「元ネタゲームを嗜む人にフィットする作品」フリー・ガイ ニコさんの映画レビュー(感想・評価)
元ネタゲームを嗜む人にフィットする作品
ライアン・レイノルズの、主役を張れる俳優なのにモブと言われても納得する絶妙な存在感。モブだってポテンシャルを秘めているかも知れないし活躍していいという、現実社会のモブ(だと自分のことを思っている人)達へのポジティブなメッセージ。ゲーム好きな人ならついつい引き込まれるであろう小ネタの数々。
本作のように、AIが人間並の自由意志を持った結果、人間と共闘したり個人的な(人間じゃないけど)幸せを希求したりするという理想と楽観のエンタメは嫌いじゃない。
ただ、私は今ひとつはまれなかった。そもそもあまりゲームをやらないからか?
元ネタゲームのビジュアルやらネタが出てくるのを拾って楽しむという、ゲームを嗜む人向けの要素がこの作品の結構重要な柱なのかも知れない。クリス・エヴァンスがちらっと出たところとスターウォーズネタまで使ってみせたところは、直接的な映画要素だったこともあってはっとしたけど。
主人公のガイがAIで人間のアバターではないというところ、ゲームの世界なので破壊的インシデントが日常風景であるという設定を目にした序盤はへえーと思ったものの、ガイはゲームキャラだから、車や電車に跳ね飛ばされてもリセットされれば元の日常。回復アイテムで傷や疲労感は瞬時に消えるから、彼の受けるダメージに関するハラハラ感はない。加えて、物語の展開や冒頭に書いたようなメッセージは王道過ぎるほど王道。ごめんなさい、途中ちょっと寝そうになってしまいました。
レディプレイヤーワン、マトリックス、シュガーラッシュ、トゥルーマンショー、その辺をミックスしてコメディ風味にしたような雰囲気(細部はもちろん違うけど)というか……ちなみにレイノルズは「現代版バック・トゥ・ザ・フューチャー」と評している。
決してこれらの要素をただ寄せ集めた作品ではない。ただ、オマージュを入れつつ、全部足して頭数で割った以上の新しいものが生まれることもあるとは思うが、本作からそのような印象は残念ながら得られなかった。
ミリーやキーズ、アントワンも全てゲームキャラで、人類絶滅直後の世界でバッテリーが切れて映画が終わるとかになんないかなー、などと何故か殺伐としたことを思いながら見ていた。
私の感想は個別のゲームの知識がない一観客の主観に過ぎない。そんな私でも、ゲームの中で成立する世界へのリスペクトは感じたので、誠実な作品なのだとは思う。
ちなみに公式サイトの、デッドプールによる「フリー・ガイ」リアクション動画はくすりと笑えるのでおすすめ。