劇場公開日 2020年1月10日

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「邦画を全面的に凌駕し、誰もを韓流に落とす最高傑作」パラサイト 半地下の家族 真中合歓さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0邦画を全面的に凌駕し、誰もを韓流に落とす最高傑作

2023年6月15日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

最高のエンタメ、そしてメッセージ性も内包した邦画を全面的に凌駕した映画史に残る傑作だと言えるでしょう。自分もこの映画を見て韓流に落ちました。。。

まずテンポがとにかく良い!!もう嫌でもこっちが楽しくさせられる、キム一家が乗っ取るまでのテンポが最高。でもそれだけならこのシーンが上手かっただけとも言えますが、乗っ取った後の展開も神としか言いようがない。

まさか

『前任の家政婦のおばさんも地下暮らし仲間で家の奥に旦那を飼ってました』

なんて面白すぎるだろと。乗っ取った後のキム一家の葛藤的なそっちかと思いきや、非現実的かつエンタメ的に裏切ってくるのです!

これだけならむしろホラーにも進みそうな展開ですが、本編では絶妙にコメディ色も有ったりして『うわあああ』ってよりもむしろニヤついちゃうような、『おんもしれえええ』って感情の方が勝つんです。不思議です。これが監督の技量なんでしょうか。

そして何より特筆すべきは俳優陣の演技力でしょう。イカゲームでもそうだったんですが、設定自体は別にそこまで複雑じゃありませんし、画面に映されている情報だけで理解が出来るくらい簡単な映画です。

でもそこに圧倒的な重厚感と満足感と面白さを追加しているのが、紛れもない俳優陣のクオリティでこれこそが邦画に足りないモノなのです。主人公はやや控えめだけど内面からは確固たる意志が伝わってくるようなそんな雰囲気を醸し出してますし、妹はしっかりしてるけど家族の中でも最も現状に嫌気を感じている人間味を感じさせる。

父親は抜けてるかと思いきやむしろ家族の前では脱力してるだけなタイプでなんだかんだしっかりしてる。母親も同じくで貧乏ながらに楽しく賢明に生きている家族のその息遣いが伝わってくるようなキャラ付けと演技なんです。

もしこれが邦画だったならお父さん役は小日向文世辺りが演じて、随所でボケをかますおっさんになりそうです。つい最近役所広司さんも言ってましたが、日本のドラマや映画って視聴者を笑わせようとするんだと。邦画を見ていてどことなく感じる腑抜け感はまさにそれだったって事なんですよね。

隙あらば俳優のお茶目的な感じで笑わせようとする。別に俳優に興味は無いんです、作品を見せてください。

やってる事は勿論犯罪なんだけども、そこに描かれているのは必死に今を生きているキム一家の活力なんです。そのパワーと知恵と時にユーモラスに観客は魅せられる。一見すると金持ち家族乗っ取りとんでもコメディなんですが、その内訳は韓国社会のリアルに紐づいた笑うに笑えない、けどどこか元気になる不思議なエンタメなんです。

この融合と重厚感、情報量の多さは最早邦画では再現できない領域です。ジャニーズやイケメン()俳優に甘えてる内に抜かされちゃいましたね~。

日本、オワコンです。

真中合歓