「これは夢だったらと、彼らは思っているのかも」パラサイト 半地下の家族 未佐緒00さんの映画レビュー(感想・評価)
これは夢だったらと、彼らは思っているのかも
公開されてからようやく観る事ができました、動画サイトでレビュー、ネタバリ、あるなしなどたくさんUpされているのですが、両方観て、登場人物や内容を把握して観ました。
内容が分かっていても関係ない、ぐいぐいと引き込まれてしまいました。
貧しい人間が生きるために自分達より上の階層の人間を騙し、寄生する、現実にはそんな簡単にうまくいくわけがない、でもこれは映画だからと思えば安心して観られる、筈なのに。
スクリーンから目が離せず、笑いさえ浮かべる自分がいました。
前半は痛快なまでに全てがうまくいくのですが、世の中そんなに甘くない、何故、家庭教師の青年は教え子と将来結婚するなどと思えるのか。
では自分は嫁の家で皿洗いをしているのねと言う母親、父親も、妹も。
一時の甘い生活が夢の様にあっけなく崩れてしまう瞬間、自分たちよりも下の階級の人間がいたという現実を目の当たりにして彼らは何を思ったのか。
匂い、臭い、それを感じ取った相手の嫌悪の顔を見て怒りを抱いた瞬間、全てが崩れてしまいます。
家族はばらばらになり、全てがあっけなく元通りの生活に戻る母と息子。
そして父親は、あの家の地下に。
金を稼いで買い取りますという、そのときまで元気でいて下さい。
現実にはそんなこと無理だ、息子と父が抱き合う、あのシーンは夢、それも手の届かない。
では、もしかしたら、あの一家が存在したことも夢だと思いたい、でも息子と母は生きている、そして半地下で暮らす。
最後まで、それは現実だというのが、なんだか切ない。