「子供はもう集まらない」ぼくらの7日間戦争 因果さんの映画レビュー(感想・評価)
子供はもう集まらない
いつの時代も大人は判ってくれない。自我を押し殺し矛盾に背を向けながら表向き円滑に社会生活を営む大人たちに子供たちが苛立ちを覚えるのは当たり前のことだ。
しかし異議申し立ての手段がきょうび全共闘時代の「立てこもり」スタイルというのはいかがなものか。原作や実写版が盛り上がった80年代であれば「大学をバリケード封鎖してたような世代が実制作のトップに立つ頃だもんな…」とまだ溜飲が下がるというものだが、21世紀にそれをやる意味や意義があるとは思えない。
しかも原作や実写とは異なり立てこもりの動機からしてそもそもが弱い。親の都合で引っ越すヒロインの誕生日を祝うため、ってマジで何だよ。キャンプ気分でそんなことするなよ。もはや子供という存在を舐めてるだろ。大人に失望した子供が復讐を企てるという筋立てであれば村上龍の『希望の国のエクソダス』を読んだほうがよほど有意義だ。
SNS、毒親、移民、LGBTといった現代的トピックを散りばめて脱臭を図ったところで根本的にアナクロニズムの感は拭いきれない。そのうえ上述のトピックの扱いも雑で、ヒロインが自身のセクシュアリティを暴露するくだりなんかは最悪だった。
彼女はセクマイを暴露したあとで「私のお父さんは実はハゲでーす」と笑いながら更なる暴露を続けるのだが、セクマイで苦しんでる人間が他人の恥部を勝手にアウティングするとかもっての他じゃないですかね…
実写版でヒロインを務めた宮沢りえを特別出演させるというのも杜撰な本筋を誤魔化すためのリップサービスにしか感じられなかった。
現代においてはもはや不平不満を持った個々人が結集すること自体が稀である。子供たちはもっと孤独な戦いを強いられている。子供vs大人という図式で物語を立ち上げようとするなら、まずはいかにして子供が集まるのか、という点をもっと丁寧に描き出していく必要がある。