朝が来るのレビュー・感想・評価
全79件中、21~40件目を表示
希望をもらった者と失った者と、
途中までまるでドキュメンタリーを見ているようなリアリティのある進み方で、それはそれで好きだった。
後半は完全に蒔田彩朱?にもってかれて、むしろこっちが主演じゃないかなー
そうしたいくらい。
万引き家族に並ぶくらいの日本の現状を描いている一本だと思う。
エンドロールの最後の最後まで見て一本となる作品です。
久しぶりに自然と涙があふれた
意外な展開でした。
サスペンス風で
謎ときな、雰囲気
子供同士のトラブルや
謎の電話
不妊 そして居酒屋の井浦新の会話
男が原因だと惨め感あるんやろな。
永作博美と井浦新の夫婦
蒔田彩珠、彼女は暗い感じがよく出てるね。
お姉さんは、駒井蓮はいとみち観ました。
TVシリーズでもあったね。安田成美やったね。
河瀬直美監督らしい作品だね。
親子の「嘘」が対となる映画
朝斗がソラを実際には押していないのに「ごめんなさい、押した(と言ったほうがいいの?)」と言った。
↓
親は朝斗がやったと思っている
〈ここでの親の対応〉
実際はソラが自分で飛び降りたことがわかった
↓
ここで親が真実を知る
〈ここでの親の対応〉
これを考える映画だと感じた。
それぞれ映画内では描かず、観客が考える余白がある。
演出として《実際には押していない》を分かりやすくするためなのか「押したと言ったほうがいい?」というセリフにしてしまったのはマイナス点だと思う。それじゃあ親はその時点で《子供が本当は押していないのに押したと嘘をついている》のが分かってしまうではないか!あそこのセリフは「押した」の方がそれぞれの対応を考える幅が広がると思う。
これに対となるのが映画の後半のヒカリの嘘とその対応。一つの答えとして。
ヒカリが井浦家を訪れ子供を返してほしいと伝える
↓
「あなたは本当の母親ではない」と永作
↓
子供が愛情深く育てられていることを知り、本当の母親なのに「私は母親ではない。ごめんなさい。」と嘘をつくヒカリ
↓
実際には本当の母親であったことが発覚
〈ここでの対応〉
永作が朝斗を連れて見つけたヒカリへ「わかってあげられなくて、ごめんなさい」
ここは描いて、一つの答えとしている。
私も親だったら本当は押していないと分かった時、子供を抱きしめて「わかってあげられなくて、ごめんなさい」と言う。そういう親でありたいと思った。
映像化への感謝
原作ファンとして、また辻村深月のファンとして、最初映画化されることを知った時、正直複雑な気持ちでした。なぜこんなにも完成された文学作品を映像化する必要があるのかと。
「なかったことにしないで」
ひかりの手紙の中に隠されたこの言葉に佐都子が気づくこの重要なシーンは原作にはなかった場面である一方、この言葉を手紙に綴るシーンは映画には無く原作だけ描かれていた場面であることに気づかされ、原作と映像作品のそれぞれが繋がって演出されていることに驚かされました。
監督が原作を大切にしながら映像作品に残そうとされている心が伝わり、原作ファンとして強く感動されられました。
期待と不安の中で公開初日に映画館に行きましたが、観終わった後、映像作品としてここまで感動できるものを公開してくださったことに感謝です。
ドキュメンタリー
映画というよりドキュメンタリーのほうが近いように感じた。あとから知ったことだが劇中にでてくる人は本当の人物(役者じゃなく素人)を使っていたことがわかった。
そのおかげもあってカメラワークが本当のことのように感じ、見入ってしまった。
永作からも実のは母親からの視点も良かった。
ただチンピラが出てきたりちょっと強引な部分も多く感じた。
最後のエンドロールはネタバレで知ったのでもう少し先に流して欲しかったです。
できすぎではあるが
映画というか擬似ドキュメンタリーというか。いまいち締まりがない。蓮見先生に怒られそうである。そして、筋書きも三人の母親の心が通じるというなんか出来過ぎな展開。しかしながら、僕の世間イメージである、養子であることは隠すべき、子供と生みの親を合わせるのは気まずい、うみ親と里親には子供の愛の奪い合いがある、というものを壊してくれた爽快感はさすが河瀬監督、見て良かったという感じ。
養親がどうか関係なく立派な母親
特別養子縁組を通して、中学生で初潮前に妊娠し出産した産みの親ひかりと、その子供を養親として受け取り大切に育ててきた夫婦を描く。
固定観念が強い実家で居心地の良さを感じられず鬱々としたひかりが、告白してくれた同級生との間には確かに愛を感じ、不慮の妊娠だが、初めて大好きになった人との間にできた、愛の結晶ともいうべき子。ずっと一緒と言ってくれた言葉をひかりは大切にしているのに、相手は妊娠を知るなり謝ったあとはそれまでと同じ人生を歩んでいる。一瞬で失ってしまったひと筋の光とも言うべき愛を、授かった子供に捧げたら良いが、中学生で周りはその妊娠を事故のように扱い、なかったことにしてひかりを高校受験で軌道修正させようとする。ベビーバトンという特別養子縁組の架け橋となる団体の施設にひっそりと産みに行き、出産するが、風俗での妊娠や産まれる前から大切だと思えない妊娠と違い、ひかりには胎児への思い入れがあった。
