ホテル・ムンバイのレビュー・感想・評価
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リアルタイムで起きているテロの現実
2008年にインドで起きたテロをもとに作られた作品。
12年前の出来事なのに9.11ほどその当時はリアルに感じていなかったのは、
起きた場所がインドだったということが原因なのか。
現実には、このテロも9.11の延長線上にあるように思う。
テロリストであるイスラム原理主義の若者たちも貧困がゆえにテロリストとして生きるしか道がなく、ものすごく高い志を持ってテロを行なっているわけではない。
黒幕的にいるリーダーは、彼らを洗脳して、捨て駒のように動かしているだけなのだ。
意味のない殺戮の中で、命をかけて自分たちのお客様を守ろうとしたホテルマンの行動は、
人としての崇高な志を感じる。
同様にこのテロを映画化した、ジェノサイドホテルも違った視点でこの事実を伝えているので、あわせて観るとより理解が深まるかも。
祈りから始まった事…
正義の反対は正義。世界の分断に立ち向かう強さ
インドが熱い。
これぞインド映画の真骨頂か。勢いのあるインド映画をこれまで観れていなかったが、伏線が分かりやすくテーマもしっかりとしていて正統派な映画と感じた。
文明が開花してきていると同時に、伝統的でまだ発展途上な部分も残っているので、その二面性が面白い。その映像を見ているとディープな世界にまた触れたく旅行がしたくなる。
どストレートに、格差社会・人種差別・宗教戦争と、世の中を分断するテーマが詰め込まれていた。現実の社会と造られた虚構の豊かな社会の狭間でもがきながらも、強く生きていく人たちが描かれている。
結局お金が諸悪の根源。いつからこんな世の中になってしまったか。生きる前にはみな平等であるはずなのに。
人を助けるために神に背いてターバンを取るシーンが象徴的だった。宗教は人を生きる悩みから救うけど、往々にして排他的によそ者を受け入れられず過激派は暴力行為にまで至る。
でも、テロリストも怖いし、歌うし、家族がいる。そのリアルは忘れてはならない。正義の反対は正義なんだ。
この映画を通して改めて自爆テロの虚しさを痛感する。事実に基づいたストーリーで、有事でも本職を全うしたホテルマンたちの勇敢さに賛辞を送りたい。
憎しみの対立の果て
2001年9月のアメリカ同時テロなら、何が起きたか世界中の人が知っているのに、2008年11月のインド・ムンバイの同時テロのことを、私はすっかり忘れていました。
同時に10カ所がイスラム系のテロリスト集団に襲われ、数百人の死者を出した凶悪犯罪のことを、映画を観てから調べて、これは大変な事件だったのだなと感じています。
この映画は、顧客を守ろうと身を張って頑張り抜いた「タージマハル・ホテル・ムンバイ」の従業員たちを最初から最後まで描いた2時間の作品です。
作り物でない証拠に、せっかく警察の第一陣が2階の警備員室に到達して、敵の動きを把握できる場所を占拠したのに、その有利さをほとんど活用もできずに殺されていってしまったり。
そこに残った主人公も、その有利さを何一つ活用できずに震えていたり。
こんな間抜けな話、作り物の話としては成立するはずがないのですが、これこそが史実なのかも知れません。
とはいえ、映画の観客としては、割り切れない(不完全燃焼)こと、おびただしく、むしろ「作り物だ」と観客が最初から知っている「パニック映画」だったなら、それはもう最高の作品だったろうと思います。
来年、大きなイベントが開催されるわが国において、テロが起きない保証はなく、予防接種的な効果を含め、観ておく価値が十二分にある映画でした。
宗教に名を借りて憎悪をかき立て、自分の手は汚さずに純真な「信者たち」に犯罪を犯させる。
このような者を、なぜ天は罰されないのでしょうか。
神など、存在しない、なによりの証拠なのかも知れません。
もっとも、高度に政治的な作為を感じる映画でもあります。
このインド映画が出てきた時というのは、インド・カシミール州のイスラム系住民の自治権が剥奪されたのとほぼ同時だったのですから。
100人もの客がホテルの奥にあるチェンバーズから脱出します
映画「ホテル・ムンバイ」(アンソニー・マラス監督)から。
ハイジャックや爆破、銃殺など、多くのテロ事件が、
事実に基づいて映画化されるけれど、作品にしやすいのか、
犯人たちの動機が、単なる宗教や差別などの問題だけなのか、
どうして繰り返して起こるのか、私には理解できない。
自分たちの想定した敵に対して、一心不乱に突っ込むなら、
どうぞ、勝手におやりください、と言えるけれど、
