「タイトルに惑わされぬ様に…」レ・ミゼラブル キレンジャーさんの映画レビュー(感想・評価)
タイトルに惑わされぬ様に…
正直に申し上げて、ヴィクトル・ユーゴーにも、ジャン・バルジャンにも、あの『レ・ミゼラブル』にもご縁が無かった不勉強な私。
コロナウィルス騒ぎで新作公開が延期になったおかげで、こういう普段あまり手を出さない分野の作品に出会えるのは不幸中の喜びでもあるね。
「フランスって他のヨーロッパの国に比べて黒人が多い国なんだなぁ…」
と、ワールドカップの度に漠然と感じてはいた。ただ、当然あそこにいるのはスーパースターな訳で、実際にはやはり国内で大半のアフリカ系の移民は格差や貧困の中で喘いでいる。
この作品は、差別や格差、宗教を内包しながらストーリーが進むし、いがみ合いや暴力も描かれるものの、決して物語は重苦しいだけでなはなく、登場人物たちも根っからの「ワルモノ」ではない。
皆、それぞれの立場で自分や環境・仕事と向き合おうとしながら、人間として当然のエゴがあり、その一方で大切な守るべき家族を持っている。
それでも終わらない暴力の連鎖。
そしておとずれる怒涛のラスト。
抑圧された彼らの蜂起。
「彼」は投げるのか。
「彼」は引き金を引くのか。
「彼」は何を目撃するのか。
思わずブルっとさせられる幕切れに感心。
タイトルに惑わされぬ様に。
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