劇場公開日 2019年10月25日

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「映像革命は素晴らしいが…」ジェミニマン 金井 悟さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5映像革命は素晴らしいが…

2019年11月25日
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「ジェミニマン」を観ました。

「ライフ・オブ・パイ トラと漂流した227日」の名匠アン・リーが監督と聞いて、ちょっとびっくり。こんなアクション映画も撮れるんですね。

ストーリーは、史上最強とうたわれるスナイパーのヘンリー(ウィルスミス)が政府に依頼されたミッションを遂行中、何者かに襲撃される。自分の動きをすべて把握し、神出鬼没な謎の襲撃者の正体は、秘密裏に作られた若い頃のヘンリーのクローンだった、、、。
その衝撃の事実を知ったヘンリーは、アメリカ政府を巻き込む巨大な陰謀の渦中へ、、、
と、またしても陰謀もの。

DIAアメリカ国防情報局というのは、あまり聞いたことなく、いつもならCIA所属となるところ、DIAという組織があるんですね。知りませんでした。

さてこの映画、アクションシーンは凄まじく迫力があって、特にバイクチェイスのシーンは、なかなかの鳥肌ものです。絵が綺麗なんですよね。素晴らしく。
なんでも本作は毎秒120コマ、4Kの3Dカメラで撮影されているそうで、実際の肉眼で見るのとほぼ近い映像体験が得られるとのこと。
後半のガトリングガンから逃れるシーンも、観たことのない臨場感です、映画もここまで来たか、と感心するために観に行くのもアリと思います。

驚くシーンは他にもあります。
なんとウィルスミスが2人3人出てきます。
クローンと戦うのです。対面シーンなどCGとのことですが、全く違和感がない。
とうとうここまで技術が進歩したのか、と震えるほど素晴らしい映像技術です。
ジュラシックパークを観たときと似た感動でした。

しかし、そのクローンとの戦闘シーンがこの映画のウリなわけですが、クローンが人間過ぎて、戦闘マシーンとして育てられたわりには、甘ちゃん過ぎて話にならない。「この人間に戻りたい」的な妖怪人間ベム要素は、正直どうなのか。
ホントに個人的な意見ですが、人間要素ゼロの格闘マシーンと化したクローンと戦う、人間対クローンみたいな話にした方が良かったのでは?

変に感動の押し売りみたくしたことが逆効果と思います。単なるアクション映画では興行的にウケないという判断でしょうか。

音楽や物語のテンポは、ジェエイソンボーンのシリーズを思い起こさせるミスシリアスな曲調と展開で、完成度は高いですが、一方では、飛行機の移動などは、ハンガリーの景色を見せたいだけの不要なシーンです。
ミッションインポッシブルでもこういう移動シーンがよくあるのですが、その国でなければならない理由を作らないと観てる方は興ざめしてしまいます。
情報屋から話を聞くだけのためにハンガリーまで移動しなければならないわけないだろ、そんなこじつけは、観る側もすぐに見抜きます。

映画史的に考えると映像革命的なポイントとなる映画が時代時代にあって、そういう意味では見るべきところは多分にあるのですが、個人的には75点かな。

金井 悟