それまで普通に真面目に生きてきた一般人をターゲットとした
無差別の殺人については、何度同じようなテロ作品を観ても、
感情移入もできなければ、解りたいとも思わない。
さらに、こういった事件の被害を拡大させるのは、
金持ちのわがままか、現場にいないマスコミ、と決まっている。
「落ち着いて静かにしてましょう。ここが犯人にバレないように」
そう説明しているのに、その静けさを破るのは、
「家族に会いたい、開けて」「ドアを開けろ」と威張り散らす
金持ちの人たち。
外に連絡を取るのは「居場所がばれる」と心配していたのに、
「私は客だぞ!」と大声をあげ、罵倒する。
それを受けたマスコミも「脱出作戦の情報が入りました。
「100人もの客がホテルの奥にあるチェンバーズから脱出します」
テレビを見ていたテロの首謀者が、実行犯に無線連絡、
「チェンバーズに行け、大勢が逃げる」と。
そして、逃げ遅れた何人かが銃殺されてしまうシーン。
本来なら、テロ事件の犯人を憎みたいのに、逆になってしまった。
もしかしたら、監督が伝えたかったのは、
金持ちとマスコミに対する警鐘かもしれないな。(汗)
直視不能。
死者100人超、負傷者290人。
2008年、タージマハル・パレス・ホテルでのテロ事件が題材。
途中まで観て、恐ろしさのあまり中座。
2ケ月後、心落ち着けてラストまで鑑賞。
ほとんど直視不能。
テロリストにホテルを占領され、逃げ惑う人々や、毅然と誘導する従業員たちの恐怖をリアルに描いた作品。
テロリストとしてマインドコントロールされた若者たち。
神の為とは言え、それが正しい行いだったのか、特殊部隊に追い詰められ、死にゆく顔は悲しく歪む。
その表情から、特攻隊が頭をよぎったのは私だけだろうか。
憎むべきは、政治や宗教、権力保持のために手段を選ばない大人たち。
恐ろしく悲しい作品でした。
二本立て二本目。98%救いなし。ここまで悲惨な映画はそうはない。怖...
二本立て二本目。98%救いなし。ここまで悲惨な映画はそうはない。怖いな、オーストラリア映画。
神、神、神、神、うるさいねん、テロリスト。君たちの神は、異教徒は皆殺しと教えているのか?
人類の叡智が及ばぬもの。それを「神」として尊崇の念を持つことは大切。◯◯教、◯◯教、◯◯教というものは「神」ではない。それは利権を欲した人間が創り出したもの。目を覚ませ!テロリストたち。自分自身で考えよ!
とにもかくにもこの映画、ずっと緊張しっぱなし、本当に怖い。実話ベースなのがすごい。本当はもっとずっと想像を絶する恐怖だったんでしょうね。日本は幸せですね。しかし遠くない将来、日本でも…もうオリンピックとか中止でいいんじゃないでしょうか(笑)
社会性、エンタメ性ともに高いレベルの傑作!
2008年に実際に起こったムンバイ同時多発テロを題材に、ホテルに閉じ込められた宿泊客とホテルマン達の脱出劇を描いた本作は、凄惨な現実を直視させられ、ドスンと腹にくる出色の出来でした。
デヴ・パテル演じるシク教徒の主人公アルジュンを中心に、様々な人物の心情を捉える優れた群像劇であると同時に、彼らの行末には全編にわたってハラハラさせられ、高いエンタメ性も保証しています。
ホテルに閉じ込められた不安の中、ある宿泊客が「イスラム過激派を連想させるため、ターバンを取ってくれ」とアルジュンに命じますが、彼が「ターバンはシク教徒にとって高貴さと勇気の象徴であり、如何に神聖な伝統であるか」をその女性に説く場面はとても感動的。
そんな彼だからこそ、客が怪我した際には率先してターバンを脱ぎ、包帯がわりに巻いてあげるシーンが美しく輝くのです。
「信仰上どうしても譲れない信念」と、「信仰を後回しにしてでも為すべきこと」がどちらも丁寧に描かれていることには非常に好感が持てました。
インド国内のシク教徒の割合はわずか2%ほどらしく、日本人にもあまり馴染みのない彼らの宗教観を垣間見られる点でも、一見の価値ありです。
その一方、テロを引き起こす少年兵達にも、彼らなりののっぴきならない事情があり、主人公と同様の純粋な信仰心を持っていることが分かります。彼らを私たちと等価な一人の人間として描き、単純に悪役扱いしないフェアな視線には思わずグッときました。
そんな彼らを安全圏からコントロールし、テロを生み出す張本人となっている男が、誰よりも宗教を蔑ろにし、都合の良いように利用する姿には憤りを感じずにはいられません。
「デヴ・パテル主演作にハズレ無し」をまたしても証明してみせた本作は、私たちに信仰の尊さを教えてくれると同時に、今世界中で起きている分断を想起せざるを得ない、社会的意義も高い素晴らしい作品です!