だから、産後もとの生活に戻り何事もなかったかのようには過ごせず、無気力に。
家を出て、居心地が良かったベビーバトンの施設に戻るも団体は終了予定で、片付け中の段ボールの中に我が子のファイルを見つけ養親の連絡先や住所を知る。
とりあえず広島を出て横浜で新聞配達のバイトをしてどうにか生計をたて、バイトで出会う人間関係で過ごすうち、身なりはすっかり不良のよう。どちらかと言うと未来への希望あふれる優等生だったのに、まるでレディースのような別人に。中身は全く変わっていないのに。
お腹でちびたんと呼ばれていた、息子あさとに逢いたくて永作博美と井浦新演じる育ての親夫婦のもとへ。
職場結婚しダブルインカムで不妊治療をするも打ち切り、特別養子縁組で子供を引き取るために仕事を辞めた夫婦で、タワマン30階という恵まれた生活。
あさとの気持ちを大事にしてくれる、申し分ない優しい養育環境。
そこに別人のように変わったひかりが乗り込むが、夫婦はお金目当てで的外れな脅迫をしてきた別人だと思い、あさとを守るためぴしゃりと要求を跳ね除ける。
あさとがジャングルジムで友達を落とした疑惑をかけられた時には、あさと本人がやっていないと話しているので謝らず煮え切らない対応をした母が、今回は産みの親でもないよくわからない別人にゆすられてたまるかと、「ひかりさんからの手紙は大切に読み聞かせしています」「あなたのような人に関わって欲しくない」と言い切り、「お引き取りください」と静かに怒りをぶつける演技が母親そのもので素敵。感情をあらわにする主観の怒り方ではなく、養親という立場ながら実子として子供を守り育てている母親像がしっかり伝わってきた。
結局、ひかりの職場から連絡を受けた警察が後から訪ねてきて、ひかり本人が訪ねてきていたとわかるのだが、そこで出産直後から訪ねてくるまでのひかりの人生や心情変化を察さずに、「産みの親片倉ひかり像」を固定してしまっていた事に気付き、後悔と申し訳なさに溢れ、ひかりを探しに行く母親。ひかりと5歳になったあさとは対面を果たす。エンドロールで初めてフルで流れる「あさとひかり」と、あさとの、「会いたかった」。
子供にとっては、安心できる環境で大切に育てられるのが1番。産みの親が難しければゆとりのある養親でも良い。でも、産みの親にも会いたくなるのも事実。
そして、養親が親になっていくように、産みの親もまた、産んだ時から子供の年齢分、変化している。
特別養子縁組制度では産みの親と子供との親子関係は削除されるため、産みの親は「なかったこと」にされがちだが、確かに子供をお腹で育てた存在がいる。
それを伝えるため、蒔田亜珠扮するひかりにスポットが当たりがちだが、夫の無精子症が原因で不妊治療に至り、夫の気持ちのために治療を打ち切り、産めたかもしれないのに産む経験を諦め、養親となった母親の気持ちを想像すると、永作博美演じる母親が人徳をいかに積んでいるかがわかる。その乗り越えた悲しみと心豊かさがあるから、ひかりにもまっすぐ向き合ってくれたのだろう。一筋縄ではいかないであろう養親のあり方に、対応できる人間性でないと、特別養子縁組は難しいと感じた。
妊娠の可能性にも、特別養子縁組制度の中身にも、知識が欠けているひかりだが、子を想う母としての気持ちはあり、こんな自分が関わってはいけないと納得し、「申し訳ありません。私はあの子の母親ではありません。」と頭を下げる場面は、産みの親として子の幸せを願う最大限の母性が詰まっていた。愛しているから引く勇気。
家族は心中を理解してくれず、交際相手の子の逃げを受け止め、産んだばかりの唯一の愛の繋がりとも言うべき子を養子に出し、やっと友達ができたかと思えば借金を被らされ、「なんで私がこんな目に」。本当にその通りで、見ていても苦しい。でもそこに闇金が返した一言、「バカだからじゃねぇの」。真をついている、その通り。
不遇な境遇で太刀打ちできるのは知識と頭脳。
SOSをあげて調べればきっと救済策はある。
勉強だ進学だと子供を駆り立てる前に、子供の声を聞く姿勢こそ、子供が困った時に周りに助けを求める力を育て、自発性に繋がると感じた。
ひかりは実母に育てられたのに苦しんでいる。
あさとの友達の母親は実母でありながら他の親に金銭要求。
実母も養親も関係なく、良い母も良くない母もいて、養親の方が親として適切な事もある。
世の理解が進めば良いなと思った。
もっと寄り添って…
「あん」以外の河瀬監督作品は ことごとく私には…合わない。と、また思ってしまった。
里親側と 産みの母側の事情や過程を丁寧に描いていて、冗長と思うシーンがあるかと思えば、え?何で どうして?こうなる?みたいな 説明不足な シーンも有って…
上手く映画に惹き込まれなかった。
でも、主役とも言うべき 蒔田彩珠さんの存在感に惹かれた。彼女を初めて観たのは「ゴーイングマイホーム」という阿部寛さんのドラマだった。まだ10歳?くらいだったと思うけど、また 上手い子役が出て来たな☺️と、楽しみだった。その後は「猫は抱くもの」で、中学生くらいになってて、ちょっと生意気な可愛い女の子を演じていた。久々に観た彼女は、中学生の幼さと 20歳?前後の女性を繊細に演じていて、益々楽しみな役者になりそうだ!
