劇場公開日 2019年11月8日

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「白石和彌監督感動作品」ひとよ Dさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0白石和彌監督感動作品

Dさん
2019年11月8日
iPhoneアプリから投稿

「麻雀放浪記2020」「凪待ち」につづき
今年3作目 白石和彌監督作品です。
感動するのは予想していましたが、予想以上に
すごかったです。涙が乾いたらまた新しい涙が
出てきて大変でした。

タクシー会社を営む母・こはるがDV夫を殺した。
愛する三兄妹を守る為に。 15年後の再開を誓い、家を去った。
夫のDVシーンが過激に映っているので
目を覆いたくなる。
田中裕子さん演じるこはるが子どもたちに
つくった自由は子どもたちにとってどんな
自由だったのだろうか。
15年後。
母は約束通り家に帰ってきた。
子どもたちが15年間どんな仕打ちを受けて
きたのかも知らずに。
嬉しいはずなのに素直に喜べない三兄弟。
 佐藤健さん演じる雄二は母にも周りにも
冷たく思ったことは口にする。 母が殺人者。その事実にどんな苦しめられてきたか
も知らずに。母を許せない雄二。  鈴木亮平さん演じる大樹は妻も娘もいる。
妻には母は昔死んだと嘘をついてきた。しかし
母が帰ってきたことにより母は死んだのではなく
殺人を犯し刑務所にいたことを知る。
母が殺人者だったら結婚しなかったか?
娘を生まなかったか? 松岡茉優さん演じる園子は母が自分たちを守る為に父親を殺したことを一番わかっていた。
でも母親が殺人を犯したことにより美容師になる
という夢も諦めなければならなくなった。

母がつくってくれた自由。
父からの暴力からは自由になれたが
「殺人を犯した母親のこども」
として苦しみ続ける。
そんな苦しみを知らず15年後いきなり帰ってきた
母親を素直に迎えられるのか。
難しいだろう。
気持ちを押し殺し帰ってきた母と接する三兄弟。
家族だけど気持ちはバラバラ。擬似家族のような
状況。
そして押し殺してきた気持ちが爆発する。
こはるに気持ちをぶつけるシーンは痛かった。
母が犯した罪は消えない。
バラバラな家族は再生できるのか。

またこはるが営むタクシー会社の従業員たち。
従業員たちもそれぞれの事情を抱えていた。
昨日観た「閉鎖病棟」もそうだけど
本当に事情を抱えていない人なんていないんだな。
と思うくらい出てくる人みんな苦しい。 
加害者側の家族の気持ちを考えたことは
正直あまりない。でも当たり前だけど
加害者側の家族は被害者。加害者は
家族が被害者になることを知らないといけない。
じゃああの夜、母は父を殺さなければ
よかったのか。
答えは出ない。
重いテーマだけど2時間でこんな気持ちになれる
作品はそうない。

D