「独特のブラックさと、ほのぼの系ハートウォーミングの谷間をゆく」鉄道運転士の花束 ぐうたらさんの映画レビュー(感想・評価)
独特のブラックさと、ほのぼの系ハートウォーミングの谷間をゆく
大感動できたり、大笑いできたり、というわけでもないのだが、何だか妙に心をくすぐるものがある。それはひとえに、日本ならばブラックジョークの度合いが過ぎるとコンプラに引っかかりそうな内容が、このセルビア=ボスニア合作では実にユニークに味付けされて俎上に上がっているからだろうか。お国柄を感じさせる「笑える、笑えない」のラインには多少ヒヤヒヤ。でも決して人の生死を安易に持ち出しているわけでなく、映画の重要な柱として用いているので、嫌な後味が残ることはない。
これは少年の通過儀礼の物語だ。血は繋がってなくても、それ以上の絆で繋がった父と子がいる。初老の鉄道運転士は子どもに対して「恐れるな。きちんと前を見て、経験を重ねて、進んでいけ」と遺言にも近い意志を伝えようとする。かくも親から子へ「人生の踏み出し方」を伝授する意味では、レトリックはどうあれ、万国共通の普遍的なテーマとして受け取ることができた。
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