「エンドロールを眺めながら言い知れぬ満足感」あのこは貴族 ともしさんの映画レビュー(感想・評価)
エンドロールを眺めながら言い知れぬ満足感
【上流階級の方々】
美しい所作、満たされた者だけが醸し出すゆとりに満ちた言動、それらがとても細やかに嫌味無く描かれていた。
特に主人公の麦さん、頭からつま先までハナコが染み渡っていて本当に素敵だった。
【エピソードがいちいちリアル】
男と女がお付き合いしていく上で必ず誰しも経験してきたリアルなエピソードが淡々と、でもギッシリ詰め込まれていて、もうとても贅沢。
原作もきっと面白いのでしょう。
【言葉での説明が要らない緻密なシーン】
この作品の凄いところは俳優のちょっとした目線や動きで、気持ちが完璧に表現されているところ。
説明がなくても状況や設定が分かる、というシーンが本当に多かった。
「今明らかにカッコイイって思ったね」
「あ、今彼女、彼が青木だってわかったね」
「お姉ちゃんのダンナさんにしては随分親しげだな、ああそうか、お姉ちゃんと歳が離れてるから子供の頃から接してるからこうなるか」
などなど。
【エンディングまでの展開】
「あの映画、観たの?」と聞くハナコ。
「あー観てない」と無邪気に答える青木。
「観てないと思った」トーンを変えず答えるハナコ。
ここで私は“あ、終わったな。トドメだな”と、ハナコの気持ちが手に取るように伝わってきた。
ひしひしと。
が、一緒に鑑賞してた夫は次のシーンで離婚した事を知り、え!と驚いていた。
“これが男と女の違いか”ととても興味深かったし、あんな短いシーンでガツンと突きつけてきたこのインパクトには参った。
ラストシーンでもしかしてこれから2人の本当の恋が始まるのかな…?と感じた瞬間にエンドロール。
思わず「ああ!」と感嘆の声が漏れてしまった。
そしてなんとも言えない幸福感でエンドロールを眺めた。最後まで観た。それこそが良い作品だった証。
