パラサイト 半地下の家族のレビュー・感想・評価
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良い家族……なのかな?
サギが主題のこの映画、最後にはバレたり破綻したりすることは明白。そのストレスに耐えられるかどうかで、評価が別れてしまうかも。悪人のやることだと笑って眺めるのが一番でしょうね。
でも、良い感じに意外な展開もあり、徐々に先が読めなくなってくる。シリアスで、文字通り胸に刺さるような成り行きも待っていた。結末も渋い。最後まで見て良かったと思います。評価の高さはサギじゃ無かった。
「上・下」の演出、そして「左・右」と「手前・奥」。
○作品全体
貧しい半地下から始まり、丘陵地区にある富裕層へと接近し、また落ちていく…作品の軸はやはり上下の位置関係だ。高偏差値の大学を目指せる学力のあるギウをはじめとして成り上がることができる力を持った家族、という正しく「半地下」という場所からスタートすることで、そこから更に上と下、両方があることを意識づけていることがその証左でもある。
その位置関係を示す演出として鍵となっていたのは階段。家庭教師の面接に行くためにギウが半地下から上がるところに始まり、ギテクがドンイクが刺殺して階段を降りていくところも含め、物語の鍵となる部分には必ず階段が存在する。
階段は上下をつなぐものだが、それだけではない。映像で捉える場合、上下だけでなく画面の左右、手前奥へのベクトルも必ず発生する。その点もこの作品は意識的にコントロールされていた。
例えば左右という進行方向。映像作品では舞台用語の「上手、下手」の演出方法に則るが、この作品にもその傾向はある。画面左の下手へ進む階段はマイナスな印象が強い。一番印象的だったのはムングァンに正体がバレてパク邸から雨の中逃げ出すシーンだ。長い階段を下って降りていく進行方向は左。階段の長さも相まって再び堕ちていく、といった印象が強くなる。階段と壁面、そして降りていく三人というシンプルな画面からは「下手へ下る」という演出が鮮明だ。
一方で画面右、上手側には階段を登る演出で強烈なものがあった。それはグンセがギウに石を投げつけるカットだ。横位置で捉え、下手へ歩いていき、上手へ階段を登っていく。すごく作為的というか、演出が全面にでる画面。石を投げつけた場所はキッチンであり、そこに包丁もあっただろうが、それを無視して更に階段を上がるグンセ。半地下の人間へ完地下の人間の「下剋上」といった具合だろうか。衝撃的なカットだが、捉えるカメラは客観的であるからこそ、その位置関係は浮き彫りにされている。
もう一つ挙げたい進行方向は「手前と奥」だ。
この進行方向は左右と違って影の演出も加わった、すこしフィクションチックな演出だったが、ハン邸にある完地下へつながるドアをくぐるシーンが印象的だった。
特に印象的だったのはギテクがドンイクを刺殺したあとに完地下へ潜るところと、ギウがハン邸を買取り、地上へ上がってくる(という空想)シーンだ。影の中へ降りていくギテクの背中と、影から浮かび上がってくるかのようなギテクの表情が映し出される。左右の方向性とはまた違うエッセンスの入った進行方向による演出が、上下の位置関係を彩っている。
「上下」だけではただの事実関係を映すだけでしかないが、そこに様々なベクトルを加えることで単なる「上下」だけでは描けない世界の景色や、上下の色をより濃くする情景が浮かんでくる。「上下」への熱意と工夫に膝を打つ132分だった。
○カメラワークとか
・ファーストカットもそうだけど、序盤はピン送りを使った演出が多い。これは上下と特に関係なく、手前奥を使った演出で使うのだけれど、序盤は上への意識、というより眼の前にある状況(半地下)にキム家が一生懸命だった、という見方で良いだろうか。ギウが初めてハン邸へ行ったとき、出された飲み物を飲もうとしてフォーカスがヨンギョからギウに行くのだけれど、ヨンギョの声で再びフォーカスがヨンギョに戻る、といったカットがあった。目の前の飲み物という「目先の旨味」から引き離された、みたいな感覚だろうか。
・「境界線」という言葉も度々出てくるけど、面白かったのはギジョンがダソンについて理解したように見せるカット。ギジョンが「小1のときなにかありましたか」と言った瞬間にギジョンの左肩をなめたカメラを右へパンして、ギジョンの右肩からヨンギョの驚愕の表情を映す。ギジョンが信頼を勝ち得た瞬間を巧みに演出していた。
ドンイクは度々境界線に踏み込んでこないことを良しとしている発言があったけど、ギテクが運転する車中シーンでは二人はほとんど同じ画面に入ってない。会話のシーンは切り返しが常だった。ギテクが境界線を割っていないというのを表現するのに効果的だったと思う。一方ヨンギョは上記みたいな演出があったり、どんどん境界線を超えてほしい、と思ってる感じがあって対比的だったなと感じた。
