劇場公開日 2020年1月10日

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「オメラスのような構造」パラサイト 半地下の家族 さうすぽー。さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5オメラスのような構造

2020年1月25日
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―オメラス―
この映画を観て、それを思い浮かべました。

オメラスとは、「オメラスから歩み去る人々」という物語に出てくる街であり、豊かで楽しい、平和なユートピアと呼ばれていた。
しかし、その街の地下には一人の子供が鎖で繋がれた状態で放置されている。
すなわち、その街は縛りつけられた子供が犠牲から成り立っている街。
…しかし、街の人々はそれを知らない、目もくれない。

この映画における富裕層側の登場人物は、そんなオメラスのように下層に暮らす人々(すなわち貧困層)に目もくれずに生きているように感じました。

下層の人々を知ろうともしない。
気づきもしない。
関心も持たない。
故にあの家族には気付かぬうちに「寄生虫(つまりはパラサイト)」が入り込んでしまう…

さて前置きによる考察が長くなりましたが、心から素晴らしいと言える映画を観てきました!

フォードvsフェラーリに続いてアカデミー賞作品になりましたが、これは自信をもって傑作と言えます!
さすが、カンヌ映画祭でパルムドール賞といったところです。
恐らくポン・ジュノ作品としては「殺人の追憶」以来の素晴らしい作品と言えるでしょう。

半地下で暮らす失業中の家族は、家族全員に仕事を与えるために富裕層の家族に"寄生虫"のように付け入って働く話。

ソン・ガンホ演じる父の息子が最初、娘の家庭教師として付け入るのですが、この息子がキレ者!
話が物凄く達者で、どんどん自分の家族を雇わせる力はなかなかのものです。
家庭教師に入った時からそれを感じることが出来て、「こいつはプロの詐欺師になれる」と感じました。

そこからはもう話が二歩、三歩先を読むかのように伏線を敷かれて予想出来ない展開をさせる脚本は本当に素晴らしいです!

また、この映画は貧困層の家族を扱った作品なので一見地味に思われがちですが、「万引き家族」や「ジョーカー」よりも比較的娯楽要素が強いです。

と言うのも、意外とコメディ色が強いです。
自分の家族を雇わせるためにいくつも策を仕掛けたり、半地下での場面も結構笑えます。
また、ハラハラ感も強いです。
良い意味で常に予想の斜めいく展開があるので、そういったハラハラ感も堪能出来ました。

ただ常に予想出来ない展開であったのですが、終盤の展開に関してはある程度予想が出来てしまいました。
宣伝に「ネタバレ注意!」と書かれてたので衝撃的な感じになるのかと思ったら、さほど衝撃的でも無かったです。
なので、正直少し肩透かしを食らいました。

その他にも突っ込みどころはあると言えばあるのですが、完成度は非常に高いです。
撮影もカメラワークがハリウッド映画のように拘りがされていて、半地下の汚くさせてる美術も本当に素晴らしいです。
また、ソン・ガンホも名俳優だけあって今回も冴えない汚ならしい感じの役を見事に熱演していました。
彼はまさに、韓国の役所広司です!

今年早くもベスト級の映画が来ました!
本当に観れて良かったです。
この映画はあまり日本では儲かってないので、観てない方は是非観に行ってほしいです!

さうすぽー。