「半地下からの計画」パラサイト 半地下の家族 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
半地下からの計画
やっと我が県でも上映! …と言ってもいつもながら地元ではなく、隣町の映画館へ。
とにかく、観たかった! 今年特にの期待作と言っていい。
韓国映画初のカンヌ国際映画祭パルムドール受賞! それどころか、アジア映画初のアカデミー作品賞も夢ではない。
でなくとも、観たかった。と言うのも、この手の重量級韓国映画が好きという理由もあるが、
『殺人の追憶』『グエムル 漢江の怪物』『スノーピアサー』…。
ハズレ無しの傑作群で知られるポン・ジュノ監督とソン・ガンホのタッグ作!
この二人のタッグ作が好きで、この手の韓国映画が好きで、さらにこの評判!
もう、期待するなと言う方が無理!
早速感想を。
えー、いいんでしょうか…?
2020年始まってまだ一ヶ月しか経ってないのに、早くも本年度BEST1級の作品が現れて。
130分、全く片時も飽きず、グイグイ引き込まれ、のめり込むほど見入ってしまった!
笑い、ハラハラドキドキ、こう来たか!…と思わせるストーリー、ズシンと響く社会的なテーマ、伏線も張られ、衝撃的な展開と韓国映画十八番のバイオレンスも、そしてラストは…。
映画に必要な、我々が映画を見て欲す要素が全て詰め込まれていると言っても過言ではない。他に何が居る!?
やっぱスゲーわ、ポン・ジュノは…。
すでに見た多くの方が言っておられるのと同様に、予想だにしない展開はネタバレ厳禁。
なかなか特異でシュールな話や設定でもあり、核心に触れず上手く伝えられるか不安だが…
韓国の路地裏のような所の、半分地下に埋まっている家に住むキム一家。
父ギテク、母チュンスク、娘ギジュン、息子ギウ。
全員無職。底辺も底辺、まるでゴミ溜めで暮らす便所コオロギ。
そんなある日、ギウが大学の先輩から金持ちのパク家の娘の家庭教師を頼まれた事から…!
一家総出の“パラサイト計画”開始!
まず、ギウが信頼を得る。奥様は美人で魅力的だが、能天気な“ヤング・アンド・シンプル”。
その家の個性的な末っ子に画の才能があると吹き込み、ギジュンがその画の先生として。ギジュンは“偽造”に関しては首席レベル。
ギジュンの罠により、運転手がクビに。ギテクが運転手として雇われる。
後はチュンスクが家政婦として入り込めばパーフェクトなのだが、パク家より長くこの邸宅に住んでいる現家政婦がクセ者。が、遂に弱みを見つけ…。
この家政婦を追い出すまでが、巧みな展開と編集と音楽により、非常に唸らされた!
勿論“他人”として、まんまとパク家に“寄生”する事に成功。それは単に職にありつけたとかではなく、信頼までも得て。
それにしても、何の疑いも無く容易く騙されるパク家。
案外、そうなのかもね。エリートなんて言ってる割りに、頭や中身はスッカスカ。
それに比べキム一家は、よくよく考えると一人一人、才を持っている。
父は運転が得意だし、母は主婦としてベテランだし、娘もアレだけど頭が切れるし、息子はなかなか優秀。
エリートと貧困層の違いって…?
皮肉も効いている。
彼ら家族がやってる事は勿論、悪い事。
しかしそのハングリー精神や逞しさや強かさには不謹慎ながら、喝采!天晴れ!
…とは言え、そんな用意周到な計画もずっと上手く行きはしないのが世の常。
遂に綻びが…。
あるあるだとパク一家にバレ…となる所だが、ここが予想も出来ない展開!
思わずゾクゾクした。
作品の肝となってくるので詳しくは言えないが、敢えて言うなら、“下には下が居た”!
いやもう本当に、衝撃とブラックな笑いとスリルの怒涛の押し寄せ!
一体全体、どういうオチが待ち受けているの…!?
これは是非ともご自身の目で♪
これぞ最高のアンサンブル!
ソン・ガンホは言うまでもなく存在感と名演を披露。やっぱ韓国映画…と言うより、現在の世界映画界屈指の名優だね。
ギウ役のチェ・ウシクが非常に良かった。実質、主役は彼みたいなもの。
母チャン・ヘジン、娘パク・ソダムも印象的。
パク家の奥様役のチョ・ヨジョンは華を添える美人だが、滑稽と共に何だかイラッともさせ、絶妙。
それから、追い出された家政婦役のイ・ジョンウンが…、まあ凄い。女性キャストでは誰よりも飛び抜けていた。
巧みに計算し尽くされたカメラワーク、半地下や邸宅の美術、編集から音楽に至るまで、全ての映画技術が超一級!
