「良い映画だが好きな映画ではなかった」パラサイト 半地下の家族 i22さんの映画レビュー(感想・評価)
良い映画だが好きな映画ではなかった
とても素晴らしい映画だったがあえて残念だった点だけ書く。
この映画を語る上で格差社会、格差社会というが、私は別にこの映画が韓国の格差社会を本質的に描いたものではないように思う。格差社会を道具的に使ったとても良くできたエンタメホラー映画だと思う。
ストーリーは偶然起こってしまった悲劇であり格差社会による必然的な悲劇ではない。
個人的な嗜好だが、その道具としてストーリーの軌道力となる格差の中の家族がとても一面的で登場人物の誰にも共感できなかった。
結局、別々の社会の人間たちが互いを理解することはなかったし、鑑賞者にもその機会は与えられなかった。誰かが裕福な人は~だ、貧乏だから~だと決めつけずにその家族たちが持つ困難を理解しようとしただろうか。だれも他者を理解せず、自分の理解の外の事に対して受け入れられず破壊する。人間的とは思えない、ホラーである。
貧乏な家族の長男には他者を理解しそうなところは少しあった。裕福な家族の女の子の日記を読もうとしたり、バースデイパーティの時に「急に集まったのにこの人たちはとても自然だ。」という部分。誰かの視点や当たり前を知ろうとした部分だ。だけどこれはストーリーには生かされなかった。
結局貧乏な家族は自分を偽って裕福な家族の見かけしか見ていなかった。そして裕福な家族も他者を嗅覚として感知はできたが結局は他者には何の興味もなく、何も見ようともしなかった。
他者が見ているもの、自分が当たり前だと思っていたものとは違うものを与えてくれることが映画をみるという行為でもある。この映画の家族描写には新しい視点がなかったのが個人的には物足りなかった。