「省略し過ぎて主題が伝わっていない」るろうに剣心 最終章 The Final ゆずさんの映画レビュー(感想・評価)
省略し過ぎて主題が伝わっていない
元々は原作ファンですが、実写化大成功の本シリーズも大好きで、本作をとても楽しみにしていました。
ただ、以下4点が気になりました。
①巴との過去をあまりにも省略している
映画の時間の関係上しょうがないとはいえ、省略し過ぎて剣心がどれほど巴を大切に想い、斬殺してしまった過去に苦しむことになるのか、全く伝わりません。
あのシーンでわかるのは、ただ巴が騙すつもりで剣心に近づき、切られたということだけ。原作を読んでいない方には、惨殺は剣心の意志じゃないことすらはじめは理解できかねたんじゃないでしょうか。後半に若干補足があった気もしますが。
②薫が死ぬ(演出)シーンがない
まさかここは無くさないだろうと思いきや..やられました。
薫は死にません。このエピソードで、剣心は愛する人を二度も守れず、ドン底に落ちた後、生きていく意味を見出し、立ち上がるという作品自体の主題に関わる大切な大切なシーンを見事にカットしています。
そのせいで、これまでと同じように、「目の前の人を助ける」だけの剣心にとどまってしまいました。
③縁の心変わりが早すぎる
激闘と剣心の詫びの末、縁は反省しましたが、ここまで手の込んだ人誅をしておきながら、やけにあっさり解決していました。それだけで縁は引き下がると思えません。
時間の問題があるにしても、これといった工夫がなく私闘が収まったのに凄く違和感が残りました。
④誰が主人公なのか?
あくまで私が見たかったのは、過去との葛藤があり苦しみつつも、闘い、答えを見つけ出す剣心の姿でしたが、もはや主人公はひたすら過去にもがき苦しんでいた縁なのか?剣心の心情が脚本上ほとんど描かれていませんでした。
アクションは本当に迫力があり佐藤健さんはじめキャストの方々の演技や演出はとても良いのです。しかし、原作の大切なところを捉えてない為に、ただのアクション映画のようになってしまったのが、とてもとても残念です..。
大友監督は原作を理解してこの脚本を作ったのでしょうか..申し訳ないですがただただ疑問です。
ファンとしては批判したくないところですが(なので評価は3.5ですが)、本作においては、原作のほうが圧倒的に深く、面白いです。
The beginningは追憶編ということなので、それが出揃って初めて今回の作品が完成するのだと期待して、次作を待ちたいと思います。