「アサトヒカリ」朝が来る 星月夜さんの映画レビュー(感想・評価)
アサトヒカリ
ああ…もっと早くみれば良かった。そして映画賞に投票すれば良かった。
今年みた映画で1番心揺さぶられました。
まるで映画のお手本のような作品。
辻村深月さんの原作小説と河瀬直美監督の相性がとても良いのかもしれません。
原作よし、キャストよし、演技よし、脚本よし、演出よし、音楽よし…河瀬直美監督は地道に積み上げてきた実力を余すことなく発揮している。
私は映画をたくさんみるけれど、みた映画はほめる方だけど…
エンドロールが終わって立ち上がれないほどに魂を揺さぶられる作品は10年に一本かもしれない。
上映館が少ない上に回数も少なく、上映期間も短い本作。
もっともっとたくさんの人にみて欲しいと願う。
私の周りにも子宝に恵まれない友人がたくさんいて多額のお金をかけて不妊治療に通ったり諦めたりする姿を見てきた。
栗原夫婦が決断する特別養子縁組も相当の覚悟が要る。
朝斗くんは本当に良い子で、幸せな生活を送る栗原家。
幼稚園のいざこざはあるものの、朝斗くんを信じる母親の姿に学ぶことも多かった。
朝斗くんがこんなに賢く優しい子なのは育ての両親が愛情いっぱいに育んだからです。
それと同時に産みの母親ひかりさんが彼を愛してたからだと思う。中学生の2人が幼いなりにも愛し合って授かった子。
でも理解してはくれない周りの大人の対応でひかりさんは生きる意味を失いかけ、荒んでいった。
実際に養子縁組をしたご夫婦も出演してドキュメンタリー映画をみているかのようなリアルさ。
育ての母親役、すっぴんの永作博美さんの演技とベビーバトン代表の浅田美代子さんの演技が素晴らしい。
そして蒔田彩珠さん。彼女が出演してる映画はどの作品もワンランク上になる気がする。これからが楽しみな女優さん。
新型コロナウイルスがなければね、カンヌ国際映画祭でたくさんの人にみてもらえたのに…
まだまだ今後も本作を大切に届けてほしい。
エンドロールの歌にまた泣けます。
タイトルは〝アサトヒカリ〟
私はこの映画の主人公は実はひかりさんだと思ってます。
朝の訪れとともに最後の最後に発する朝斗くんのひとことで彼女は力強く生きていけるのです。
なかったことにはならないのだから。