各人物が実力派俳優達によって 心情や背景が描かれていたものの、肝心な ひかりが何故 あの時に「子供を返して欲しい」と里親に会いに行ったのかの 動機が よく解らなかった。子供にはずっと会いたかったのだろうけど…。友達だと思ってた人に裏切られたショックで…?
それはともかく…一番 情けなく思ったのは、井浦新、永作博美演じる夫婦が ひかりをまじまじと見つめながら、1ミリも…あの時の14歳のひかりと気づかなかった事!
女性である。14歳の時のままである筈はない…化粧だって髪だって染める。中学生という多感な歳に 図らずも…好きな人の子を産んで、自分でなく 親の意思で 子から引き離された女の子が その後 どう生きたか…の想像力が あまりに無さすぎると 呆れた。
見た目が違うから…ひかりではないという…少しは、自分達の思い込みを疑えよ!と、イライラした!
夫妻は、「偽者」が現れた時点で、何処かで生きてる「ひかり」の事を考えただろうか?
警察が訪ねて来て 初めて気付くって…それで、何故か 警察より早く永作が ひかりを見つける?一晩中探し歩いたのかと思ってたら、何故かアサトも一緒?!連れて探してたの?…えェッ?!
アサトが 夢の中?で ひかりの薄ぼんやりとした顔を見たようなシーンが有った。あれは、生まれたばかりのアサトが無意識に宿した母の面影だと思った。
だから、
ラストシーンではひかりの顔をじっと見つめて…その後 何かを感じて表情が緩む…のかな…と期待したけど…。
何を言いたいドラマだったのか
「朝が来る」というタイトルから ひかりの人生の朝…という意味だと思うが…
ドラマとしては、この先の方がずっと気になるんだけど…。
」
絶対に最後まで見てほしい作品。
最初スタートが喘ぎ声からはじまります。
え?こういうかんじ?って思っていたけど
それすら伏線です。
旦那様の精子が原因により、子供が欲しい2人の夫婦が
子供ができないことに悩まされます。
月に一度、札幌まで出向いて、治療を受けて
妊娠しようとがんばりますが
2人で生きていこうと、言う流れからスタートします。
そんな日に泊まったホテルで
偶然テレビでやっていた赤ちゃんを養子施設。
なんだかご夫婦もだし、出てる方すべてが
リアルすぎて、はじまってずっと胸が苦しかったです。
演技力がドキュメンタリー番組を見ているかのように
自然すぎて、涙がこみあげてきてしまいました。
授かった子は、当時中学生の子が産んだ男の子。
手紙と共に、お願いします、ごめんなさいと
泣きながら託された、あさと。
数年後、あさとが幼稚園の頃、突然、片倉ひかりと
名乗る女性から、息子を返して欲しい。
返さないと、周りにバラす、実の子じゃないとばらす。
それが嫌ならお金をくださいと。
家に訪れた片倉ひかりを見て、母親は
あなたはだれですか?と。
変わり果てた姿、面影もない。
あなただれですか?
私の知ってる片倉ひかりさんじゃないですって。
伏線がない映画なのかなって思っていたけど
伏線だらけです。
色々散らばっています。
そして色んな感情になる映画です。
片倉ひかりさんがなぜ子供を手放すことになったのか。
なぜ返して欲しいと言ったのか。
映画の中で全てわかります。
好きな人の子供なの?と聞かれて
本当に大好きな人との答える姿。
産んだ後、家に戻ったけど居場所を感じず
広島の施設へ出向き働かせてくださいとお願いする。
だけどあと一年たるずで、ここの施設は
終わってしまうことをしる。
そんな時、自分が里子に出した赤ちゃんの
行方が全て書いてあるファイルを見つけてしまい
会いたいという気持ちと、色んな葛藤が見えるシーンが
みていてありました。
近くの新聞屋さんで住み込みで働き出したひかりに
1人の女の子が面接に来ます。
その子と仲良くなり、見た目が変わり
でも中身はちゃんと真っ直ぐな優しいひかりちゃんで。
けどその子にも裏切られて
借金の保証人にされてしまいます。
そのあと家の階段で見つけた彼女は
誰かにボコボコにされたあとで
腕には昔やったリストカットの跡が。
結局その子は、バイバイと置き手紙と
残りわずかな所持金?をテーブルに置いて
出会った時にひかりが【その服かっこいい】
【これ着るとなんでもできるんだよ
あげないよっ!笑】
とやりとりした時のスカジャンが置かれてました。
その服を身にまとい、彼女のように赤いマニュキュアを塗り
色んな感情がぱんぱんになって、またひかりさんは
ご夫婦の家へ電話します。
いつもは無言電話にしてしまったり、出なかったり
あったけど、私がお母さんですと。
返してくださいと言い出します。
色んなことがありすぎて、頭がいっぱいになります
すごい涙が定期的に出てくる映画でした。
ご夫婦へも、ひかりさんへも、周りに出てくる人も
すべてなんかすごい深いです。
新聞屋さんのオーナーさんがなんでいい人なのだろうと。
昔、彼女が自殺してしまって
そんな素振りなかったのにと。
だからなにかあるなら誰かに言っていいんだよと。
ただただ心配だって。
あさとくんが家に帰ってきたあと
【なんでパパいるの?
