「惜しい作品と今後に期待が残る監督。」ぼくらの7日間戦争 小太郎さんの映画レビュー(感想・評価)
惜しい作品と今後に期待が残る監督。
良い映画なんだが総じて惜しい。
どうにも惜しい。
伝えたい事もそんなに重くしたくない事もわかる。
だが、見る側には、ただ昭和の映画を軸に流行りの描き方の寄せ集めをしただけ、そういった印象が残るだけになってしまう。
令和時代に昭和の冒険欲やアナログの良さのテイストを軽く伝えたい作者の意図も垣間見えるが、何せ心理描写や途中描写で伝え切れてない。
意欲はありちゃんとした作品を作ろうという意識も感じ取れる、それに劇中でも意欲を大事にしてほしいと伝えていて方向性も一貫し最後までちゃんとまとめ上げている、だが結果的には描きたい事を詰めてまとめ切るには納期が足りなかったんじゃないかと思えてしまう程に整合性が取れておらず説得力が薄い場面がちらほら全体に散見出来る。
2時間半の尺なら、納期に余裕があったのなら、監督が心理描写の深いもしくは押さえるとこでちゃんと押さえる映画を多く見てその手法をも理解していたならとても素晴らしい映画になったと思う。
監督の経歴を見るに、方向性のだいぶ違う作品群で歴も浅い、逆に言えばその割に過去作をただ模倣するだけでなく、新しいテイストを入れながら現代風にまとめ上げようとしたその意欲は十分に評価出来得るものだと思う。
だが、全体的に昭和の風味と令和の風味が上手くまとめ切れてない、時代が変わっても同じ日本であり、立てこもりなどの社会感覚は変わってしまっても、人間性というのは普遍的なもので親と子などの連続性の感覚は変わらないはずだ。
更に特殊な事を柱にするならそれなりの理由や説得力が必要になる、
そういうラインを深く描けば融合はスムーズに出来るはずなのに、何せそこが浅い、主人公の親が出てこないのは違うように思う、ヒロインの親子間の問題も昭和色が強いように思うがそれを現代に馴染ませ切れてないように見える。
更に、子供の軽率さ無責任さを出すなら、現代風のSNS系の部分ではなく立てこもったり料理作ったりの野性味ある所で出すのが自然に思う。
主人公の特殊性ある知識でも現実にはそうそう上手くは行かないはずだ。
そこを上手く使えばその試行錯誤に映画としての深みが、思春期や冒険の現実感が重過ぎないでしっかり出せたと思う。
一貫して意欲、その姿勢、大切さを伝えたいのは分かる、それは確かに現れてるが、リサーチが甘い、理解が甘い、製作者側自体のその甘さが現れているからこそ意欲を説得力を持って伝え切れていない、描き切れてない、新しい要素を入れても、構成部分を漠然とかいつまんでただ結果を微妙に繋ぎ合わせた見栄えの良い張りぼてになっている。
意欲と見た目の結果重視で整合性が足りると思ってるのかもしれないが、意欲は過程が無ければ説得力がちゃんと生まれないし、何より元々の必要性も大切だ。構成の歪みや甘さは見る側の違和感に直結する。
ゆえに要所に補強などして工夫するのが最善だったと思う。
良い作品、良い監督に思えるがとても惜しい、それに尽きる。