○その他
・上下というわかりやすい位置関係とは一線を画する「地下臭」という要素がすごく良かったな。めちゃくちゃ抽象的なのに、その言葉で完全に境界線を作ってしまうという、決定的であり曖昧な要素。その異なる2つを併せ持つ「地下臭」が最後の決め手なのが「リアルにある格差社会を舞台にしたフィクションの映像作品」の本作の良さに繋がっているな、と。
陽のあたる邸宅の地下、仄暗いボロ家の青天井
柄谷行人は、夏目漱石『坑夫』、有島武郎『或る女』に言及しながら、そこに描かれた階級意識を論じた。特に有島の『或る女』について、船の甲板と船底という上下構造が、「支配/服従」「上層/下層」「男/女」という権力関係を象徴的に表している、と指摘した。
そう、「象徴的」に。
本作は、高台の邸宅に暮らす富裕なパク一家と、貧民街の半地下のボロ家に暮らすキム一家の社会的階層を視覚的構造で見せて、その対照性、つまり「格差」を感覚的に伝える。また、キム一家の人々に独特の「匂い」がある、と描くことで、彼らの置かれた環境を生理的に伝える。
こうした、論理というより情動、思考というより生理に訴える演出が、ラストで、なぜキム・ギテクがパク・ドンイク社長を手にかけたか、瞬時に観客にわからせることに成功している。
経済的格差や貧困の問題を描いた近年の作品、是枝裕和監督『万引き家族』、トッド・フィリップス監督『ジョーカー』、ケン・ローチ監督『家族を想うとき』などと比較して、『パラサイト』が特異なのは、格差社会の構造を一望して、貧困層の苦境だけでなく、富裕層の危機感をも取り上げたところだ。貧困ゆえの問題や苦悩は、多くの作品で描かれている。DVや犯罪、教育機会の不平等や政治の失敗など、個人、家族、社会それぞれのレベルで見つめられてきた。本作は、もちろん貧困層の苦悩を描くが、安穏としているかに見える富裕層も、実は苛烈な競争社会から自由ではないことが示唆される。高台にある豪邸の地下には、誰も気づいていない「危機」が眠っている。その危機が、いつか破滅をもたらしにやって来る。
韓国社会の切迫した状況が、鬼気迫る本作を生んだのだ。
お金持ちになるには相当の努力しなければならないと学んだ
俺の夢はお金持ちになることだ。お金さえあればよい所に住めるし、美味いものも食えるし、女とも遊び放題だ。俺は常にお金のことを考えている、お金がないと不安になって生きるのが苦しくなってくる。お金持ちになったら絶対に幸せになれると思う。
そんなとき、いま話題の映画『パラサイト 半地下の家族』と出会った。評価が高くて逆に不安だったけど、面白かった。パク一家は絵に書いたようなお金持ちだ。夫はIT社長、美人な妻、大豪邸、みていて羨ましくなった。俺も将来こんな贅沢な暮らしをしたいな。
そんな家族とは対象的にキム一家は超貧乏、あきらかに臭そうな暮らしをしている。こんな暮らしは絶対にしたくない。まだ俺の今のアパート暮らしのほうがマシだ。この臭いが悲劇を生むことになるなんてね。
パク父がキム父のことを臭いと悪口を言うシーンは胸が痛くなった。どんな気持ちで悪口を聞いていたのだろう、俺だったら机の下で泣いちゃうよ。貧乏人の臭いはそう簡単に取れるものじゃないのね。パーティーでキム父がブチれて社長を殺すシーンは、よくやった!と心の中でガッツポーズした。あんな臭そうに鼻をつままれたら怒り爆発するわ。
この映画を観て、お金持ちになるには相当の努力しなければならいと学んだ。パク社長はその地位に上り詰めるまで苦労があっただろうし、家族サービスも大変そうだ。パーティーでインディアンの格好してたけどあんなのやりたくない。どこか抜けてるアホな妻を相手にするのも嫌だ、料理くらい自分でつくれ。家庭教師とデキちゃうような娘も気持ち悪いし、元気すぎる息子を相手にするのも疲れるだろうな。こんな家族をまとめあげてるパク社長を尊敬するわ。
最後の1カットが好き。キム息子がお金持ちになって、父を救いに行ってハッピーエンドかと思いきや、それが実は願望だった。これが願望ではく現実だったら、出来すぎててしらけてた。そんな簡単にものごとうまくいくわけによ、ちゃんと血のにじむような努力をしなくちゃ。時間はかかるかもしれないけど頑張ってほしい。会いに行けるころには貧乏人の臭いが消えてると思う。俺もお金持ちの匂いを目指したい。
ブラックコメディという言葉がピッタリ
愉快な作品。客観的に見ようとしていたけど、やっぱり家族に引き込まれる。
人は限界を超えたら笑うっていうところが、
きちんと描かれているのが、人間らしくてよかった。ギウのどこまでもポジティブな未来思考は
かわいくて、わりと好きだ。
ギウの父親は、最後、あの殺しをする必要あったかな?
