「ついにここまで来たか…」パラサイト 半地下の家族 Movieアパートさんの映画レビュー(感想・評価)
ついにここまで来たか…
日本での公開前から話題沸騰のポンジュノ最新作。
面白いのだろうとは思っていたがここまでとは・・・
年明け早々年間ベスト級の脅威的傑作をみてしまった。
本作の面白さは無数に切り口があると思うが、個人的に一番素晴らしいと思うのは、全体を通しての様々なジャンルをエンターテイメント的に横断しながらメッセージ性を強く見る側に投げかけてくる点。
冒頭から中盤までの展開は言ってみれば オーシャンズシリーズとでもいうようなジャンルで、富裕層の家庭に巧妙に侵食していく家族の様は凄腕知能犯達の華麗な犯行と言った味わいで見ていてとにかく爽快。編集のリズムが絶妙で特に 桃のモンタージュシーン(ツイッターで回って来た解説を見たからというのもあるが)の完成度が凄まじく 今俺は面白い映画を見ているぞー!という幸福感で満たされる。主な舞台となる家の構造をこの前半部分で印象的にきちんと切り取っていることも後々の展開を見据えて非常に良く効いていると思う。
この前半のトーンだけでひたすら爽快に駆け抜けても十分傑作だったと思うが本作がとてつもない領域に行くのは中盤元家政婦が雨の中訪ねてくるシーン以降。
ここから途端に映画のトーンがぐっと変わり、個人的には ホラー とも言っていい領域に突入して行く。
まず、解像度の荒いインターホンのカメラ越しに映る元家政婦の表情の切り取り方からしてすでに不気味。何かが起ころうとしているという気配を表情一発で見せ切ってしまうのが本当にすごい。
さらにこれ以降の一連の流れが終わるまでに間、地下に続く階段の撮り方が完全に 異世界への入り口 としか思えない撮り方で、暗闇の中へ続いて行く階段がただただ不気味。
母親が地下に行った元家政婦の様子を見に階段を降りて行くだけでとてつもない緊張感だった。
さらにはその地下に降りるとそこには・・・
というくだり!!
お前なんだその姿勢は!!
という点がおかしくもあるのだが、それと同時にやはり心底恐ろしい瞬間でもある。
個人的には今作のベストシーン。
この とてつもない姿勢になった人間 の姿を通して自体がとてつもない方向に向かっていることを示すというのは、個人的にはものすごく エクソシストっぽい!! と思う。
やはりこの段階でこの映画は完全にホラーなのだ。
そこから急激に この映画の正体 ともいうべき全体像が急速に浮かび始めるのだが、そのテーマを描き出す手法の一つ一つが全て途方もなくエンターテインメント!
何かテーマに触れるような描写は必ず映画のエンターテインメント性とセットになっており、
例えば元家政婦を蹴り飛ばすシーンは階段の下 つまり地下へと転がり落ちる貧困層という象徴的な構図を示すと同時にやはり完全無欠のアクションシーンとなっているし(布施の劇場が爆笑に包まれていた)、机の下への潜伏シーンは、潜伏しているが故に浮き彫りになる富裕層と貧困層の埋めがたい溝を描くとともに、脱出シークエンスのスリリングさにも直結している。
脱出以降、すべてのしわ寄せが流れ込むかのように雨が地下へ地下と流れ込んで行く様は非常に印象的。
彼らは一つも正しくないが、それでもこの世界に確実にある問題を明確に見る側に突きつけてくる。
しかも超エンターテインメントな手法で。
まさかオスカー作品賞まで取るとは思わなかったが、これ以上映画に何を望むことがあろうか。
文句なく超傑作