映画の醍醐味。
ニュースだと自分には関係ないと思ってた事件が、
自分にも起こりうる事だと、
同じ地球で起こってる事だと体験させてくれる。
素晴らしい映画だったと思います。
演出は多分に入ってると思うけど、
そのヒーローチックな演出が自分をその場に
引き込んでくれる気がした。
演出は入ってるけど、
被害者側の過剰な正義感だけではなくて、
被害者側にも悪い奴はいるし、
(乳首のサイズを聞くって強烈だった)
加害者側にも生い立ちや立場、宗教の解釈なども
描かれてて映画的演出は入ってるけど、
リアリティもあった。
アーミーハマーと言う端正な、見るからにヒーロー面の
なんとかしてくれそうなキャラの死が、
この事件の重大さを分からせてくれた気がします。
現実にヒーローはいないし、普通に生きててもある日事件に巻き込まれて死ぬ。助けての声は届かないし、
ベラベラ喋ってピンチを脱出したり、
アクションシーンなんて起こらない。
この不条理さが現実なんだなと痛いほど分かりました。
あの場にいたら、自分も何も出来ずただただ誰かに従い
逃げるだけだったろうな。
巻き込まれたら最後。
とても辛い話だったけど、
エンターテイメントにもなっててとても良い映画だったと
思います。
緊張感が伝わってきて、怖かった…
実話だということだが、私はよく知らなかった。逃げてしまった人もいるけれど、あの状況下でお客様を守ろうとしていた従業員たちには頭が下がる。一方で、無知な若者たちを利用して、恐ろしい事件を起こさせた電話で指示していた者には強い憤りを覚える。インドの状況はよく知らなかったが、貧富の差が激しい。スラムのような街から、舞台となった超リッチなホテルまである。そのことも、事件が起きた背景にあるのだろう。大都市なのに、テロに対してあまりにも無防備だった。また、占拠したのは、20名にも満たない若者たちなのに、地元の警察がなす術がなかったことは、非常に残念だ。もっと早く対応していれば、犠牲者ももっと少なくて、済んだのではないだろうか? 改めて、テロ行為の恐ろしさが身に染みる映画だった。
心を動かすもの
テロリストの襲撃を受けたことを知った調理場の従業員たちの姿が美しかった。
「小さな子どもがまだ3人いるんです」とその場を離れたがった一人を誰も責めることなく、「お客様は神様ですから」と、多くの従業員が宿泊客を匿うために残った。
よく聞くこのセリフが安っぽさを感じさせないのは、このシチュエーションで、従業員が自発的に口にした言葉だからだ。決して「お客様」目線の言葉ではないのだ。
そして、この「神様」という言葉は、テロ行為を先導するものやそれに付き従うものたちへの、最高の皮肉にもなっていて、とても深い。
特に、足に銃撃を受けて苦しむ人質監視役の若いテロリストは、ホテル従業員の揺るぎない「神」への献身と見事なまでに対照的であった。
「神」の代弁者であるテロ作戦の指導者は、回線の向こうで敵意を扇動し、残酷で気まぐれな指示を出し続けるが、一向に故郷の家族への金銭的保障は進めてくれない。
この若者にアメリカ人の夫を目の前で殺され、深い絶望の淵でイスラムの経典を唱え始めたイスラム系の女性の人質も、なんのためらいもなく「殺せ」と命じる。
結局彼は、信じていたはずの「神」が自己矛盾を起こしていることに、深く絶望しながら短い生涯を終えることになる。
調理場の従業員も、若いテロリストも、心を動かされて「神への献身」を決断する。
彼らの運命を分けたのは、その根源に欲望や損得勘定の有無があったかどうかの違いではなかったか。そんなことを思った。
信仰は、報われること、救われることを期待して深まるものではない。
燃えるホテル・ムンバイは、無償の愛に支えられた人々と、私利私欲や狭隘な自尊心を満たそうとする人々とが対立する世界の象徴だ。
人間としての純粋な思想との対比
個人評価:4.2
素晴らしくリアリティがある撮影と緊迫感。
