「すごい」パラサイト 半地下の家族 風花土さんの映画レビュー(感想・評価)
すごい
韓国映画はあまり見たことないが、これは凄いと思った。前半はとてもテンポ良くコメディタッチで、あっという間に時間が過ぎていく。つまらない無駄な描写がない。でも、この家族それぞれ馬鹿でもなく、生きていく能力は十分あるのに、今まで報われないのが不思議だ。
逆に金持ち家族の、娘の異性交遊ばかり考えてるアホさ、妻の騙されやすい馬鹿さ、が際立つ。なぜこのように能力も努力もない人々が恵まれた境遇にいる事ができるのか。これが努力では覆すことができない格差の深刻さなのだろう。
貧乏家の父が、無計画が計画だ、計画することイコール失敗の可能性がある、と言ったことが心に残る。
多分、いくら考えて計画しても、それまでの人生はその通りにいかなかった。それは彼のせいだろうか。諦めの境地に見える。彼は穏やかだ。怒りはないように見える。
何かのきっかけで人生が、狂ってしまう、
それは多分貧乏な人達には、沢山そのきっかけが転がっている。父は、諦めて見て見ぬ振りをしているようだった。
だが、恵まれた立場の人間達が、自分以外の階層への、興味や共感がひとかけらもなく、完璧に自分達の世界とは断絶されている事を直接目の当たりにした事で、抑圧されてきた怒りが衝動的に湧く。これも、彼が計画も予想もしていなかった人生が狂うきっかけだ。
彼らの話は、今、世界のどこででも起きているかもしれない。いつ自分に起こるのかもしれないと不安にもなる。それらを思うと気分が沈む映画だ。
コメディも多く、リアルで汚い描写などもふんだんにあるが、画面全体に、下品さがなく、静かな品さえ漂う。乾いた色調、音楽が良いなと思った。
これを作って世に送り出した監督、この映画を商業的に成り立たせることができる国、
韓国って、映画先進国なのだな、と思った。