それらを素晴らしく纏めたポン・ジュノの手腕が、もう一度言うが、スゲェ…!
本作で何よりも響いたのは、やはり格差社会だろう。
劇中である人物が自身の現状を訴える。
ここで暮らし、ここで生まれた気がする。
最下層の者は、それが運命(さだめ)なのか? 抜け出す事、這い上がる事は出来ないのか…?
終盤の展開に触れるが、町が豪雨に見舞われる。半地下のキム家は水没。
それなのに、パク家は翌日呑気にガーデニング・パーティー。
この自分たちの裕福さや幸せしか考えていないコイツらに、心底ムカついた。
そして起こった凄惨な惨劇、ギテクのある行動…。
正当化は出来ない。決して犯してはならない事だ。
が、あれは、底辺や最下層で生きる人たちに何の関心も示さず、見て見ぬふりをしり、見下す、偏見と高慢に満ちたエリート様たちへの、届かぬ声と不満と怒りの代弁。
半地下であっても、さらにその下であっても、我々は生きている!
見てたら何となく、オスカー作品賞は難しいかもしれない気がしてきた。
何故なら、オスカー会員はエリートたち。
韓国の…いや、世界中共通の格差の姿が身に響くだろうか?
でも、間違いなく目に物を言わせてやった。
今年の作品ノミネートを全て見た訳ではないが、本作のインパクトを越えるものは無いと思う。
それは今年国内公開作の中でもそうかもしれない。
評判違わぬ…いや、軽く越えてきた。
とにかく、面白かった!良かった!暫くは頭から離れないだろう。
その“寄生”だけじゃない。
ラストの思わぬ感動…。
計画よりも無計画と父は言ったが、ある計画。ここから抜け出し、這い上がり、ある場所で、ある人を迎え受ける。
だけど、それにはまだ程遠い。
が、いずれ、きっと…。
現実的な苦味も忘れず、半地下に差し込んだ希望の光に、私の心は堪らなく満たされた。
近大さん、初めまして。レビュー拝見して、韓国映画、もっと見ようと思いました。2~3本しか見てないのですが、どれも役者さん上手いな、と思いました。(「パラサイト」以外では「金子文子」とか「男と女」)
私も映像美、、、音圧というのではないあぁ、画面から溢れ出るイマジネーションを刺激する映像詩?にやられました!
あまりそこに触れているレビューの無いのが、逆に不思議です。
韓国映画やりましたねー。
皆さんに便乗するみたいで申し訳ないのですが、こちらでお祝いを述べさせていただきます。
言葉や文化を超えての受賞、ということは、普遍的なテーマをしっかりと捉えていることの表れですね。
この選考を称賛する人、批判的な人。どちらにしても、アカデミー賞の権威を認めるからこそな訳で、その点でも色々なことが浮き彫りになる画期的なことだと思いました。
作品賞には、僕もびっくりしました。
映画には、国境も人種も関係がないことを全世界に知らしめたことで、アカデミー賞が真の意味で世界的な権威になったと思います。
アカデミー賞楽しかったです♪
おめでとーーーーーパラサイト!
まさか作品賞とるとは思わなかったのですが、歴史・・・動きましたね。
今頃、飲み始めてるのかな?監督。
ハードロッカー、その昔だとプラトーン。ゴールデングローブ撮ってるんで最有力っちゃ最有力なんですけどね。このラインナップでそのまま通るか?三年連続も?と。キネマの件ありがとさんです✨
韓国映画、実は、特に理由などないまま、ほとんど初心者だったのですが、近大さんのレビュー拝見してたら、今まで勿体なかったな、と反省してます。でも、その分レンタルの楽しみが何倍にもなりました。ありがとうございます。
ドラマ寄りじゃない戦争モノって取れた時ないんですよね〜ダンケルクの時も。WOWWOW特番観てますが町山さんは俳優ではマリッジ・ストーリーの2人を強く推してましたね。処でキネ旬ベスト10って本以外で観れるんですかね?
近大さん、毎度どうもです!
オスカーはこの作品も含め混戦状態ですよね~
『1917』、『ジョーカー』、『ワンハリ』で票が分かれると、可能性はあるように思うし、もしかしたら監督賞あたりをとるかもしれないですが、アジア初の快挙を成し遂げてもらいたいと思います。