劇場公開日 2020年2月21日

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「大国のイデオロギーに翻弄された人々」スウィング・キッズ estrellaさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0大国のイデオロギーに翻弄された人々

2025年3月31日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

朝鮮戦争の事を韓国人達にきくと、大国の冷戦の代理戦争だったと言う。
米ソという大国のイデオロギーと世界の覇権争いのせいで、アジアの同じ民族が殺し合い分断された。
そんなことがなければ、友達で隣人同士だっただろう人同士が、アカだ、米帝の犬だ、と憎しみあい殺しあう。

実際この巨済収容所は存在し捕虜同士のバトルや殺戮事件がおきたそうだ。

映画では、民主主義の自由をアカに教えてやり米のダンスを踊らせるのを記者や世界に見せるという米のプロパガンダにより、米で差別されてる黒人兵の指導で捕虜のタップダンスチームをつくらされる。
指導が米の黒人、ダンスチームのメンバーが、中国人、朝鮮戦争で北から逃げてきたら間違われて捕まった北朝鮮の市民、パンパンと悪口いわれた女性で日帝支配時代に満州にいた朝鮮人(のちの朝鮮族といわれた)、北朝鮮の兵士。
朝鮮は2つに分断されたと言われるが、実際はまだある。
韓国と北朝鮮。日本の統治時代に満州にいた朝鮮人が中国北部に取り残され現在は中国北部に住む中国市民で朝鮮族と言われる人達。韓国で朝鮮族は今は差別されてる。

言葉が通じなかったり人種も違う、思想も違う同士がダンスで会話していく。タップダンスはお互いのかけあいによる会話みたいなダンスだと思うけど。

戦争や冷戦がなければ、朝鮮の隣人で、友達でダンス仲間だっただろうに。
それはアメリカ人も同じだ。

アメリカの白人による黒人差別やアジア人差別もひどい。
イエローモンキーと呼ばれ人間扱いされないアジア人差別の様子や、家族を養うためにアメリカ兵の情婦になろうとしてる朝鮮人女性。日本の敗戦後の米の占領時代とかぶる。

戦争で家族と引き裂かれて泣く北の人達の苦しみもかわいそう。

戦争やイデオロギーや思想統制や表現の自由を奪われ、ダンスや音楽を奪われても、それでもダンスや音楽から離れられない。
爆発しそうな自分の感情をダンスにぶつける。

ダンスや音楽は戦争もイデオロギーも超える。
戦争で殺伐とした人達に人間の心を取り戻してくれる。
ダンスや音楽がもともと好きな朝鮮半島の人達には、ダンスと音楽は切っても切り離せない文化だ。

だが結局冷戦のイデオロギーのせいで悲劇が…。

米の有名ダンサー、KPOPアイドルでEXOのD.O.のダンスがうまいのはうなずけるが(KPOPとダンスは違うけど)、演技派のオ・ジョンセがダンス踊ってたのにびっくりした。

映画の構成やストーリー、少しセピア色で50年代のレトロなムードの映像、何度もあるダンスシーン、戦争やイデオロギーで翻弄されるそれぞれの人生、史実をもとにした捕虜収容所内で殺戮シーン。

監督は、なぜ同じ民族同士が憎しい殺しあうようになったのか、韓国人は反共思想を教育され、最近北をアカと悪口言う韓国人が増えたので、同じ人間同士考えてほしいとこの映画を作ったそうだ。

非常によい作品だった。
ぜひ見てほしい

estrella
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