罪の声のレビュー・感想・評価
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宇野祥平の枯れた肉体
昭和の事件を題材にしているが、「今なぜ作るのか」を考え抜いて作られている。グリコ森永事件をモデルにした作品だが、あの事件の脅迫テープに使われた声の子供も、平成と令和の時代を生きている。あの事件が残した爪痕は、その子ども当事者だけに限らず社会に残っており、現代の問題にもつながっているのだということが説得力を持って描かれていた。学生運動の挫折が様々な混乱を社会にもたらし、そのことがいまだに尾を引いているのだとしたら、昭和をきちんと清算しなければ日本社会はなかなか前に進めないということなんだろう。実際、平成の30年間は日本は足踏みを続けてしまったわけなので。
ミステリーを主体とした人間ドラマとしてもよくできている。脚本がとても整理されていて、登場人物が多いけれど混乱することがなかった。TBSドラマ部門のエース格と言える土井裕泰監督も相変わらず確かな演出力を見せてくれた。
小栗旬はじめ役者陣も大変良かったが、中でも宇野祥平が際立っていた。あの枯れた肉体の説得力が本作の質を一つ上に持ち上げたと言っていい。
「キツネ目の男」が動く姿に感動
「キツネ目の男」で有名な実在の事件をモチーフに作った作品。経済的な背景を与えた物語の展開が面白い。
2000年に時効を迎えた、食品会社をターゲットにした、あの脅迫事件。「キツネ目の男」という犯人像が独り歩きして、私の記憶も時効と共に、ほぼ更新されずにいました。
ただ、よくよく考えると、犯人は一度も現金の引き渡し場所に現れなかったりと、よく分からない事件でもあります。
そんな実在の事件をモチーフに、実は「半沢直樹」的な「経済的な動きが背後にあった」という設定をしているのが本作です。
正直、「なるほどなぁ」と感心しました。確かにそういう動きをすれば経済的な利益も莫大に得ることが可能になります。
そうしてバックボーンのリアリティを与えながら、「脅迫の際に使われた子供の声」に焦点を当てている点も面白い。原作本の発行元の講談社が製作幹事会社の1つになっていることから、原作への自信がうかがえます。
マイナス要素を強いて挙げると、少し間延びして長く感じてしまった面がありました。これは、登場人物が多かったからなのかもしれません。
事件の構想が大きい分、いろんな人が出てきて、しかも「現在」と「過去」が交差もするので、少し頭が疲れる面が出てくるのです。
いや、「頭が疲れる」というより「興味が薄れる」という方が正確かもしれません。
小栗旬や星野源といった主要キャストには感情移入もしやすく良いのですが、だんだん主要キャストから離れたディテールにいくと、少し時間が長く感じる面はあるかと思います。
ただ、良く解釈すれば「丁寧に追っている作品」とも言えるでしょう。
「未解決事件×経済的な事象」の化学反応が存分に活かされた名作だと思います。
どこまで寄り添えるのか 小栗旬&星野源の眼差しに何を感じるか…
本サイトでの「罪の声」インタビュー、新作映画評論でも記述させていただいているが、実際にこの日本で起こり、一定以上の年齢層の人々にとって忘れることができない衝撃の未解決事件をモチーフにした作品で、原作の魅力を上回るほどの社会派作品に仕上がっている。
小栗と星野のひたむきな眼差し、役を生き切る姿勢素が晴らしい。
と同時に、フィクションこそ含まれてはいるが、近年ここまで実際に起こった事件に対して真正面からぶつかっていった作品もなかったのではないだろうか。製作サイドの気苦労は大変なものだったと思うが、その思いを汲み、覚悟をもって撮影に入った俳優部の覚悟にも喝采を送りたい。
公開前なのでネタバレ回避すべく詳述は避けるが、中盤から後半にかけてのセリフに胸を打たれる。あの事件の脅迫テープに自らの声を使われ、意図せず事件に巻き込まれることになってしまった子どもたちが、もしも今作を映画館で見たら……、その言葉に救われるかもしれない。
久しぶりに見て良かったと思える映画でした
あの時代の過激派や左翼・他諸々のあまりに視野が狭く自己中心的で身勝手な思想に振り回された子供達の人生にフォーカスしたありそうでなかった物語を描いていてとても素晴らしい映画でした。
