「決して痛快なお話ではないのに、また観たくなる日が来るだろうなという感じがした。」永遠に僕のもの きさらぎさんの映画レビュー(感想・評価)
決して痛快なお話ではないのに、また観たくなる日が来るだろうなという感じがした。
ラモンの「世界は泥棒と芸術家のものだ」という台詞に象徴されるように、ガンガン盗む。とにかく盗む。
それに加えてカルリートスは人を殺すことも覚えてしまった。
最初に人を殺したとき、もしくは初めて銃を撃ち、「もっと撃ちたい」と言った瞬間から、彼の破滅は加速していったように思う。
主人公カルリートスに対しては、「何かキレイでヤバイ奴」という軽薄な印象から、ラモンに対する執着が明らかになっていくにつれて段々怖くなっていった。
この子の欲望には本当に底が無いのだと実感させられるような感じで。
カルリートスにとってラモンは、間違いなく運命の人だったと思う。
出会っていなくても相変わらず盗みは続けていたと思うけど、あんな深みにはまることは無かったかもしれない。
そもそもカルリートスは何かの目的のために盗むというよりも、お腹が空いたからごはんを食べる、みたいな普通の感覚で、行きたいところに行く、というような無邪気な気持ちで盗んでいただけだった。
そんな戯れに意味を持たせてしまったのがラモンだったのだと思う。
ただ自由に、好きなように振舞っていたいだけだったカルリートスが、ラモンと出会ったことで自由を失い、どんどん孤独を極めていく様は見ていて切なかった。
二人の関係に関しては、お話が進むにつれて、BLみたいな雰囲気が流れなくもないし、エロさも無いわけではないんだけど、絶妙なスレスレのラインで進んでいく感じだった。
そして個人的にはそれがすごく良かった。
終盤、カルリートスが一人で涙を流すシーンがあって、何故泣いているのか最初はわからなかったんだけど、やっぱり彼は最後までラモンに執着していたのだと思う。
カルリートスの両親や地元警察はなぜもっと早く二人の犯行に気が付かなかったのか、とか、撃たれたじいさんのリアクションの薄さとか、そういうところには突っ込まずに観たほうが楽しめると思うけど、音楽と映像のバランスも美しくて、作品全体に漂っている独特なコメディの雰囲気がクセになる映画だった。