「対比」パラサイト 半地下の家族 Rubysparksさんの映画レビュー(感想・評価)
対比
なんだろう、韓国映画に出てくる、貧しいながらも仲良く、どつきあいながらも楽しく暮らしてる家族。今回もあの半地下の家族はそうだった。いつも四人で賑やかに食卓を囲んでいて、粗野だけど、ユーモアがあり、結束力があり、生命力を感じる。窮地に落ち入った時も、自分達さえ良ければいいのではなくあの地下の存在のことも気にかけて行動していた。最後は悲劇で終わってしまうけれど。一方あのお金持ちの家族は、あの広い家で、バラバラに過ごしている。でも愛がないわけじゃない。両親は子どもたちを愛していて、家族写真を撮ったり、豪勢なお誕生日パーティーやキャンプをしたり、子どものために家庭教師を雇うなど金に糸目はつけない。家族を愛する気持ちに嘘はないのだ。夫婦仲も悪くない。だけど、家族全員がお互い本当のことを言ってなかったり、表面的な感じは否めない。四人がそろって食卓を囲むシーン、夫婦が一緒に食事するシーンは一度も出てこなかった。贅沢で洗練されているけれどあまり体温が感じられない生活。そして大人のエゴも感じる。仮面をつけて生きているような。自分たちの家族は愛してるけれどそれ以外の存在には興味がないという態度。子どもたちはそれに敏感に感じとって、大人を欺く振る舞いをする。その対比を描きながら、時に笑わせ、手に汗握らせる展開に感情を揺さぶられながら観ていた。あのお金持ち家族がその富をもう少し社会に還元していたら、彼らの運命は違っていたかもしれない、とも思う。あんな生活は実はサステナブルではないのだ。貧しきものがどんどん下流に流されていくさまは見ていて切ない。そしてその解決策が、お金を稼ぐということに行き着くのも虚しい。前半はあんなにも笑わせ最後そんな重く虚しい気持ちにさせるポンジュノ監督の手腕に脱帽である。