だれかいる】
のシーンも伏線だし、全部回収してくれます。
お引き取りくださいと返したあと
大切にしまっていた片倉ひかりさんから
あさとへの、あの頃の中学生の片倉ひかりさんの
お手紙に消しゴムのあとをみつけた奥様は
えんぴつでなぞります。
【なかったことにしないで】
そこで、片倉ひかりさんの想いとか
色んなものを組んだ奥様は
追い返したひかりさんを探しに出ます。
ごめんなさいごめんなさい。
わかってあげられなくて。
そう繰り返す奥様に
【どうしてそんな謝るの?】って
隣にあさとを連れて、ひかりさんを探していました。
広島のおかあちゃんだよって、紹介して
あさとが、ひかりさんを見つめて映画がおわります。
ラストエンディングが流れ、はぁ、なんて
心に響く映画なんだとしみじみしていたら、、
あさとが、エンディングを歌い出します。
その声すらも、泣けてくるのにラストのラストで
【会いたかった!】って。
もう最後の最後に全部の涙がふきだしてきます。
散々泣いたはずなのに、最後ぶぁーです。
本当に見てよかった作品でした。
久しぶりに人にもすごく勧めたくなる
胸に残る、素晴らしいというのか
なんというのかわかりませんが
好きな作品でした。
小説をまるまる読んだものを
本当に綺麗に再現して
細かく細かく表してくれたような映画でした。
ありがとうございました。
愛されなかった子供
日常的に起こっている児童虐待やネグレクトは、思ってもみなかった不運が重なっているだけで、本当は沢山の事情があるのだと、ひかりという一人の若い母親から想像ができました。
佐都子とひかりは、親子ほど歳が離れています。だから、ラストで佐都子がひかりに言った『ごめんなさい。分かってあげられなくて』という言葉は、虐待をしてしまう親達や虐待をされた子供達への、大人(社会)からの謝罪の様に感じてしまいました(私の考えすぎかもしれませんが)。佐都子や浅見の存在は、女性にとって心強いですよね。沢山の悲しいニュースがある世の中ですが、女性に対する眼差しの優しさに、胸がいっぱいになりました。
山や海の日本の風景の美しさは、流石でした。
アサノヒカリ
都内の構想マンションで幸せに暮らす清和と佐都子の夫婦、幼い息子の朝斗。
その幸せは一本の電話で動揺が走る。
朝斗が幼稚園で友達を怪我させたというのだ。
しかしこれは相手側との誤解で、事無き終えたが、佐都子は心労を重ねた。
実は朝斗は、特別養子縁組で迎え入れた念願の子供であったのだ。
夫の無精子症で子供を授かる事が出来なかった二人。
離婚や体外受精、子供を諦めるという事も…。
そんな時知った、特別養子縁組。
何らかの理由で子供を育てられない親が、我が子との関係を解消し、子供を育てたい養親に引き渡す制度。
その架け橋となる団体“ベビーバトン”。
親が子供を選ぶんじゃなく、子供が選ぶ事があってもいい。
二人はベビーバトンから至って元気な男の子の赤ちゃんを譲り受ける。
その時、産みの母親にも会った。まだ14歳の女の子、ひかり。
二人はひかりに感謝をし、ひかりは我が子との別れを惜しみ…。
そんな事情で二人にとって朝斗はとりわけ大切な“息子”。
それから6年、その電話で動揺走ったが、別のもう一本の電話で今度は衝撃が走る…。
「子供を返して下さい…」
電話の主は、ひかりと名乗る。朝斗の産みの親。
二人は直接会う事にするのだが、かつての面影は全く無く。
お金を要求したり、我が子の年齢を言い違ったり、直感する。
「あなたは誰ですか…?」
いつものドキュメンタリータッチの演出や繊細な心理描写に加え、今回ちと小難しそうな特別養子縁組制度などの事もあって、かなり構えて見たのだが、どうしたものか!
それらと考えさせられる社会問題、意外やエンタメ性&感動が見事に合わさり、河瀬直美監督の新たな代表名作と言っていいのではないだろうか。
序盤、過去に遡り二人が朝斗を迎え入れるまでに引き込まれた。
本当に二人にとって、長く、苦難の歳月。
酒に酔った清和が言う。「子供を授かるって奇跡だよ」
本当にそうだと思う。
結婚して子供を授かるのが一般だが、どうしても子供を授かれない夫婦も居る。
その一方、我が子を虐待し、死に至らしめる親も。この不条理。恥を知れ!