計画なのかな?無計画?衝動?チリツモの苛立ちがマックスを迎えた?何回か見たらわかるかも。
最後に一つ思うことは、格差の描き方が、はなはだしい。けどこれが韓国の実情なのかな。
中間がいいかなって思ってしまった。笑。
スリルを感じる
想像していたものとは違うかったが面白かった。韓国の映画を見るのは初めてだが、良かった。最後父が地下から上ってきて息子と抱き合うシーンは、将来の妄想なのか現実なのか、馬鹿な私には分からなかった。
韓国の格差社会
半地下に住む家族が富豪の家で働く話
前の家政婦ともめて殺害したことで住込み男が怒り貧困娘は殺される。住込み男は貧困母が殺すが貧困父が富豪父を殺し地下に隠れる。貧困息子は夢を語り前の生活を続けるEnd。
前半は文化の違いで馴染めない部分もあるが後半ハラハラする場面が多くあり楽しめる
どんな風に「見る」のか、非常に興味深い
カンヌやらアカデミー賞やらでとにかく話題の作品なので、今更ド素人の私が演出的な話をしてもしょうがない。
「格差社会」について悲観的な話をするのも味気ないし、ここは一つ「結末は絶対に話さないで!」というお願いに隠された、ポン・ジュノ監督の照れ臭いくらい純粋な「希望」について書こうと思う。
この映画に登場する人物の中で、全てを俯瞰的に把握しているのは一番幼いダソン。
ダソンはかなり面白いキャラクターだ。
ダソンは「先住民マニア」である。西部開拓史という近代アメリカの支配階級から見た「繁栄の始まり」は、先住民側から見れば抑圧と搾取の始まり。
先住民に夢中なダソンとは、虐げられてきた弱者に寄り添う存在なのである。
IT企業社長の父は「現代の社会を支配する人たち」の象徴だし、美人で流されやすい母は「扇動に煽られる市民」と「トロフィーワイフ」の側面を併せ持つ。
ダソンの父と母は現在の社会の有り様に、完全にはまりこんだ者たちだ。
そんな両親はダソンの行動を「奇行」だと思っているが、その奇行は格差が横行する社会への潜在的な拒否反応である。姉のダヘはダソンの奇行がフェイクであることを見抜いているが、ダソンにしてみれば「奇行」を行っているのは両親やその価値観に従う姉であり、搾取と支配に取り憑かれた大人たちの方である。
ダソン自身、キム一家に「半地下の臭い」を感じ、彼らが同じ臭いであることを指摘するが、そこに父のような「不快感」はない。
「半地下の臭い」のするギジョンになつき、膝の上に座って大人しく絵を描いていたり、クビになった「完全地下」の元家政婦・ムングァンと連絡を取り合ったりしている。
ダソンの中では確かに生活の差はあれど、格差によって生まれる「支配・被支配」の差別は形成されていないのだ。
あまりにも幼いので彼が物語の中で積極的な役割を果たすことはないが、地下のグンセから発せられるSOSを読み解けるのはダソンだけだった。
終盤、グンセの襲撃によって阿鼻叫喚と化したガーデンパーティーで、半地下の住人であるギウを救おうとするのは高校生のダヘであり、地下の住人となってしまったギテクを取り戻す決意をするのは20代前半のギウである。
ダソンほど純粋な存在ではないが、彼らもまた今存在する社会のルールに絡めとられるギリギリ手前の人物たちだ。
厳然と存在する格差に対し、「それはおかしい」と声を上げたり、弱者を差別することなく手を差しのべたり、自分の可能性を信じ賭けてみようとする人物たち。
コミカルなまま悲劇に突入していく物語、悲観的に見れば「格差の再生産」を予感させるようなラストシーンとは裏腹に、ポン・ジュノは若い世代に対して、希望を込めて作品を作ったのだろう。
そしてそれがピュア過ぎて照れ臭いから、ネタバレ厳禁!なのだと思う。
元々のタイトルは「デカルコマニー」にしようとしていたらしい。絵画の技法の一種で、観る人次第で印象が代わるこの技法は、自分がどこに視点を持つか?で全く違った作品鑑賞が可能になる。
「パラサイト 半地下の家族」に絶望を見るのか、希望を見るのか?それは自分自身の絶望と希望、そしてそのどちらを選択するのかを発見できる行為でもあるのだ。
韓国映画の真髄
当時、映画館で観ました🎬
裕福な一家に身分を偽って入り込んだ失業中のキム家の人達。
やがて想像を絶するような展開が繰り広げられ…。
韓国は結構ダークなストーリーがありますよね。
ソン・ガンホが演じるキムは見事だったと思いますが、なかなか重めな結末というか。
あの怪我で息子が助かったのは救いでしたが…。
罪を犯してしまった彼は、残りの一生を地下で過ごすのでしょうか。
お金を持つと、人は慢心していくものなのか。
持たないものを、見下すようになってしまうのか。
重たい内容ですがそれでいて、考えさせられる映画でした。
ただ無能なだけでは?
