「怖いのは人間」ペット・セメタリー aMacleanさんの映画レビュー(感想・評価)
怖いのは人間
スティーブン・キング原作の本作品は、映画化2度目。前作は観ていないが、あまり評価が高くなかったようだ。本作は上々の出来で、なかなか面白かった。
米国のホラーというと、悪魔やゾンビなど、何か人間と違うものが襲ってくることが多いが、日本では怨霊や呪いなど人間の情念に根差すものが襲って来る方がメインだ。国の成り立ちが違うからだろう。日本人はオバケというと、だいたい死んだ人の霊としてのイメージが一致していて、元は過去の人物だったりして、民族に内包される。同質的なものから攻撃されるわけで、対立構造が不明瞭になる。方や他民族国家の米国では、例えば悪魔のようなイメージが強く、何か自分たちとは違う異質なものの印象が強い。何を考えているかわからない奴を、外部者として位置付けて敵とするわけで、対立構造が明確だ。
スティーブン・キングは米国のホラー作品の中でも、比較的人間の情念に根差した部分を描いていて、その辺りが日本でもファンが多いゆえんではなかろうか。人々の思いが、交錯するヒューマンドラマも良い作品が多い。「スタンドバイミー」はもとより、私も好きな「ショーシャンクの空に」も日本でファンが多いが、スティーブン・キングが原作というのも、意外と知らない人が多い。
さて、本作だが、そんな背景で見てみると面白いだろう。ホラーとしてのジリジリとした緊迫感も楽しみつつ、設定やストーリーの妙だ。愛する娘を失った父親が、すぐそばに復活させる場所があることを知っていたらどうする? そこに近付いてはいけないと幾つもの警告があっても、誘惑には逆らいがたい。邦画ホラーでは、この辺りの心情描写を丁寧におこない、観客の感情移入を高めるのだろうけど、洋画ではたいていあっさりしてる。その代わり、狂気を垣間見せたり、超常的な悪魔の攻撃などで絶望感を煽るわけだ。本作の構成も同様だが、おそらくキングが製作だったら、もう少し人物の狂気か、苦悶に時間を使って、描写は違ったろうが、監督・製作が欧米ホラーの出だと、欧米風王道に落ち着く。良いとか悪いとかはなく、好みと文化的背景の違いなので、それが楽しめるなら良いのでは無いですか。
その分、ラストの終わらせ方は、邦画では叩かれそうな感じですが、洋画ならでは。モヤモヤもあると思うけど、好きです。
といったところで、日本人監督がリメイクしたら面白そうな題材だと思うのでした。