演者達も総じて良い演技をしていましたし、小栗旬が出ている映画の中では最も適材適所なのではないかと思えるくらいにハマっていました。
色んな人が書いていますが、この映画の中で最も印象的なセリフはある登場人物に対する「化石」という言葉です。
誰しも多かれ少なかれ自分の人生に意味をもたせる為に自分が夢中になった頃の行動を省みず化石のように閉じ込めてしまうものだと思いますが、団塊の世代の中でも思想に取り憑かれ自己満足の為に他者を犠牲にしてきた人達に関しては自身の命が尽きる前にその罪に向き合うべきだと改めて感じました。
彼らは日本に対して何らプラスになる遺産を残さなかったのですから・・・。
と言っても映画でも語られていたように彼らが向き合う事などないのだと分かってはいるのですが、そう思わずにはいられない映画でした。
親の罪
愚かな親の罪でしかない。
父親の身勝手さから、全てを失う家族と、我が子より義理兄への密かな愛情と警察への報復を選んだ母親。
ラストシーンの小栗旬さんと星野源さんのやりとりが救いです
序盤はあまりのつまらなさに途中退場しようかと思った
映画で初めて寝そうになった。痛みで目を覚そうと、手足をつねりながら観てた。
俺はまだ寝なかっただけマシだ。
「ぐがぁ〜。ぐがぁ〜」といびきかいてたオッさん居たしね。周りがクスクス笑うもんだから、貰い笑いしちゃったじゃない。
つまらなかった理由は、「登場人物が多く、人間関係が複雑」だったから。とにかく登場人物が多い、それだけならまだしも過去の話も入り乱れて頭がパンクした。それに加え、序盤は物語の起伏が少なく、観ていてまぶたを閉じそうになった。
序盤の早い段階で回想シーン出しといた方が良かったのでは。よほど頭フル回転しないと、関係性を把握するのは難しいだろう。
しかし、中盤になって面白くなってきた。登場人物たちの過去が明らかになり、関係性が分かってきたからだ。
特に、声を使われた曽根と聡一郎の生活が正反対なのが印象的だった。曽根は家族も居て幸せに暮らしているけれど、一方の聡一郎はドン底生活で自殺寸前。同じ声の子でも天と地の差があり驚愕。阿久津と曽根は聡一郎に同情してたけど、俺はそうは思わなかった。聡一郎は過去のトラウマをせいに逃げてる気がしたからだ。
「過去の〇〇のせいで俺はこうなった」などとすぐ過去のせいにする人は好きじゃない。だって、自分の考えかた次第でどうにでも、人生良い方に転がると思っているから。俺は人生に絶望したとき、過去を理由にウジウジしない生き方をしたい。
序盤はあまりのつまらなさに途中退場しようかと思った。だが、金が無駄になるぞ、と自分に言い聞かせ意地でも居座ったのが正解。中盤で物語の展開が面白くなってきてからは、眠くなることはなく安心して鑑賞することが出来た。
ちなみに、いびきかいて寝てたオッさんは、結局目覚めることなくエンドロール迎えて。勿体ない、劇場に笑いを起こしてくれてありがとう。
聡一郎の幸せを願わずにいられない
聡一郎が初めて出てくるシーン、真っ暗な部屋に座ってロープを見つめる生気を失くした聡一郎が映し出された時は、一瞬ギョッとしました。
しかしそこだけでもう、聡一郎のこれまでの人生が悲惨で壮絶だったのが分かってしまうくらいの宇野祥平さんの廃人のような佇まいに圧倒されました。
曽根と阿久津に会って話をした時も悲壮感と絶望感しかなかった聡一郎が、会見前に曽根が作ってくれたスーツを着た自分を鏡で見て、控えめな笑顔で「めっちゃかっこええですね」と言うところが好きです。
もう一つ印象的だったのは、火事の時お母さんが「早く行き!(私は)大丈夫やから、あんたは逃げぇ!」と泣きながら聡一郎を送り出す所。
老人ホームでお母さんと再開し、聡一郎とお母さんが抱き合う姿に涙涙でした。
星野源さんも小栗旬さんも素晴らしかったけど、とにかく宇野さんが凄すぎて。
宇野さんじゃなくて宇野さんは聡一郎そのものな気がしてしまう程です。
終始ずっと引き込まれっぱなし、圧巻。
ものすごく重く悲しく胸が苦しくなるけど、最後はお母さんと聡一郎の未来に光が差す結末で良かったです。
これが真相?!
