劇場公開日 2019年9月27日

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「社会性、エンタメ性ともに高いレベルの傑作!」ホテル・ムンバイ セッションさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5社会性、エンタメ性ともに高いレベルの傑作!

2020年6月9日
iPhoneアプリから投稿

2008年に実際に起こったムンバイ同時多発テロを題材に、ホテルに閉じ込められた宿泊客とホテルマン達の脱出劇を描いた本作は、凄惨な現実を直視させられ、ドスンと腹にくる出色の出来でした。

デヴ・パテル演じるシク教徒の主人公アルジュンを中心に、様々な人物の心情を捉える優れた群像劇であると同時に、彼らの行末には全編にわたってハラハラさせられ、高いエンタメ性も保証しています。

ホテルに閉じ込められた不安の中、ある宿泊客が「イスラム過激派を連想させるため、ターバンを取ってくれ」とアルジュンに命じますが、彼が「ターバンはシク教徒にとって高貴さと勇気の象徴であり、如何に神聖な伝統であるか」をその女性に説く場面はとても感動的。
そんな彼だからこそ、客が怪我した際には率先してターバンを脱ぎ、包帯がわりに巻いてあげるシーンが美しく輝くのです。

「信仰上どうしても譲れない信念」と、「信仰を後回しにしてでも為すべきこと」がどちらも丁寧に描かれていることには非常に好感が持てました。
インド国内のシク教徒の割合はわずか2%ほどらしく、日本人にもあまり馴染みのない彼らの宗教観を垣間見られる点でも、一見の価値ありです。

その一方、テロを引き起こす少年兵達にも、彼らなりののっぴきならない事情があり、主人公と同様の純粋な信仰心を持っていることが分かります。彼らを私たちと等価な一人の人間として描き、単純に悪役扱いしないフェアな視線には思わずグッときました。
そんな彼らを安全圏からコントロールし、テロを生み出す張本人となっている男が、誰よりも宗教を蔑ろにし、都合の良いように利用する姿には憤りを感じずにはいられません。

「デヴ・パテル主演作にハズレ無し」をまたしても証明してみせた本作は、私たちに信仰の尊さを教えてくれると同時に、今世界中で起きている分断を想起せざるを得ない、社会的意義も高い素晴らしい作品です!

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