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両親・息子・娘の4人家族がいた。息子の友達は金持ちの娘の家庭教師をしてた。
留学中に代わりに見て欲しいと言われた息子は、偽の身分証を作って潜り込む。
そこで家政婦や運転手を失脚させ、4人全員がその家に雇われることに成功。
主人一家が泊まりでキャンプに行った日、家族4人でその屋敷で酒を飲む。
すると首になった家政婦が突然来て、地下の隠し部屋に夫を匿ってたことが判明。
しかしアホミスから、4人が実はグルって分かる決定的証拠の動画を撮られる。
そしてその弱みを握った前家政婦は本性を現し態度が急変。
さらに奥様から、大雨でキャンプが中止になりもうすぐ帰ると連絡が来る。
焦ってもみ合ううち、前家政婦を階段から突き落として殺してしまう。
その夫を何とか地下に閉じ込めて、母が家政婦として何とか表面を取り繕う。
他の3人は隠れてたが、そこで父の体臭が酷いと言われてるのを聞く。
その日は何とか3人そろって脱出し、その数日後のこと。
息子は前家政婦の夫も殺すしかないと思い、地下室に行く。
そして復讐に狂う前家政婦の夫から返り討ちを食らう。
さらに男は他3人にも襲いかかり大騒ぎになる。娘は刺されて死亡。
この混乱に乗じて父は主人を殺して逃亡。世間を騒がせることとなる。
父の行方は不明とされてたが、当然その誰も知らない地下室に逃げてた。
何とか一命をとりとめた息子はいつか金持ちになってその家を買おうと誓う。
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何も考えず見るだけならそこそこ面白い。時間もすぐに経つ。
見終わった瞬間は4をつけようかと思ってたが、やっぱり2になった。
ってのはあまりにも自業自得過ぎて、この家族に何の共感もしないから。
不真面目でバカな奴らが詐欺を働いて、その報いを受けただけなのでは?
こんなのにヒガミ殺された屋敷の主人が不憫過ぎ。
家族4人とも性根の腐った人物ではないように描かれてたように思う。
でもやってることがクズなんだから、感情移入も糞もないわな。不幸で当然。
特に父親は家族全員を不幸にし過ぎ、その無能さは万死に値するって。
あとあの金持ちでバカ正直な奥様が、可愛いし色っぽ過ぎw
見る価値はあるが学ぶところはない
韓国のTV番組も映画も見たことがない。やはり初の外国映画でアカデミー賞となれば気になる。冒頭から、主人公の家族は卑しく、浅ましい感じが嫌な感じ。長男のギウが友人の紹介で、家庭教師に潜り込むまでは普通だが、その後、妹、父、母が、それぞれ家庭教師、運転手、お手伝いとして潜り込むのは、唐突感多し。家族で計画を立てるというシーンもあまりないし、その危険性について考えることもなし。大体にして、履歴書も身分証明書とかも書かせないで、家族とか出身とか聞かないで、その後も嘘をつき続けるには、さすがに無理がある。計画的だとしたら、あまりにも無茶すぎる。もし、違和感を感じないのであれば、あまりにも図々しい。それも、金持ち連中相手であれば、やっていいのか?
