「NYらしさを感じさせないNY映画」ジョナサン ふたつの顔の男 バッハ。さんの映画レビュー(感想・評価)
NYらしさを感じさせないNY映画
舞台はNYなのだが、主人公ジョナサンは可能な限り世間との繋がりを持とうとせず、自宅と職場で世界がほぼ完結している。だからこの映画にはNYのランドマークや名所みたいな風景はまったく登場しない。ただ、夜になるともうひとりの自分に身体を明け渡すので、そっちのバージョンだと『タクシードライバー』みたいな映画ができるのかも知れない。
ジョナサンのマンションがあるのはルーズベルト島で、マンハッタンの脇、イーストリバーに浮かぶ細長い小さな島で、これまでも映画の中で見てきたフォトジェニックな場所だが、これまた無記名かつ没個性な場所として映し出されているのが面白い。
場所の無記名性という意味では、セリフの中に「JFK空港」という言葉がなければ、NYという設定すら気づかなかったほど。つまり、ジョナサンの「自分を世間から切り離したい」という想いがそのまま街の描写に繋がっているのだなあ。あの浜辺の現実感のなさも含めて、すべてを心象風景だと捉えて観直すもの面白そうだ。
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