特別養子縁組制度についても分かり易く描いてくれる。
説明会は演者以外本物の希望者を起用し、さすがここはドキュメンタリータッチの手腕が活かされ、台本もナシのリアリティーにこだわった撮影。
そんな二人の前に現れた“ひかり”。
本人か、別人か。
辻村深月の原作小説はヒューマン・ミステリーのジャンルに位置付けられ、確かに色々考え巡らしてしまった。
でもまずそれはさておき、
佐都子らが“育ての親”なら、ひかりは“産みの親”。
前半は佐都子ら側のドラマが描かれていたが、後半はひかりの妊娠~我が子を手離すまでが、感情たっぷり、じっくりと描かれる。
地方の中学生のひかり。
両想いだった同級生と付き合うように。
毎日が光り輝き、幸せ。愛し合い、結ばれた果てに…妊娠する。
まだ14歳。中学生。子供が子供を産む。
嘆き悲しむ両親は特別養子縁組制度を知る。
学校や周りには内緒で出産まで預かって貰い(悪い病気で遠くに入院と説明)、受験までに復帰。
自分の意見など聞かず勝手に決め、彼氏とも一方的に別れを…。
そんなひかりの心を癒したのは、ベビーバトンでの暮らしだった。
子供が子供を産む。何らかの理由で子供を育てられない。
同年代や似た事情を抱えた少女が多い。
佐都子らが申請した頃は大きな団体だったが、今はもう縮小し、小さな島でひっそりと。
しかしそれが、共に暮らし、心に傷を負った少女たちの心を癒していく。
ひかりのお腹はどんどん大きくなっていく。
私自身はまだ子供かもしれない。
そんな私の身体の中で間違いなく育まれていく命。
でも、産まれたら別れがやって来る…。
産まれる前に“ちびたん”と一緒に見た朝の光り。
一生、忘れないよ…。
出産し、佐都子らに惜別と共に我が子を手離し、実家に戻る。
放心状態…。
親族の心無い一言に傷付く…。
家を出たひかりは再びベビーバトンへ。
しかし、ベビーバトンは間もなく閉鎖されるという。
行き場を無くしたひかりはこっそり書類を調べ、我が子の所在を知り、上京するのだが…。
ただ少しでも我が子の傍に居たかった。
が、地方からやって来た“子供”にとって、大都会は余りにも無情だった。
その後ひかりが歩んだ6年間は、壮絶。
とても一言では言い表せない。
自分から身を汚し、堕ちていったかもしれない。
でも、全て彼女が悪い訳じゃない。
純真だった少女を無視し、翻弄と過酷の海に放り投げた大人たち、この社会…。
見た目も変わったのは無理ないだろう。
そう、別人ではなく、紛れもなく本人。
見た目が変わったからって、何を否定する?
ひかりはその純真な心は荒んでいない。
寧ろ、荒んでいるのは周りや社会、さらに言ってしまえば、佐都子ら。
「あなたは誰ですか…?」じゃない。
見た目が変わると、こうも疑うものなのか。
「あなたたちは何故覚えてていなかったんですか…?」
キャストたちは演技を通り越して、役と一心同体に成りきった。
永作博美演じる佐都子の動揺、井浦新演じる清和の引け目…。
二人の悲しみとようやく迎え入れた幸せ。
朝斗役の佐藤令旺のナチュラルさ。
ベビーバトン代表の浅田美代子の佇まい。何かの評か記事で、樹木希林との共演も多く、いずれそんな女優に…と書いてあった気がするが、幾ら何でも言い過ぎと思ったが、本作での彼女の存在感はそれも頷けた。
そして、蒔田彩珠。ひかりを演じるとか成りきるとかじゃなく、いたいけなひかりを、純真に痛ましく儚く、生きた。
だからこそ我々は、本作を見て、何よりも誰よりも、ひかり=蒔田に惹かれ魅せられる。
そんな彼らを、美しい映像が包み込む。
河瀬監督の演出は前述の通りだが、もう一つ。“産みの親”と“育ての親”どちらが相応しいか、本作はそれを問い掛けているのではなく、双方にある葛藤を描いている。
もし、自分だったらどうするか…?
佐都子の立場だったら…?
ひかりの立場だったら…?
明確な答えなど出ないだろう。
でも、かつて見た美しい朝の光りのような、
子供の為に。
映画の日に映画館で チラシで気になっていた この監督も気になるひと...
映画の日に映画館で
チラシで気になっていた
この監督も気になるひとりだ 前作も観ている
二度目の邂逅をゆっくりと丁寧に描いている
原作を読んでみたいと思ったのはなかなか珍しい体験
で読んでみた ブック○フで見つけた
原作はツナグのヒト
映画で端折っていた場面を補完できてより理解が深まった
例えば警官が訪れるシーン 映画では唐突感があったが
訪問者が何をして だからここで来るのか…との流れがわかった
逆に原作にはない映画オリジナルの場面が浮かび上がった
井浦新が居酒屋で同僚と飲んでいるシーン
子どもがふたりいる同僚に子どもを授かることの尊さを訴える
これがあるから空港のシーンが活きる
好きな場面だ ホントに飲んでいたらしい
原作と映画が互いに味わいを引き出す稀有な体験
今年の5本に間違いなく入る素晴らしい一作だ
どの世代にも性別なく観てほしい映画。
昨日観たばかりでまだ咀嚼中。あまりに色々考えさせられる映画でまだまとまらなくて…。レビュー、綺麗じゃないですが思うことを置いておきます。
最初に。どうしても声を大にして言いたい。
" どうして?妊娠させた男の子は?たくみくんは?のうのうと、何事もなかったように生まれた場所で過ごせ、なんの罪も責任も負わないままもしかしたら大学生や社会人となり眩しい青春時代を過ごしてるの?
