「恋」男と女 人生最良の日々 U-3153さんの映画レビュー(感想・評価)
恋
色気がすごい。
さすがはフランスと思えてしまう。
人生に貴重なものなど「恋愛」以外にはないんじゃないだろうかと思える。他者への愛情の解説書みたいな作品だった。
惜しむらくは、俺がその全てに共感できる程には年齢を重ねていない事だ。
今作の和訳を担当してくださった方に心から感謝を述べたい。
もう奇跡みたいな映画で、これは続編にあたるのだ。前作は50年程前になるのだろうか…その間に各々が経てきた人生の全てが作品に反映されてるように思える。
冒頭の長回しが圧巻で…彼の表情を延々と映す。話を聞いているだけ。彼は多分あまり芝居というものを意識してないように思う。
でも、いつしか僕らは気づく。
「ああ、彼にはこれらの記憶は重要ではなく、もっと忘れたくない記憶があるんだろうな」と。…まいった。完敗だ。
この冒頭の何分かで、この作品のなんたるかを教えてもらえたような気にもなる。
宝石のような過去の記憶。
愛して愛された思い出。その時の会話、感情…全てが眩しい。まるで、それらは水分のようで、枯れていた花がみるみる活力を取り戻していく様に見えてくる。
ただ、これにも仕掛けがしてあって、爺さんの妄想なのかとも思えてくるのだ。
そおなると回想の意味合いは若干異なってきて、そこに哀れさのようなスパイスが加味される。この辺りの二面性にフランス映画特有の人への造詣の深さを感じ、中々に味わい深いものがある。
あるのだが…物語的な起伏は少なく眠気に襲われる事もしばしば。
なので、もう一度観たいと思う。
断片的ではあるけれど、素敵な台詞が多く…これから老いていく自分にとっては凄く参考になるような印象がある。
何より残念なのはラストで寝てた事だ。
…何しに映画館まで行ったんだ、このボンクラめ。
爺さんがどおなったのか分からず仕舞いなのだ。なので、近い内にリベンジしたい!
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2回目を鑑賞。
素敵な作品だった。
痴呆症を患ってる男性
最愛の人に再会した女性
稀にみるラブロマンスだった。
男性は他の全てを忘れても、最愛の女性の事だけは忘れない。何をしたか、何をしてたか。目の前の女性がその人であると分からなくても。
女性の方は彼の事も過去の事も克明に覚えてる。幸せだった記憶も切ない記憶も。
そして、彼がどれほど自分の事を愛してたかを告白される事になる。
共有出来ずにいた恋を、彼の口から偽りのない言葉で語られる。
「ずっと彼女の事を思ってた。」
女性は恋に落ちたかのようだった。
間違いなく老婆なのだけど、恋する女性はいくつになってもこんなに可愛いのだろうか?
すごく魅力的だ。
甘ったるい声に伴って柔らかなフランス語が呪文のように俺を魅了していく。
おそらく彼は再会した記憶も忘れている。会う度に初めましてのような事なのだと思う。
積み重なるものはなく、毎回リセットされるような出会いでも2人はとても楽しそうだった。
恋に囚われてる時間に勝るものなどないかのようだった。
50年の時を経た続編。
50年前の映像がしっかりと残っていて、それを本人達の回想として使える奇跡。
その時間を一瞬にして無にしてしまえる「恋」の威力にほだされる。
男性が乗る車椅子を押す女性の背中は、まるで初デートに赴くようで、ウキウキとして若々しくあった。
フランス映画の真髄をみたような作品だった。