「映像と肉体」パラサイト 半地下の家族 Raspberryさんの映画レビュー(感想・評価)
映像と肉体
私には夫と娘と息子がいる。一人は勉強が得意で、一人は美大生だ。夫は車の運転ができるし、私は家事ができる。まるで我が家だ!と思った。
私だけじゃない。貧しくても裕福でも、誰が観ても自分の暮らしぶりを重ね合わせ、否が応でも色んな感情が沸き立ち、思考が揺すぶられる。
何しろ映像が力強いのだ。俳優陣の圧倒的な演技力は言うに及ばず。役者の肉体が放つオーラが完全にキャラと融合し、主要メンバーから脇役に至るまで、一人ひとり全員が生きていた。有機的な人間とガチンコで対峙する意気地。ポンジュノ監督の真骨頂か。
自分たちに染み付いた匂いに気が付かない貧しい者たちと、急に集まったパーティで自然に振る舞う金持ちたち。この差異は一体何か。答えは、地球上のどこの一点に生まれ落ちたかというただの「偶然」だ。もはや計画は意味がない。
下水道を完備した都市。金持ちは糞尿と悪臭を生活の眼前から消し去って、下水道に流し、あとは済まし顔でいる。現実からは見えにくいが、確実にどこかでつながっている下流のことなど想像すらしない。
そんな片割れの文明、片肺飛行の文明に、いつしか反撃を加えることはできるのか。
お姉ちゃんが汚水が溢れる便器の蓋に座って一服するところが、クソかっこいい。
コメントする