劇場公開日 2020年1月10日

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「鑑賞というより、体験」パラサイト 半地下の家族 msyrupmさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0鑑賞というより、体験

2020年3月2日
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鑑賞方法:映画館

笑える

悲しい

知的

2回観ました。

1回目は、
ただただ圧倒され、脳も心臓もぐったりして、
でもとてつもない充実感と、
それでもまだこの作品のすべてを味わい尽くせていない気がして、
終始この映画が頭から離れず。

1週間後、たまらず2回目を鑑賞しました。

ぎりぎり観客が置いてけぼりにされない、
絶妙な速さと分かりやすさで物語が進む。

しかし、魅せるべきシーンは魅せる。
ためるべきところは、ためる。

その緩急が絶妙。

視覚的にも、一瞬一瞬が絵画のように美しい。

表面的に美しいのではなく、
人間的で、醜く、汚いはずの情景であっても、
とにかく全てのシーンが美しい。

台詞も必要十分。
(多少反日的な台詞が出てくるが、それは韓国の日常なのだろう。あるいは国に味方してもらう戦略か。政治的な話には疎いのでご勘弁を…。)

音楽も素晴らしい。

あらゆる要素が、一切の無駄なく、完璧に調和している。
そしてその調和は、この作品のテーマである「格差」を、見事に表現している。

極めつけは、何と言っても役者陣の演技。

どの役者さんも本当に素晴らしい。

中でも、特に、ソン・ガンホの演技が、表情が、素晴らしい。
この方がいなければ、
この映画は成立しなかったのではないかと思うほどだ。

ポン・ジュノとソン・ガンホが同時代に生きていることは、奇跡なんじゃないかと思う。

脳も、目も、耳も、心臓も、
全てが忙しく、でも全てが喜ぶ。

ああ、嗅覚も刺激されます。
匂わないはずなのに、匂う。

あらゆる感覚を研ぎ澄まさざるを得ない、
抗えない映画。

もはや鑑賞というよりも体験。

数十年に一本の傑作と言えるのでは。

スクリーンで観なければ、
いや、体験しなければ、きっと後悔する作品。

いつまでも余韻から抜け出せない。
完全に、この映画にパラサイトされてしまった。
書いているうちに、また体験したくなってきた。

msyrupm