貧困なファミリーの、えげつなさ、浅ましさが半端なく、でも、それは、そういう生活をしていれば、当たり前っていう辺りがメッセージか?確かに韓国の富裕層のイメージもえげつなく、身勝手な事件がよく話題になっている。
金持ちの常識外れを揶揄する場面が多く、そういう所で留飲を下げているのだろうとも読み取れる。
しかし、嘘で入り込んだ家族も、最後には、より大きな犠牲を払うことになる。そんな方法では、決して、幸せにはなれないというところは、まともでした。
韓国人、そして韓国のことを知っている人には、いい映画なのではないでしょうか。日本人には、ちょっと違和感が大きいです。金持ちを騙して、家族が入り込んでという発想は、日本人には浮かばないと思います。これは、韓国の問題をクローズアップするためのCM映画でした。
観る人を選ぶ
私はポン・ジュノ監督作品が好きで、観る前からある程度の覚悟はできている。
しかし、普段から韓国映画は観ない、
暴力描写は耐えられない、
グロいの無理、
そういった好みの方には辛い二時間となるだろう。
カンヌのパルムドールは暗くてどんよりしてるものが多いので、
賞を獲ったからと言って心温まる物語を期待したら
裏切られることになる。
くどくどと書いたが、この作品は
格差社会を扱いつつもエンタメな作りであり、
惨たらしい展開でありつつも
どこか間の抜けたところもあって
ジャンル分けしようとすると困難だ。
映画祭の受賞作品に疑問を感じる話もよく聞くが
人間というものを描ききってるかどうか、というところに
収束していると自分は理解している。
恐ろしい面もバカバカしい面も内包しているのが
人間なのだから、ジャンル分けがしづらくてもなんら不思議はないのだ。
全編の雰囲気からああいった展開へ行くとは
多少予測していた。
唐突ではないかという意見もあるだろうなと確かに思う。
最後に犯罪を犯すのが父親であるという点がポイントだと思う。
貧困だが家族思いで一家の家長として
子供達も彼なりに愛してきた父親である。
それが、子供たちの前でプライドを潰され、
さらに男としても差を見せつけられる。
極め付けに愛する家族たちが傷つけられて、
娘たちを救急車を呼んでいますぐ病院へ運ぼうと
金持ちが言ってくれるならまだしも、
自分たちだけ逃げるために鍵を要求し
臭いと鼻をつまみ、下層民への扱いが
犬畜生レベルであることを改めて知るのである。
あそこで刺してしまうのは、同じ人間なんだという
感情の発露であり、己が家族を馬鹿にするなという
父親ゆえの怒りでもあると自分は受け取った。
息子の書いた手紙は父に渡す術がない。金もないから大学へもいけないだろう。
金持ちになって、という将来の希望はきっと叶わないのだ。
親が下層だとその子供も浮上の望み薄。
半地下と地下の間にも大きな差がある。
貧困層の中でも格差が生まれてはいあがれないのではないか、という
悲しく息苦しいラスト。
無常感に苛まれる。
ポン・ジュノ作品の持ち味だ。
完璧な映画。コメディ秀逸。
完璧に近い映画。あえて私見で欠点挙げるなら物語にあまり深みは感じなかった。あと終盤、父が逃亡後の流れがもっと面白ければ完璧。ここで面白さが減速した為。だが息子の登山からラストまでが秀逸なので欠点箇所は3分間くらい。そして刑事と医者が秀逸でツボるのでそこ引いて2分くらい?約2時間の映画で欠点2分となるがそのたった2分内で物語の流れを端的に描写して、この映画、無駄な場面は皆無と感じる。そして別に欠点というか単に私の志向に過ぎないので。韓国嫌いな為つい欠点探してしまうのだ。
桁外れの面白さ。韓国映画を避けてた私的には初めての韓国映画だが、今後観る映画全部これと比較してしまうかもしれない。本作観た後だと他の映画の欠点に気づきやすくなりそうな気が。映画の模範のような出来ゆえに。思わず巻き戻してリピートしちゃうほど出来の良い場面が多い為なかなか先に進めないという、私的にはもどかしい映画でもある。
コメディ、ミステリー、スリラー、バイオレンス等ジャンルが散らばってるがコンセプトはブレてないしスムーズに視聴者誘導してて全く違和感がない。ジャンル盛り込みは駄作への道になりがちだが、よくこんだけ上手くまとめたな。コメディ比率が高いゆえ何度も観たくなる中毒性ある。視聴者飽きさせない事に最も主眼置いた純然たる娯楽映画と感じるが、同時に丁寧さとこだわりも全編通して感じる。何といっても映像美と構図、音楽の使い方も好み。演出やカメラワークのような基本は言うまでもなく上手いと思える。