光ちゃんを探してくれないの?見つけてくれないの?"
こんな時、傷つくのはいつも女だ。
そして抱えている辛さに気付かない、被害者面した家族がいる。
なのに、傷ついた彼女たちを心配して泣く他人がいる。
未熟な女の子達を食い物にする、男達がいる。
特別養子縁組よりも、環境に恵まれない中で唯一保護してくれるシェルターのような安心の中で子供を産んだ女の子達やその背景に心をさらわれた。
朝斗くんの真実を信じてあげられないで情けないと自分を責めた佐都子が最後、光ちゃんの嘘と真実を知り、光ちゃんを探し出してちゃんと朝斗くんを会わせてあげた…後悔だけにさいなまれずに探し出して愛を届けた佐都子に救われた。
たくさんの提示と回収がある映画だった。まだまだあるのかな、もう一度、丁寧に観てみたい。
私、個人的にすごくいやだったのは、正月の集まりで、光ちゃんに近寄ってねぎらいだか慰めだか興味本位だかで近寄ったりおっさんとその時に娘の味方をしなかった母親。本当に後味が悪かった。あれは、完全におっさんの下世話さのせいだしなんならエロい目線だ。気持ち悪くて吐き気がした。
そして、まだ年端のいかない少年少女達よ。プラトニックを大切にしろ。性行為は将来の楽しみにのけておけ。感動はもう少し後にのけておけ。
安易じゃない?自分たちは愛し合ってるんだ?抜かすな、お前達の責任の伴わない言葉や性行為は、絶対に人を不幸にするし輝かしい未来を奪うんだ。
みんなしてるから?アイシテルから?裸の身体を重ねて確かめ合うことが大切?
馬鹿なことを言うな。大切だったらなおのこと、妊娠する可能性があることをするんじゃない。人の未来を奪うな。
未熟な男どもは心して観ろ。未熟な女の子達よ、未熟な男どもに大切な身体を開くな。
演技では、荒んだ生活の中にも綺麗な心のままの彼女を演じた蒔田さんの清廉さに救われた。
ベビーバトンの浅見さん…浅田美代子さんを観ていて、【樹木希林】を受け継ぐ覚悟が見えた。この方はけして好きなタイプではなかったけれど、この映画で希林さんの片鱗が見えた。きっと、彼女ならやってのけることができると感じた。
永作さんはもう…語るのが申し訳ないほどの方なので。
新聞販売店店長…好きだなぁ…。実は【恋あた】ではじめて知ったけれど実はちょこちょこ目にしていたのだなぁと。単なる若い子を構いたいだけのおっさんだろと思ったけれど、心からの心配と涙…演技にはとても思えない…心を丸裸に丸腰で心配なんだよって言える大人がどれだけいるだろう…。
許すこと。・・・違いを受け入れること。
コロナ禍という新作映画公開が困難なタイミングではあるが、公開から2か月を超える本作は、『気になりつつもなかなか手を出せていない作品』であった。
見逃さなくて良かった。。。本当に。。。
ミステリー要素を織り交ぜ、目を離せないストーリー展開
登場人物の心情を目線や動作で巧みに表現する俳優陣
それらを鮮やかにスクリーンへ投影するカメラと照明
時間の経過を忘れるほどとても濃密な139分間だった。
鑑賞後、本作品には、他者への『許し』が多く描かれていると感じた。
無精子症に悩むパートナーへの許し
実子を手放さなければならなかった産みの母たちへの許し
買い物依存症により(たぶん?)、知らぬ間に保証人へと仕立て上げられた友人への許し
そしてラスト・・・産みの母の真意を見抜けなかった育ての母への許し
こうした“日常では出逢うことがない人”、“常識から外れたモノ”を許すことで、前進していくのが本作だと感じた。
※上記“ ”は作品パンフレットの監督インタビューから引用
※当該パンフレットには『承認』という単語を用いていたが、『許し』のほうが個人的に、しっくりくる。別に、登場人物が悪いことをしているわけではないのだが。。。
規律 文化 常識
こうした要素は、社会をスムーズに動かしていく(前進させる)ために、必要不可欠なのかもしれない。
しかし、その外側に存在する人に目を向けることで、歩める未来もあるのではないか。
もしかしたら、そうした『今まで目を向けられてこなかった人々』を受け入れることで、描く未来のほうが、より幸福度の高い社会を築けるのかもしれない。
