も1作目も2作目も見ていて面白かったし中国版も見ている。
特に一作目は名作と思う映画に入れている。
どこが好きかというと本編のギャンブルやゲームというより、メッセージ性が強くて名言も多く、現実社会の批判的なものが入っているところ。
類似の作品と違うのはそういうところで、他の作品はゲーム的なものが主役だけど、カイジは人間とか世の中とか金とか格差社会やギャンブル経済みたいなものが主役になっている。
純粋に特殊なギャンブルゲームが好きで、ハラハラドキドキしたいという人はこの映画をつまらないと言うと思う。
それに単純に見れば近未来の話だけれども、こんなバカなことはいくらなんでもありえない、くだらないということになる。
でも社会批判とかメッセージを比喩で表しているとみればすごく面白くなると思う。
2作目はちょっと薄くなったけれど3作目の本作はその辺のてんこ盛りで、これだけ詰まっている映画はあまりないと思う。
格差社会がテーマなのは昔からだけど、それに加えて今回すごいと思ったのはメインのゲームの人間秤。
人間の重さをその人の自己資金・FRIEND(友人)・FAMILY(家族)・FAN(ファン)・FIXER(後援者)の資金を加えて測り、勝った方は負けた方の金を全部取れるというギャンブル。
もちろん相手陣営の切り崩しや裏切りはOKということになっている。
これがすごいと思うのはまさに現実社会そのものといった感じのところ。
弱肉強食な社会なのは昔からだけど、最近では一歩進んで強肉強食みたいになってきて、一番強い一人だけが生き残る世界というか、最強者総取りの世界を表しているような気かする。
それからさらに今回は日本の財政問題まで入ってきた。
MMT理論だかなんだかしらないけど、いくら借金が膨らんでも大丈夫という学者や有識者ばかりで、本当に大丈夫なのかといつも思っていた。
いくら国の借金が増えても大丈夫なら、税金など取らないで借金だけで国を運営すればいいような気がする。
この映画ではやっぱりダメで、預金封鎖や紙幣の切り替え一歩手前までいっているという設定になっていて、こっちの方が現実社会より現実的な気がした。
あと現実社会とは関係ないけれど、お金地獄の中でふと現れる人情とか友情、愛情がいいと思う。
普通の映画ではそんなに目立たないけど、金まみれのどろどろのギャンブルの中で、ちょっとした人情や愛情は、周りが暗いだけにすごく光って見えて感動する。
お約束だけどいろいろあって最後の最後に勝負を分けたのは、全くの無駄でマイナスにしかならないと思われたそういうものだったという最後もよかった。
だいたいどのシリーズもそうだけど、1作目が一番面白くて2作目でちょっとダウンして3作目で多少盛り返すパターンが多いけれど、カイジシリーズもそうなったと思う。