■ 地下室の夫
リスペクト!の言い方と言ってる時の体の動きが絶妙。日本語吹替も字幕版と互角の絶妙さしっかり再現してて満足。ここ面白く言えるよう声優は練習したんだと思う。この地下室の夫は顔もそこそこ良いのがいい。リスペクトの言い方絶妙でも不細工なら好きになれない。この人表情も上手いから余計面白い。本作は数回観てるが毎回リスペクトの直前あたりで来るぞ来るぞ・・とソワソワが止まらないほど。そして巻き戻してリピート。この人バナナの食べ始めは少ししか齧らない。後で一気に食べる為だ。こんなしょうもないところまで気づいてしまうくらいリピートしてしまった。あと声が妙に可愛い。
■ 出演者
英語以外がアカデミー作品賞とった事に驚いたのが本作観たきっかけだが、今では男優女優賞もふさわしいとすら思える。全員知らない役者だが皆良い顔してるうえ凄い味がある。半地下一家は皆哀愁漂う顔してて年齢性別関わらず味わい深さ醸してる。そこ日本映画との差を感じる。全員リアルな演技ゆえ物語に没入できるから面白さが余計増す。本作は韓国嫌いを覆(くつがえ)す威力ある。もしくは逆に半地下一家の非倫理性や図々しさに韓国人らしさ感じて嫌悪増すという両極端。しかし一家が職を乗っ取るところ超ご都合主義で進んでいく為コント色が強く、だから図々しさがむしろ笑えるし、ここ笑う以外あるのかと。監督無能でご都合主義になった訳じゃなく効果狙ってあえてご都合主義にしてる。ご都合主義は笑わせる効果絶大なのだ。コメディなら非倫理的で当然で、倫理的にしてしまうと笑えないどころかご都合主義にもうまくハマらなくなってしまう。非倫理性も図々しさもコメディには必須で、どちらか欠如したコメディは全く面白くない(私見です)。
すがすがしいほどの図々しさに笑いを禁じえない。しかも描写も演技も秀逸でこんな一級品コメディ久しぶりに観れて大満足。
前半完全にコメディに振り切った潔い本作がアカデミー作品賞とはアカデミー賞も捨てたもんじゃない。見るべき所をしっかり見てる。
■ 本編
この映画は冒頭から面白いが特にユーモアのセンスが私の好みに合致しすぎてる。些細な場面でもいちいち面白い。ギャグ散りばめすぎでは。もしくはギャグのつもりじゃないかもだが。勝手に笑っちゃうだけで。
半地下一家は意外と有能揃いで、特に兄妹は若いから就職できそうだが「警備員1名募集に大卒500人殺到」らしいから有能兄妹でも就職困難かもと韓国就職事情の悲惨さに少し衝撃。
笑えるのは、上のおばさんのWiFi繋がらない→代わりにカフェのWiFiキャッチ。自宅でWiFi難民か…ここ笑うべきじゃないかもだが、貧困表現のついでに笑わせに来てる気もして冒頭からクスクスが止まらない。まあ韓国諸事情に無知な自分が韓国映画を真に理解できるとも思えないから気楽に観れる。これが邦画なら心痛めるかもだが。夫をフルネームで呼ぶのかとか息子に「息子」呼びするのかとか文化の違いを実感。
スマホでピザ時代探してる時の兄貴の表情とか4箱に1箱不良品と言われた後の父の全身とかツボる場面多い。背景のエキストラの配置が好きだ。さり気なさが上手い。半地下の窓からの景色も、窓の外の人間の有り様も風情あって良い。窓の外で水かける場面も美しく音楽も美しい。好きな場面多すぎてこの監督の美意識に惚れる。美しいのみならず職を得た一家の心がそこに表現されてて感動する。窓使った描写が上手い。構図と映像美とコメディを全部ハイレベルで堪能できる貴重な映画である。
WiFiの電波を祝って(笑)台詞がいちいち面白い。この父の幸せそうな表情上手いなぁ。ちゃんと心に響く演技をする。ミニョクに食事じゃないと言う父。そして演技。これは笑う。貧困を面白おかしく描く作品は多いが本作は笑いにちゃんと落としてくれるのが良い。というか単に私のツボというだけかもだが。あと、この父の演技が見事だから面白さが増してる。ミニョクに対してあえて平然とする演技、ピザ屋と妻に私じゃありませんみたいな演技。絶妙なさじ加減でコミカルさを演技に混ぜてくる。そのさり気なさが凄い上手い。だからついリピートしてしまうのかな。
そして父ほどではないが富豪一家の奥様も上手いと思う。奥様のとぼけたみたいな表情が最高に面白い。筋書き知ってるコント師みたいな表情するからコント感が増して笑える。監督の狙いもそこにあると思ったがどうなんだろ。父と奥様の連携プレーでガッツリ笑わせに来る気満々なのがもう耐えられない。全編観た後だとミニョクが「奥様はヤング・アンド・シンプル」と言う場面だけで笑いが込み上げる。
