「貧困を多層的に描きながらも娯楽作品として成立」パラサイト 半地下の家族 あいわたさんの映画レビュー(感想・評価)
貧困を多層的に描きながらも娯楽作品として成立
クリックして本文を読む
非常に完成度の高い作品。
貧困をテーマにした作品で、高低差を効果的に使って演出。しかも、貧困の描き方も薄っぺらいストーリーでなく、非常に多層的で重厚だ。軽妙なやりとりから後半の緊迫のストーリーまで欲張りな内容で、ストーリーは暗いなごらも娯楽作品として完成している。
貧困が描き出した悲劇というのが一般的な見方と思うが、自分は真っ当に生活していた富裕層のあの家族が気の毒でならない。貧困がきっかけとはいえ、犯罪行為を続ける2家族の争いの果てに善良な家族がめちゃくちゃにされた。そんな圧倒的な理不尽が許されようはずがない。
ラストを見ていると、貧困を理由とした悲劇として真実から目を逸らし、地下で生き抜いた父との貧困を脱した末の再会を感動ストーリーとして描いている。とはいえ、(いくら日本以上の受験地獄とはいえ)大学に3浪した主人公がそう簡単に財を成せるはずもなく、現実感は無い。父の地下での堅忍不抜の人生も、冷静に考えればそこに正義は無い。
ハリウッド好みの重厚なストーリーと明快な起承転結は素晴らしい。但し、自分はそこに1本筋の通った正義感や美学があって欲しかった。
コメントする