劇場公開日 2019年7月27日

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「どんより感だけが漂う」パラダイス・ネクスト R41さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5どんより感だけが漂う

2024年7月15日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

難しい

2019年の作品 特徴的などんより感が漂う
出来事の因果関係を明確にしないことがこの作品を難しくする。
おそらく描きたかったのは、島と牧野がシンルーの死をどう考えるのかということを、巻き添えとなって死んだシンルーそっくりのシャウエンの死を通して表現したかったのだと思う。
しかし、それにしては物語の筋がわからないので共感しにくく、特に島の考えがまったくわからないままで、牧野も車の中で泣き喚くが、ヤクザに言われて薬を用意しただけということがどれだけ牧野を苦しめているのかわからない。
「誤りと後悔」がこの作品のテーマだろうか?
楽園という言葉が登場するが、この作品から想像し得ない。
物語は、
一人の女性シンルーが麻薬中毒死したことがすべての発端のようだ。
ただし、シンルーと島の関係ははっきりしないがその死因と復讐を兼ねて事件を追うのがシルバーのスーツを着た片目の男。表向きの顔は不明だが工作員と殺し屋を兼ねた人物だと想像する。
この片目の男と島は顔見知りだと思われるが、島は日本のヤクザがシンルーに麻薬を投与するなどとは思ってもいなかったのでパーティ会場から早々に消えた。
結果的に島は深い失望感を抱いてしまうのだろう。
島は現場にいなかったことで因果関係などわからない。
片目の男にとってシンルーは娘同様の存在だった。彼は二人の男と仲良くしているシャウエンを殺すことで同じ思いをさせたかったのだと思われる。
島は元々日本のヤクザで、頭の加藤の手下だったが、日本の警察から逃げるために台湾ヤクザを紹介された。台湾で仲良くなったのが片目の男とシンルーだったと思われる。
島にとってこの事件は八方塞となってしまったのだろう。
また、
女と一緒にドライブする二人の男を片目の男はどう捉えたのだろう?
早々に二人を殺さなかったのは、おそらく島をそれなりに信用していたからだろう。
食肉の中から島は現金と拳銃を手に入れた。
それは台湾ヤクザから受け取ったのだろう。目的は牧野殺害
しかし島は動こうとしない。
ここがこの作品最大の謎だ。
なぜ島は牧野を始末しなかったのだろう?
その要因の一つは、バーで出会ったシンルーそっくりのシャウエンに動揺したのではないだろうか?
自分がしようとすることに間違いがあるというインスピレーションを受取ったのだろうか?
しかもねぐら場所におかしな親子が住み着き、通訳として牧野が連れてきたのがシャウエンだった。そうして徐々に彼女と接点を作ってゆく。
この過程で加藤が射殺され、台湾ヤクザも殺害された。島は牧野を始末する任務を引きずりながらその遂行の意味をなくしただろう。
同時に島はシンルーを守れなかった自分への罪悪感を背負うようになったのだろうか?
島は片目の男の幻想を見る。
彼の言葉が聞こえてくる。
それを振り払うように車を出ると、幻想に向かって拳銃を発射する。
拳銃は、牧野を始末するためのものから片目の男と対峙するためのものになる。
結局片目の男は島との対峙を選択しなかった。
さて、
片目の男
彼は非情だ。
娘そっくりの女性を殺すことができる。
それは島に対する復讐と絶交を意味するのだろう。
ではなぜ牧野を殺さなかったのだろう?
日本のヤクザが牧野を狙った理由は出来事の目撃者だったからだ。
片目の男はすでに事件の情報すべてを手に入れてしまったのだろう。
牧野は目的ではなくなった。
片目の男は島を良く知っている。彼の弱みを知っている。
片目の男が島に求めたのは、娘への哀悼だろう。
しかし、すべては私の勝手な妄想でしかない。
まったくレビューに自信がない。
さらに、
島が船にシャウエンを乗せ沖へと出る際、目をつぶって拳銃を発射したのはなぜだろう?
彼に拳銃を向け発射した事実
島に託された使命の遂行
片目の男の気持ちとの重なり
しかし、
楽園には結びつかない。
難しすぎる。

R41