この映画は好きな台詞も多い。文書偽造学科はないのかとか、入浴してるギジョンの「テレパシーだ。サンキュー」という台詞が何故か分からんがめちゃくちゃ好き。地下室の夫の台詞はほぼ全部良い。
あと何といっても、血つけたティッシュ持って振り返る時の父の顔。これアカデミー男優賞ものだろう。この演技顔上手すぎるし面白すぎる。笑いのツボ的確におさえてくる役者と監督。次は奥様がショックのあまり目閉じてうっとり顔。確実に笑わせに来てる。この奥様も笑わせる表現力秀逸で私的にはこの奥様あってこそと思う。奥様はもちろん上手いが加えて監督有能で役者の技量を存分に引き出せるのかも。この数分前からの家政婦解雇作戦の一部始終、演出が凄い。音楽での盛り上げ、カメラワーク、スローモーション等々全部最高で何度もリピートした。特に父の演技顔は目に焼き付く程リピートしてしまい全然先に進めない。
富豪一家が留守中の豪邸でくつろぐ半地下一家。インターホン鳴った時の緊迫した空気がリアルだから集中して観れる。モニターに映る元家政婦がニヤニヤ顔なせいで不審さ際立って軽くホラー。地下室への長い階段が、折れた形状で先が見えないのがホラー。音楽と、元家政婦の叫びと、後を追う妻の「家政婦さん!」の声で更に緊迫感が増す。不気味な空気感の演出上手い。
テーブル下から脱出中の父が電気ついて途中で止まるところ。あそこ別にいらんだろ(笑)ストーリーになんら影響与えてないよ。そう思うとますます笑えてくる。あんなの入れてくるのがコントなのだ。あの場面は無駄に思えても笑わせる為には必須。いちいち監督がユーモア仕込んでくるうえセンス秀逸だからこの映画大好きなのだ。
階段を這い上がってきた元家政婦を妻が的確なタイミングで蹴り落とすところ。息子に尾行刑事に気づかせる方法として刑事にコケさせるところ。コント色強くて笑える。それどころか、こういった場面をダラダラと平凡に描写せずユーモア巧みに利用してスパッと一瞬で端的に表現し物語をテキパキと進めるのが凄い好きだ。好みゆえめちゃくちゃ有能な監督に思える。
手術後の息子がずっと笑ったまま時が経過。スマホで父のニュース閲覧中に首ポキっと鳴らせてるから息子の悲嘆は特に明確には描かれてない。息子の傷心描写する絶好ポイントなのに。ラストの息子の哀感強調する為にあえてここでは描かないのかな。安易に泣かせにかからないのは好感持てる。とはいえここで普通に息子悲嘆してくれたら物語に深み出そうに思えるし、私的に映画ベスト5以内に確実に入るので少し残念さもある。首ポキっは意外。
「日差しが降り注ぐから、父さんはただ階段を上がって下さい」こんな詩的な美しい台詞、普通のコメディ映画じゃ出てこない。この台詞好き過ぎる。やっぱコメディは本作の単なる1ジャンルでしかないのだ。
そして、「その日までお元気で」とは言いつつも、息子の表情や空気感で実現不可能な夢想と分かる。その日など永遠に来ない雰囲気醸してるゆえ救いも希望も描かずに物語は終了する事になる。何とも言えない哀愁漂っててこの映画にぴったりの幕引きだった。もし夢想の実現で幕閉じてたら私的に本作の評価下がるので、夢想シーン観た時ハッピーエンドかよと一瞬落胆したが。さすがこの監督はラストでもヘマはやらかさず、方向性が的確で完璧。というより単に私の好みの問題かもだが。仮に夢想の実現可能をほのめかすラストなら、格差は変えられるという希望のメッセージが伝わり名作っぽい雰囲気で終了し、もしかして本作の一般的な評価も更に高まるかもしれないが、安易にそれをしないのが好きだ。そんなハッピーエンドだと私的に本作の魅力だいぶ薄まってしまう。ラストだけ浮くから。
歌がエンドロール途中で流れるけど歌詞や歌声が息子が歌ってるように思えて、ここで初めて涙腺弱まった。歌聞いてると息子の不幸な境遇に思いを馳せてしまうから。のんきな歌声なのがまた良い。逆に心に刺さるから。誰歌ってるかは知らないが。なのでこんな最後まで私的にほとんど完璧な映画だった。
この映画良すぎるから書ききれないほど感想出てくるし初見の段階でリピート地獄だった。巻き戻さないで一気に観たい気持ちとの戦いだった。最初は韓国語聞くの嫌で吹替にしたが絶対字幕のが良い。韓国アレルギー治った気もするので他の韓国映画も観る気満々だが本作をつい再生してしまう。役者が全員魅力的なのも観る気にさせるし演技も全員上手い。こんな何度も観れる映画は私的には貴重だ。半地下一家の自宅の間取り図が欲しいし一家の普段の日常とか観てみたい。というくらいこの映画にハマってしまった。モノクロVer.も観かけたが映像は当然鮮明な為モノクロの良さあまり感じず中断。