映画公開時、高速バス出発までの時間潰しで観た。この映画がちょうどスキマを埋めてくれる時間帯だった。当然あらすじなど一切の情報はなく、何となくだった。そして上映が始まって程なくして気づいた。これはあの「グリコ森永事件」のことだと。あの頃の記憶がきのうのことのように蘇った。
1984年当時、勤めていた工場のお昼休み。社員食堂の片隅にグリコの社員さんたちがお菓子の販売に来ていた。あの脅迫事件以降、お菓子を店頭に置けなくなったからだ。工場直送の安全なお菓子を袋詰めにしたセット販売。おカネのない若者だったが、時々買わせてもらった。頭を深々と下げ、大きな声をあげる社員さんたち…。嫌でも必死さが伝わってきた。
あの時、裏側ではこの映画のようなことが起きていたのかも知れない。そう思うと感情移入も没入感も半端なものではなかった。
ダブル主演の小栗旬さんも星野源さんもよかった。だが、フィクションでありながらノンフィクションのような重厚な展開を支えたのは、脇を固める強力な俳優陣だろう。
特に宇野祥平さんの演技はスゴかった。いや、凄まじかったと言うべきか。”35年間の地を這うような生活”が滲み出るような演技だったと思う。
そしてエンドロールで流れる主題歌、Uruさんが歌う「振り子」もまた素晴らしい楽曲だ。人生を「振り子」に例え、今は悪い方に振られていてもいつか必ずいい方へと振られる時が来る…そんな希望を歌っている。まさにこの映画にピッタリだと思った。
久しぶりに邦画もいいな、と思わせてくれる映画に出会った。
グリ●の事件を株視点から考察してみました
意外と
先日観ました。
中年以上の方なら誰もが知っているグリコ・森永事件。
作り物ではありますがそれをモチーフにした映画。
グリコなどの固有名詞は変わっていますが、最初の方から事件のあらすじ通りの展開が待っています。
誘拐事件・放火事件・脅迫状・子供のテープ・各地での現金受け渡し・本部長の自殺により終結宣言。
前半は企業名以外の出来事は事件そのままです。
後半に入ると小栗旬演じる新聞記者が激しく動き回りますが、それによって明らかになる背景がむごいです。
特に主人公同様に声を使われた幼い男女のその後の生きざまには涙があふれ出そうになりました。
もちろん作り話なのは承知していましたがひょっとしたらと感じずにはいられません。
学生運動を絡め当時としてはありそうと感じさせる脚本には脱帽しましたが、欧州で生きながらえている主犯格の人物には全く同情できません。
少なからず後味が悪かった印象がぬぐえなかったことが残念ですが、それを加味しても☆5つです。
いい映画でした。
未解決事件を、よくまとめたクライムミステリー
☆☆☆☆ 風見しんご→わらべ 原作読了済み。 これは原作に於ける登...