被害者となった宿泊者やホテルマンの演技に嘘はなく、事件を目撃しているかのような没入感を与えられる。
本作はテロの実行犯とホテルマンの心情を見事に描けていると感じる。あのホテルマン達の自分の命を顧みず、お客様を助けたいと行動する心情はどこから来るモノだろうか。それはホテルマンとしてのプロ意識や、ホテルへの愛からだろうか。いや、それだけではないはずだ。インドというお国柄や宗教観からでもなく、そこには人が人を思いやる、純粋な人間の優しさや価値観が流れており、それは宗教よりももっと純粋な人間としての感情だ。その価値観と、テロを起こす犯人達の盲目の思想とを対比させ、事件を通して、人間とは何かまで描いていると感じる。
本作が映画長編デビューというこの監督。これから注目すべき作り手の1人となった。
胸が痛くなる実話
ホテルマン。
どっと疲れる作品。
2008年、イスラム原理主義の過激派が起こしたホテル・ムンバイでのテロをほぼ再現したもの。
イスラム過激派の思想・・・西洋文化によって自分たちが置き去りにされ、敵対心を持つようになり、西洋人を中心とした富裕層を殺すことが目的だった。アンチテーゼを作り出し、思考停止にし、洗脳することによって殺すことが聖戦だと思い込ませる。日本人から見ると、イスラムは怖いと思ってしまいがちだが、決してそんなことはない。むしろイスラムの方々は助け合いの精神が他の民族よりもあり、優しい。
格式あるホテルだからこそ、お客様は神様のもといかに安全に避難させようと奔走したのかが伝わってくる。そこには自分のことしか考えていない外国人もいたし、避難している中で疑心暗鬼になって周りが信じられなくなった老女もいたが、普段から心がけている心からの接客によって落ち着きを取り戻し、一丸となって脱出の機会をうかがう。
犠牲になった大半が従業員というのもこれまた悲しい。
テロの犠牲者の立場だけではなく、テロ側のことも垣間見ることができて、双方の考えていること、心理戦も分かり、なおさら緊迫感が伝わってくる。見終わったあと、どっと疲れた。
恐怖、絶望、不信、焦燥。負の感情がヒシヒシと伝わってくる。
鑑賞中の恐怖感と絶望感、鑑賞後の虚無感と疲労感。こんなにも、負の感情に包まれた作品は今まで見たことありませんでした。。スゴい作品だと思いますが、2回目を見たいという気にはなりません。あまりにも、重すぎる・・。そして、これが実際に起こってしまった出来事だと言うことに絶句してしまいます。テロリストたちの襲撃シーンは忘れたくても忘れられない。よくある「撃つぞ!おとなしくしろ!」などの脅し文句など一切ない、見つかった瞬間に撃ち殺される恐怖。そんな恐怖を突然味あわされる絶望。そういった感情がヒシヒシと伝わってくる。そんな中でも宿泊客の安否を優先するホテル従業員たちの行動に言葉にならない尊敬の念を感じました。特に、さっきまで銃撃にさらされてたフロント係の女性が怯えながらすぐに客室に次々と電話し始めたシーンはとても印象的でした。
ただ思うことは、この作品ではムンバイの人々がこのテロ被害を乗り越えて立ち上がる話を描いたシーンが短すぎるように感じました。「テロとの戦い」は、「報復」ではなく、「乗り越えて前に進むこと」だと個人的には思います。そういう意味で、ムンバイの人々のこの悲劇の後、立ち上がり前に進んでいこうとする姿はもっとしっかり時間を取って、入れてほしかった・・。他作品で恐縮ですが、「パトリオットデイ」ではきちんとそこがクローズアップされていたから悲劇のストーリーだけれども、最後のシーンでは涙したし、鑑賞後は希望を感じることができた。しかし、この作品の鑑賞後に感じることは、やるせない気持ちとテロリストへの憎悪でした。「憎しみの連鎖」はそれこそこういうテロ組織が狙っていること、そういう意味でそういう感情のまま、この作品が終わってしまったのは非常に残念です・・。
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