こんなことを思いながら、終えた2021年一本目の映画鑑賞でした。
追伸
TBSラジオ 『荻上チキ Session』では本作の監督も参加し、
特別養子縁組について特集されました。
下記リンクにてアーカイブ配信もありますので、併せてご利用されるとよいと思います。
https://www.tbsradio.jp/538077
ドキュメント的な描写が好みの分かれる所ではある作品です。
以前から興味のあった作品で、ポスタービジュアルのやさぐれた感じの茶髪の女性の後ろ姿が何処かホラーチックでどんな内容だろうと興味津々で観賞しました。
で、感想はと言うと、ホラーでは無かったw
観応えはありますが、重い。またどんよりする。
ドキュメント形式の描写が余計に重さをリアルに感じる拍車をかけます。
永作博美さんと井浦新さんが演じる夫婦が抱える問題に、子供を出産するが、育てることを断念せざるおえない女の子のお話なんですが、どうにも切ない。
育ての親の苦悩もさる事ながら、産みの親となる少女の苦悩と葛藤、不幸が重いんですよね。
また育ての親の物語かと思えば、どちらかと言うと産みの親の女の子の物語の側面が強い。
割合で言えば6:4ぐらいかな。
冒頭から何処か怪しげな雰囲気が漂い、幸せそうな家庭環境が余計にその雰囲気を増幅させる。
幸せの家庭を壊すのはいつも他愛もない事からが世の常ではあるが、この作品は割といろんなことが「伏線か?」と思わせといてスカされるw
その辺りが結構絶妙ですが、回り道と言えば回り道ですが、そういう伏線張りは嫌いじゃ無い。
でもそれが多いとちょっと中弛みを感じます。
伏線張りは…少し多いかな。
インタビュー形式的な描写で「ザ・ノンフィクション」みたいな感じで、それが結構多い。全体のバランスから考えるとちょっと多すぎる感じがして、肝心な部分の描写が少なくなってる気がします。
社会派ミステリーと言うジャンルに位置付けされてますが、ミステリーとしての側面を過剰に醸し出している所も感じる。
永作博美さんと井浦新さんを前にした茶髪のやさぐれた感じのポスターが正にそれ。
でも、そこになんとなく牽かれて観賞したので、ここは好みの分かれる所でしょうか?
また、特別養子縁組の制度について描かれてますが、ドキュメント性を出すのであれば、もう少し金銭的な事を含めて詳細を描いても良かったのではと思います。
永作さんと井浦さんの演技力は今更ながらに言わずもがななんですが、ひかり役の蒔田彩珠さんが上手い。
「志乃ちゃんは自分の名前が言えない」の加代とは全然違う役柄ですが、最初気付かなかった。
それぐらい全然違いますが上手いし、良い役者さんになりました。
そんな彼女が演じるひかりは不器用に挫折もしながら、それでもなんとか踏み止まろうとする姿が健気。
いろんな事が彼女に降りかかり、その事でゆっくりと転がる様に落ちていく。
彼女が悪くない訳では無いんですが、そんな綻びから付け込まれる様にして、綻びが大きくなっていく。
母親のちょっとした無関心と見栄が余計に腹立ちますがw、感情が優先して、そこから逃げ出したい気持ちも凄く分かる。
様々な人に出会い、優しさに触れ、いろんな事にも傷付く。
それが人生だと言えば、そうなのかも知れないが、それをまだ10代の女の子に背負わすのは観ていても酷。
その辺りを丹念に描いています。
弱い者が様々な事に叩かれる姿は正直見たくないし、映画の中とは言え、立ち直ってもらいたい。
蒔田彩珠さんの上手さが際立ちます。
子供を授かりたくても授かれない苦悩も切ないし、そこに特別養子縁組に至る決断も切ない。
でも、養子とした子供に目一杯の愛情を注いでいる姿が微笑ましい。
意図せず授かった子供であり、周囲との協調を図る為、泣く泣くで手放したが、そこから転がる様に落ちていくが、唯一の救いは悪になれなかった事。
その事がラストにも生きてきます。
重い作品で、中々の尺ですが、見応えもあります。
ですが、ドキュメント的な描写は好みの分かれる所。
興味があれば如何でしょうか?