☆☆☆☆
風見しんご→わらべ
原作読了済み。
これは原作に於ける登場人物の多さ。並びに、史実を基にした時間や場所等、多少の縛りが有るストーリー展開。
それらの情報量のごちゃごちゃ感を、ここまでスンナリと分かりやすい内容にまとめ。尚且つ、エンターテイメントに仕立て上げた脚色が素晴らしいですね。
でも、内容が内容だけに、やむを得ないのでしょうが。大量の台詞やナレーションで、説明過多になってしまっているのは、本当に惜しい。
比べるモノではないのですが。最近では『朝が来る』が、極めて作家主義に徹したミニシアター系の作品と言うならば。この本編こそ、本質的にはミニシアター系の地味な内容であるにも関わらず。「よくぞここまでエンターテイメントに振り切ったなあ〜!」…と、感心するばかりでした。
原作だと、事件の全面解明は。ほとんどが阿久津と、もう1人のパートナーによって読者側に明らかになって行く。
曽根はあくまでも、自分の家族周辺の情報しか(確か)得られない。
しかしながら、映画本編は。星野・小栗によるW主演作品に他ならない。
その為に、映画の上映時間が丁度半分辺り。1時間と少しを経過した時に、2人のバディムービーとして仕立て上げる脚色に至り。「いや〜!そうくるか〜!」…と、思いましたね。
何しろ、原作だと。「し乃」の板長が、阿久津に対して(取材をしたいなら…と)金銭的な要求をするのですが。それを要求されてはいないが、別の人物へと振り分けた事で。その後の阿久津と曽根のバディ感を増す効果を、全面に押し出しており。一見すると、何気ない場面ながらも、思わず「やられた〜!」…と。
原作・映画本編共々。昭和を代表する大事件を基に構築されているだけに。ある程度の縛りは、どうしても発生してしまっています。
原作を読むと分かるのですが、(原作だと)事件の発生から31年が経過。
それが、映像化された本編だと、35年あまりもの長い年月を経過していながら。数多くの登場人物達は、当時の記憶がハッキリとしており。誰が、誰に向かって何と言ったのか…等。
その詳細で事細かな辺りは。原作を読みながら、ところどころで「おいおい!幾ら何でも30年以上も経っているだろうに!」…と、思ってしまったものです。
映画本編では、意外とその辺りの疑問点を感じさせない様としてでしょうか?ドンドンとスピーディーに、先へ先へと進んでいた気はします。
まあ、それらの疑問に対しては。「当事者なんだから当たり前だろ!」…って言われたのなら、やむなしでは有りますが💦
とは言え、主人公の1人である曽根本人だけが。何故だか(事件に関する)記憶が無かったり。
(これも、当事は6歳なんだから仕方ないだろ…と言われそう)
何よりも、歴史に残る大事件を基にしているフィクションとは言え。その事件自体が30年以上も、日本の警察が威信を賭けて力を入れながら、犯人へはたどり着けなかった程の大事件。
それなのに、原作・映画共に。僅かな人数、時間の取材で、一気に真相へとたどり着けてしまう、、、辺りは。「幾ら何でも!」と思う事しきりで(´・_・`)
(だから!元々犯人側に近い人間なんだから当たり前だろ!…って、これも言われそうですが、、、)
まあ、何だかんだと貶しつつも、ここまでエンタメ性に優れ。年齢や性別を抜きにして、誰でもが楽しめる作品へと昇華させた脚色には、素直に脱帽するしか有りません。
ラスト近く、2人の 〝 男の子 〟が。母親の愛情を受けて、《心の重荷》から解放された時。今現在の我が身と母親との関係性を鑑みて、思わず号泣させられてしまいました。
だからと言って、点数を爆上げする様な事はしませんが(´・ω・)
出演者の中では、(あくまでも個人的にですが)小栗旬の俳優としての可能性の高さには、ちょっと驚きました。
これまでは、ミニシアター系のこじんまりとした低予算な作品で映える人…との印象だったのですが。
この本編を観て、今後はエンタメ性の超大作作品でも1枚看板として、しっかりと作品を支えていける実力の有る俳優さんなのだ…と、認識されて貰いました。
勿論、バディとなる星野源も良かった。
梶芽衣子演じる母親は、元過激派の女性党員。
長い年月に渡って、胸の中では社会に対して反旗を翻していた…って設定には。
「おいおい!それ狡いって〜!」
…と、思わず叫びたい気分でしたわ(^_^;)
ネットでは、宇野翔平の演技が絶賛されている様ですが。
彼はどの作品でも素晴らしいので。「何を今更!」…感が自分には少し、、、
2020年11月5日 TOHOシネマズ日比谷/スクリーン1
小説は事実より奇なり
真犯人にたどり着く…の?
犠牲になるのは子供たち
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