2021/01 | VOD
喜劇か悲劇か、惨劇か
映画としてのフィクションが過ぎるかのようで、妙なリアリティを感じて、思わず見入ってしまう。
半地下というのがミソで、いわばグレーゾーンから濃淡をつけた
白と黒の見事なコントラスト、見事な混沌ぷりを描いている。
その混ざり合ったグレーは、雨によって更に混ざり合い、混沌を深めたのち、
洗い流され、本来の姿を、くっきりと浮かび上がらせます。
ところで、この映画は喜劇ですか? 悲劇ですか? 惨劇に見えますか。
この映画は、非常に狡猾で素晴らしい、意地の悪い仕組みになっていて、
見る人それぞれの立ち位置により、評価や感想がガラリと変わる仕組みになっているのですね。
(まるで古くは、チェホフ「桜の園」のようですね)
一見コミカル調に描かれている前半戦ですら、パラサイトされる側に所属されているご家庭では
たまったもんじゃない、やめてくれと、被害者目線に感じるでしょうし、
痛快と見られた方は、実は自分自身の中にある、パラサイト側の目線を
嫌なほど思い知ることになります。笑っているうちに、映画の術中に嵌っているのです。
そして更に、地下に住む本当のパラサイト側の客層は、また違う、熱い、なにかがこみあげてくることでしょう。
後半戦は如何でしょうか。
あの惨劇は、痛快でしたか。それとも、見るも無残な凄惨な事件でしたか。
眼をそむけたくなるのは、何故でしょう。目を見開いて見入ってしまうのは、何故でしょう。
正解はありません。それぞれが、どのような感想を抱いたか。
それが答えとなっていて、ブーメランのように跳ね返って、深く、突き刺さります。
あの事件でいちばん興味深いのは、
憎しみは、自分にとって、近しい存在に抱かれるということですね。
近しさのない存在には「リスペクト」すら生まれるのです。(本物の尊敬か、自身により捏造されたものかはわかりませんが)
しかし、自分とそう変わらないじゃないかと思う存在には、憎しみが生まれるようです。
人間って面白いですよね。
尊敬も憎しみも、そして愛も、自分のなかの自尊心に由来するのですね。
青年はほんとうに、少女を愛していたのでしょうか。
あの父親は。あの母親は。ほんとうに互いを愛していたのでしょうか。
そしてそれらは、経済的、社会的な立ち位置とは、必ずしも、一致しないような気がしますね。
ラストで、自ら、地下に堕ちることを選んだ父親からは、いまはきっと、
世界のすべてが光り輝き、愛おしく見えることでしょう。
さて、、パラサイトしているのは、実は、あの家族ではありませんよね。
貴方の中にパラサイトしているものの正体は、、、貴方自身がいちばんご存じですよね。
人に奨めたくなる作品
映像から臭いを感じ取れる稀に見る傑作
選択できない人生の上で我々は生きていくしかないのだと思い出される
金持ち家族の奥様のキャラクターが印象的
出てくる俳優全てが素晴らしい
終わり方もよくて、いつかまた観たい
特に前半が面白い
主人公一家が頭良すぎるし、寄生して行くまでがめちゃくちゃ面白い。
その上、貧困層と裕福層の格差社会がわかりやすく描かれています。
主人公一家はあんなに頭が良くて演技も出来るのに働けない…というか働き手がないというのがまた格差ですね。そこがまた上手いところです。
あと寄生されてる側の奥様は多分箱入り娘なんでしょうね。常識を知らないというかアホの子すぎるのがまた面白いです。
逆に言えば、「奥様や旦那様は人を疑うことを知らない=裏切られるような所に居ない=社会的地位が上」ということを表しているのでしょう。
個人的に前半の寄生していくのが面白く、何度も見返しています。
後半はなんとなく精神的にしんどくなってきてしまいます。
面白いけれど、後半部分は韓国映画らしさが出過ぎてちょっと嫌に
ストーリー展開が面白かったけれど
肝心の格差問題は正直、あまり伝わってこなくて
はて、何が言いたい映画なの?と、見終わって思ってしまっった
その原因は、後半の凄惨な展開にあるように思う
目を背けてしまい、ストーリーは追えなくなりました
まとまってるなぁ
共感性羞恥がやばい。入り込んでる感じ。みんな演技上手。
パクソダムすごくよかった。
ハッピーエンドじゃない感じもすごくいい。
伏線回収はもうちょっと期待しちゃった。
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