大我と小我の物語
自然の命が大我、個の移ろいが小我。
この世は大我と小我の螺旋の中で時を刻む。
特別養子縁組という視点で、このテーマを浮かび上がらせている河瀬監督の映像作家としての手腕は健在だ。
自然の四季を美しく動的に切り取り、人もまた大きな自然の一部であることを、静かにも強く描き出し心を浄化してくれる。
大我は小我を包含することを示唆する幾つかの台詞の中でも、「親が産まれてくる子を選ぶのではなく、子が親を選ぶ」という言葉が心に残り、身近な日常を振り返りたくなる、映画史に深く刻まれる作品だ。
アサトヒカリ
ああ…もっと早くみれば良かった。そして映画賞に投票すれば良かった。
今年みた映画で1番心揺さぶられました。
まるで映画のお手本のような作品。
辻村深月さんの原作小説と河瀬直美監督の相性がとても良いのかもしれません。
原作よし、キャストよし、演技よし、脚本よし、演出よし、音楽よし…河瀬直美監督は地道に積み上げてきた実力を余すことなく発揮している。
私は映画をたくさんみるけれど、みた映画はほめる方だけど…
エンドロールが終わって立ち上がれないほどに魂を揺さぶられる作品は10年に一本かもしれない。
上映館が少ない上に回数も少なく、上映期間も短い本作。
もっともっとたくさんの人にみて欲しいと願う。
私の周りにも子宝に恵まれない友人がたくさんいて多額のお金をかけて不妊治療に通ったり諦めたりする姿を見てきた。
栗原夫婦が決断する特別養子縁組も相当の覚悟が要る。
朝斗くんは本当に良い子で、幸せな生活を送る栗原家。
幼稚園のいざこざはあるものの、朝斗くんを信じる母親の姿に学ぶことも多かった。
朝斗くんがこんなに賢く優しい子なのは育ての両親が愛情いっぱいに育んだからです。
それと同時に産みの母親ひかりさんが彼を愛してたからだと思う。中学生の2人が幼いなりにも愛し合って授かった子。
でも理解してはくれない周りの大人の対応でひかりさんは生きる意味を失いかけ、荒んでいった。
実際に養子縁組をしたご夫婦も出演してドキュメンタリー映画をみているかのようなリアルさ。
育ての母親役、すっぴんの永作博美さんの演技とベビーバトン代表の浅田美代子さんの演技が素晴らしい。
そして蒔田彩珠さん。彼女が出演してる映画はどの作品もワンランク上になる気がする。これからが楽しみな女優さん。
新型コロナウイルスがなければね、カンヌ国際映画祭でたくさんの人にみてもらえたのに…
まだまだ今後も本作を大切に届けてほしい。
エンドロールの歌にまた泣けます。
タイトルは〝アサトヒカリ〟
私はこの映画の主人公は実はひかりさんだと思ってます。
朝の訪れとともに最後の最後に発する朝斗くんのひとことで彼女は力強く生きていけるのです。
なかったことにはならないのだから。
2020年ベストムービー!⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️✨
泣かされた映画はたくさんありますけど、心をわしづかみにされ、本当に胸の奥が痛くなった作品なんて、今まで無かった、そんなの(笑)…
(大袈裟でなく、本当に胸の内をわしづかみにされます、この作品…笑)
心救われる映画だったと思います。
間違いなく、今年1番の邦画作品!笑
*エンディング曲に、最後子ども(子役?)の歌と声を入れたのは、ちょっと過剰な演出だと思いました。本編のエンディングだけで、十分すぎるぐらい、作品の心は伝わって来ました…。
朝日に映し出される"ひかり"の疲れた、そして(やっと)安心した表情、育ての母と子どもの眼差し…美しいラストシーンでした。
最後のセリフは疑問
ストーリー本編というより、登場人物の過去について時間も長く、丁寧に描かれていたのが良いと思った。特別養子縁組を知らない人は勉強になり、特別養子縁組の当事者(子ども側も親側も)は、共感できる場面がたくさんある。
この作品で新しいと思った視点は、生みの親が生んだ後もしっかり描いているということである。育ての親は子どもが来てしまえば生みの親とは連絡が取れなくなるから、生みの親の人生に関して関知できない。生みの親側も、子どもの命を助けてもらう特別養子縁組という制度があっても、自分の人生までもは助けてもらえない。特別養子縁組に関わる人は、生みの親のその後の人生についてもケアをしなければならない。示唆的ではあるが、監督と作者は、今の特別養子縁組制度が不十分であると批判しているように思えた。
自らが特別養子であるという立場からこの作品を批評すると、最後の「会いたかった」という朝斗くんのセリフは、養子の感情を表現していないと思う。その言葉だけでは、養子という立場の子どもの葛藤を表していないからである。「会いたかった」と言うまでには、様々な生みの親に対する負の感情を克服しなければならない。また、会わなかったことの尊さに気づけていない。この作品では、朝斗くんに対する真実告知教育はうまく行われており、彼は生みの親を親であると認めている。しかし、社会を経験していないせいで、生みの親に関する感情がまだ荒削りである。また、生みの親が子どもを取り返しに来ないという、当たり前の幸福に子どもはなかなか気づけていない。従って、お節介だとは思うが、最後のセリフは、子どもを成人にした上で、ビシッとスーツでも着させて言わせると効果的なのではないかと思う。
また、良い映画を見るといつも思うのだが、良い映画はその役者の人格にまで目が行く。今回生みの親の役をやった蒔田さんは本当にうまかったと思う。
少女達の涙
養子に迎えた息子へ愛情を注ぐ母佐都子を永作博美さんが、妻を思いやる夫清和を井浦新さんが( 父性溢れる演技でした )、新しい家族を迎える夫婦を豊かな感情表現で熱演。
我が子を手放し苦悩する少女ひかりを、蒔田彩珠さんが無垢な演技で好演。
浅田美代子さんの抑えた演技が光っていました。
新聞販売店店主が、涙を浮かべながらひかりに語った言葉に泣けました。
少女達の涙の理由、命を授かるという事、養子を迎え育てる家族の思い、感じる事の多い作品でした。
映画館にて鑑賞
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