「【オルフェとユリディス】」燃ゆる女の肖像 ワンコさんの映画レビュー(感想・評価)
【オルフェとユリディス】
18世紀のフランスは、絶対主義が揺らぎ、ブルジョアジーが台頭し、革命が起きた時代だ。
ただ、この時代、まだ、カトリックの教えは支配的で、男性は女性に対して優位な地位にあった。
それは、ソフィの妊娠、そして、カトリックでは神の意思に背くおして禁止されている堕胎を人知れず行わなくてはならなかったことからも推測される通りだ。
また、禁じられていると云うところでは、同性愛も同様だ。
この作品は、プロローグからエピローグまで独特なピンと張り詰めたような緊張感が続く。
おそらく、現代とは異なり、この時代にはより厳しく禁じられていた同性愛が物語のテーマになっているからだろう。
マリアンヌとエロイーズの互いに抗えない気持ち。
エロイーズが抗うことの出来ない自身の運命。
この対比も独特な緊張感に繋がる。
こうしたなか、マリアンヌとエロイーズが画家と肖像画のモデルという関係を超えて接近し、気持ちが変化する様は、切なくも美しい。
作中で、引用されるオルフェとユリディス。
オルフェは振り返り、ユリディスは息絶える。
ユリディスは、オルフェに振り返って欲しかったのではないのか。
エロイーズは、ユリディスを自分に重ねたのではないのか。
抗うことの出来ない運命からは逃れられないと知っているから。
しかし、オルフェとユリディスの物語には続きがある。
息絶えたユリディスの後を追い、オルフェも自ら命を絶とうとするが、神はユリディスを生き返らせ、オルフェの元に返すのだ。
マリアンヌは、オルフェとユリディスの物語のように、エロイーズと再会できるのだと信じていたのではないのか。
だが、エロイーズはマリアンヌがそこにいると気付いていながら、涙を流し目を合わせようしない。
オルフェとユリディスの物語は男と女の物語だ。
神はこれを許しても、マリアンヌとエロイーズの愛を許さなかったのかもしれない。
燃ゆる女の肖像は、内面に燃えたぎる愛情を秘めた女性を表したものなのだろうか。
僕は、もしかしたら、この時代にあって、同性愛という禁忌を犯したものは焼かれるのだということを示唆しているのかもしれないとも思った。
時代背景、心の揺らぎ、運命、対比、引用された物語と似た展開と異なる結末が相乗効果と独特な緊張感をもたらす秀逸な作品だと思った。
エロイーズはユリディスを自分に重ねた、と私も思いました。オルフェはなぜ振り返ったのか?、にエロイーズは彼は詩人であることを選んだから、と言っていたと思います。だから画家であるマリアンヌを念頭においたと思います。最後のシーンで、エロイーズはユリディスでありオルフェだった、かな。美しい映画でした!レビュー素敵です!