「派手さはないが、巧さとセンスが光る」ジョナサン ふたつの顔の男 ぐうたらさんの映画レビュー(感想・評価)
派手さはないが、巧さとセンスが光る
これらのドッペルゲンガー的な筋書きは小説や映画などで何度も消費されてきたものだが、しかし本作はその路線をただ繰り返す凡庸な作品のように見えて、しかし自ずと光の角度を変え、ミニマムな世界観の外へと連れ出してくれる。
派手さはないが、旨さとセンスはある。恐れ多くもそれほど高い期待値ではなかった私などは、このじわりと洗練されていく展開に「なかなかやるな」と感心させられもした。それゆえ最初の期待は低ければ低いほどいいし、事前に過度な情報や先入観を持つことは厳禁とも言える。
この手の作品はキャスティングでつまずくパターンも多いかと思う。繰り返しの描写によって基調トーンが形成されるので、この「繰り返し」に耐えうるだけの透明感と、癖のない柔らかさは不可欠。その点、アンセル・エルゴートは最適のチョイスだと言える。彼の素の魅力を味わう上では「ベイビー・ドライバー」以上に名刺代わりとなりうる作品である。
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