「息を呑む世界遺産・・・女優は死後も家族を意のままに、したい!?」ポルトガル、夏の終わり 琥珀糖さんの映画レビュー(感想・評価)
息を呑む世界遺産・・・女優は死後も家族を意のままに、したい!?
2019年(アメリカ/フランス/ポルトガル)
監督 アイラ・サックス
大女優フランキー(イザベル・ユペール)は家族一同を、ポルトガルの世界遺産・シントラに集めます。
癌で死期の近いと自覚するフランキーは、残される家族の今後の生活の段取りを進めたいと、内心思い家族を集めたのですが・・・
ポルトガルの世界遺産・シントラ近辺の映像が息を呑むほど美しいです。
“この世の楽園“と呼ばれていますが、ビーチも近く、寺院や、遺跡そぞろ歩く街並み、
素晴らしい映像で、半分はこの景観にもたれかかった映画ですね(笑)
去りゆく人・・・フランキーは、長く家族に君臨する女王でした。
前夫のミシェルは奇しくもこう言います。
「フランキー亡き後、すべては変わる」
現夫ジミー(ブレンダン・グリーソン)との間に生まれたのがシルヴィア。
シルヴィアの夫と娘のミア。
元夫のミシェルとの間に生まれたポール(ジェレミー・レニエ)
そしてフランキーの旧友・ヘアメイクのアイリーン(マリサ・トメイ)
フランキーは長男ポールとアイリーンの中を取り持とうとしているけれど、
そうは簡単にはいかないし、シルヴィアは離婚したがっている。
やはり物語はお金が絡むと俄然面白くなる。
フランキーが推定300万ユーロのアパルトマンを俳優学校に寄贈すると決めていた。
長男ポールの顔色が変わる。
遺産の殆どを寄付してしまう母親に怒って、貰った4万ユーロの価値のあるブレスレットを
森に放り投げてしまう。
慌てて這い回って探すフランキー。
ここがこの映画の唯一人間臭いシーンです。
イザベル・ユペールが、アイサ・サックス監督作に出演を熱望して実現した映画です。
ユペールの一瞬の表情・・・眉ひとつ動かすだけで、思いが伝わる。
いつもは怪演のユペールの抑えた演技。
病を抱えながらも、死後の家族を思い遣り、導こうとするけれど、
現実の方が勝手に動き出す様は皮肉です。
親って凄く愛していても、亡くなって暫くすると開放感を感じませんか?
人間の営みは、次世代へと受け継がれるのでは?
この映画はまるで観光ガイドブックで巡るポルトガルの旅・・・
そんな映画ですが、不思議と静かな諦観が心地良いです。