「今も地下にいる。」パラサイト 半地下の家族 kazuyaさんの映画レビュー(感想・評価)
今も地下にいる。
【あらすじ】
現代の韓国で、半地下に住む4人家族のキム一家、成功を収めたこれまた4人家族のパク一家の物語。
キム一家はみなが失業中であるが、息子が友人のツテで富裕層での家庭教師の仕事を見つける。パク一家は人を疑うということを知らない性分か、キム一家の策略を疑うこともせず、知らず識らずキム一家の家族を、家庭教師、お抱え運転手、家政婦とみなを雇うこととなった。
パク一家にはもともと家政婦が働いていた。キム一家の母がその職を奪うことになるのであるが、パク家族が外泊で家を空けていたある晩、元家政婦が家に忘れ物をしたと言って家を訪ねてくる。そのあとを追って、キム一家が見たものは、幽閉された家政婦の旦那であった。パク一家の大きな屋敷の下には地下牢があり、長い間そこには人がいたのである。その事実と同時に、その家政婦に、キム一家の秘密も握られてしまった。パク一家の急な帰宅のため、とっさに、キム一家は家政婦と旦那の二人を、地下室に閉じ込めてしまう。家政婦は、頭を強打したようである。
その翌朝、パク一家の息子の誕生日パーティが開催された。キム一家(もちろん別々な人間として)もそのパーティに召集された。しかしみな、地下室の中が気がかりである。キム一家の息子は、一連の出来事を自らが蒔いた種として責任をとろうと考えている。大きな石を持って地下室に向かった。地下室にあったものは、家政婦の遺体。それから、狂人と化したその旦那であった。息子は逃げ切れず、持ってきた石の一撃をくらい倒れた。旦那は止まらず、包丁を持ってパーティが開催されている庭に向かう。そこでキム一家をあやめようと、娘に包丁を突き立てた。キム一家の母はたまらず応戦し、狂人も倒れる。そこに駆けつけたのはパク一家の父であるが、死人を前にした男の侮蔑的な様子に、キム一家の父は我を忘れ、パク一家の父を刺し、その場を逃げ出した。凄惨な殺人事件だった。
その後、キム一家の母と息子は裁きを受けるが、間もなく監視下のもとで釈放された。ある時、今はもう家主の変わったパク一家の旧宅の様子を見てみると、そこに父のメッセージを読み解くのである。父が、地下室にいることを知る。
【感想】
映画として、喜怒哀楽すべてがあるって感じです。それでいて、ごちゃごちゃしてない分かりやすいストーリー。だけれども、映画を見た後に残る大きな悲しみというか、虚しさというか、大きな感情を抱かずにはいられないはずです。
あらすじでは言及しませんでしたが、例の家政婦はキム一家の手によって庭に埋葬されました。キム一家の父は、未だに地下室に暮らしています。映画が終わっても、そんな現実が今もなお続いているような恐ろしさを感じるのです。その恐ろしさは、この映画のテーマでもあるはずの、格差、という問題そのものを、現実とリンクさせているような効果があるような気がしています。それが、この映画を見た後のモヤモヤとした虚しさを生むのでしょうか。
全体としては重いテーマですが、笑わせてくる箇所も多いのはさすがだと思いました。セリフまわしの面白さだけでなく、映像によるコミカルな表現も効いています。
面白さだけでなくて、家政婦の旦那がぶつぶつ言いながら歩いていくシーンは狂気そのもの。あー怖かった。映像として印象的なシーンが幾つもありました。ところで、包丁で人を刺すシーン。肩甲骨のあたりを刺すって、あまり見慣れない場所ですよね。韓国だとよくある急所なのでしょうか。
書いていて思ったのは、このシーンはなんだったのだろう?と不審に思うものがこの映画にはあまりないようです。映画の前評判として、字幕が少ない、というものを聞いていましたが、そんなに字幕が少ないという印象ではありませんでした。ただ、映像でもって言葉による説明的な部分を不要としたというのはまさにその通りだと思います。だから、こんなにも見やすい映画なのでしょう。見た人それぞれの解釈に大きなばらつきも出なそうですね。なんというか、すべてが良いバランス、で構成されているのだと思います。