「復刻号作ってんじゃねーよ」ひとよ KinAさんの映画レビュー(感想・評価)
復刻号作ってんじゃねーよ
子供は親に責任を押し付ける。
親は子供に希望を押し付ける。
私自身の子供としての在り方を考えさせられる、いや、考え直させられる映画だった。
自分の人生に納得がいかない時、何度親を責め立てただろう。
呪いのようにこびりつけばいいと思って放った言葉の鋭さ、その残酷さに全然気付いていなかった。
親も人間、兄弟も人間。
わかっちゃいても距離が近いと自分本位な言葉を投げつけがちで。
他人より繋がりが深い分、複雑で微妙だったりする。
でも自分も大事だし…と思ってしまうけど、バランスを見ないとね。
自分の人生にきっちり責任を持ち、自分の人生に魅力を感じながら生きていかないとね。
犯したことは正しかったか間違いだったか、何が正解で何が不正解か、そんなことじゃない。そんなの誰もわからない。
ただ、そのせいで上手く回らない物事が多いのも事実。
踏ん切りをつけること、一つ区切りをつけることが大事だな、と思った。
そのために爆発して燃え尽きてみることが一番だったのかも。
こはるは自分が正しかったとまっすぐ思っているわけじゃない。
度胸なんかじゃない。
あまり語られない彼女の15年間、そこにあった葛藤や苦しみなど容易に想像できる。
でも、「これで良かったと」思い聞かせないと、到底生きてはいけないから。
子供たちの人生を否定することになるから。
子供たちだって、あれで良かったなんて心底は思えないだろう。
母が父を殺したことで苦しんだ日々は本物。
こはるを恨まずにいられない気持ちだってある。
手に入った僅かな自由も本物。
どうしようもない。ぶつけずにいられるだろうか。
私もこはるののうのうとして見える態度には少し苛ついた。
ジレンマを抱えて悶え苦しんだ先に、曖昧でも何となく気持ちに落としどころが出来て良かった。
三兄弟が庭でタバコを吸うシーンが大好き。
最後の家族写真も大好き。バナナとタッパーは、さすがにね。
稲丸タクシーの社員一同がこれまた曲者抱え者。
堂下の盛り盛りな人物像には驚いた。クセが強いんじゃぁ。
しかし彼の心からの叫びには頬を引っ叩かれたような衝撃を受けた。
あ、親ってこういう気持ちなんだと少し分かった気がする。
色々と重なりすぎて現実味は無いけど、それがとても映画的、エンタメ的で面白かった。
胸にのしかかるこの物語を受け止めつつ、きちんと映画として味わい楽しんで良いんだと思える。
所々で入る謎ギャグも、過去と現在をすれ違わせた演出も好き。
歌川のマレットヘアが気になりすぎる。
家族の重み、苦しみ、悲しみ、慈しみ、愛しみ、全てぐちゃぐちゃに混ぜ込んで、エンターテインメントに昇華してくれる映画だった。
「何でもできる、何にでもなれる」という言葉が今現在の私の身に染みる。
三ヶ月後の私は何をしているんだろうか。
それにしても、こはるの「またやったかと思った〜」の一言には笑った。
お母さん、流石にブラックが過ぎるでしょう。