劇場公開日 2019年8月16日

永遠に僕のもの : インタビュー

2019年8月16日更新
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美しき連続殺人犯を演じた新星ロレンソ・フェロ 難役に挑んだ日々と今後の夢を語る

美しき連続殺人犯のはかない青春と破滅を描いた映画「永遠に僕のもの」が、8月16日から公開となる。“南米のディカプリオ”や“ポストティモシー・シャラメ”など華々しい異名を持ち、本作で鮮烈な銀幕デビューを飾ったアルゼンチンの新星ロレンソ・フェロに、出演の経緯や役づくり、そして今後の夢について話を聞いた。(取材・文/編集部、写真/江藤海彦)

私が、生きる肌」「ジュリエッタ」で知られるスペインの巨匠ペドロ・アルモドバルがプロデュースを担い、アルゼンチンで大ヒットを記録した本作。17歳の美少年カルリートス(フェロ)は、幼い頃から窃盗などの悪事に手を染めてきた。ある日、転校先の新しい学校で、荒々しい魅力を放つラモン(チノ・ダリン)と出会う。ラモンに強く惹かれたカルリートスは、2人でチームを組み、新しい遊びに熱狂するように犯罪を重ねていく。しかし、楽しくも狂った日々は、思わぬ形で終わりを迎えようとしていた。

主人公のモデルとなったのは、17歳から相棒とともに窃盗を重ね、わずか数年で12人以上を殺害した実在の人物カルロス・エディアルド・ロブレド・プッチ。凶悪な犯罪行為だけではなく、「ブラック・エンジェル」「死の天使」と評されたほどの美貌でも世間の注目を集めた。映画化に当たり最も重要なカギとなるのが、カルリートスを演じられる俳優の発掘だった。フェロはオーディション応募のきっかけとなったのは、自身の父親だったと明かす。

「父の日に撮った写真が、ある雑誌に掲載されて、映画のプロデューサーの1人が父に連絡してくれたんです。僕は父からのメールを見て、1週間後にオーディションに行きました。『何が起こるか、試しに行ってみよう』という気持ちでした。別に緊張もしていなかったし、『この役を絶対に勝ち取ろう』という気もありませんでした(笑)」

好奇心に突き動かされて参加したオーディションで、フェロは1000人の中から主役の座を射止めた。「ルイス・オルテガ監督は、僕の何を勝ち取る思いもなくオーディションに臨んだ姿勢を気に入ってくれたんだと思います。犯罪者の役として作りこんで行ったわけではなく、若者らしく何も利益を求めない気持ちで行ったところが選ばれた理由かな」と振り返る。

ブロンドの巻き毛、吸い込まれるような大きな瞳、艶やかに濡れた柔らかな唇、磁器のように滑らかな白い肌……。圧倒的な美貌をたたえ、躊躇なく軽やかに窃盗や殺人を繰り返すカルリートス。「みんなどうかしてる。もっと自由に生きられるのに」と呟き、盗みに入った店で焦るラモンを「生きてるんだ。楽しまなきゃ」と諭すなど、天使のように愛らしい容姿に、はかり知れない狂気と誰にも理解されないという絶対的な孤独を秘めている。難しい役どころと向き合ったフェロは、ベースとなった犯罪者プッチをコピーするのではなく、オリジナルのキャラクターを立ち上げるというアプローチで、役づくりに取り組んだという。

「オルテガ監督と演出コーチと一緒に、1週間ほぼ毎日のようにリハーサルをしました。カメラチェックをしながら『これはカルリートスだね』『これはカルリートスじゃないね、使えないね』という感じで(表情や仕草を)試して、長い時間をかけて作り上げていきました」

ボブ・ディランやアニマルズも愛した名曲「朝日のあたる家」の不穏で切ないメロディにのせて、拳銃、絵画、宝石などを華麗に盗み出し、“自分のもの”にしていくカルリートス。ナチュラルかつエレガントに、まるでアートを作り上げていくように、犯罪行為へと駆り立てられていく。被害者たちが眠りにつくように絶命する殺人シーンもどこか美しく非現実的なものとして描かれているが、カルリートスは美への独占欲や執着心を胸に秘めていたのだろうか。

「(美への思いは)意識して撮影に臨んだのではなく、演じていく中で後から気付きました。撮影現場がデコレーションされていて、ファッションもかっこいいものになっていて。映画自体がものすごくスタイリッシュで、美的なセンスを重視していました。そして、作品の隠れたテーマは『美しいものが、実は悪魔であった』ということなので、美しさは作品の中で重要な役割を果たしていると思います」

そんなカルリートスが最も執着心を露わにするのが、相棒のラモンだ。ラモン役を務めたダリンについて、フェロは「初めて見た時に、すごく良い俳優だなと分かりました。彼はいろんなことに気が付きます。感覚が優れているんでしょうね」と、劇中でのカルリートスに重なるように、まさに一目で心を射抜かれたと告白。「チノとは、今はものすごく仲の良い友人です。撮影のほぼ全部のシーンが彼と一緒だったので、良い化学反応がありました」と、やわらかな笑顔を浮かべる。

カルリートスがラモンに向ける思いを表現するため、フェロは「まず自分が恋をしている時と同じように演じました」といい、燃え上がるような愛情をこめたという。しかし、カルリートスの心は徐々に変化する。「相手と一緒にいたとしても、どんな愛もずっとは続かない。ラモンは『有名になりたい』と言ってテレビに出る。カルリートスは、ラモンが好きで盗んでいるわけじゃなく、お金のために盗んでいると気付いてしまう。少しずつラモンへの軽蔑に似た気持ちが芽生えて、最初に出会った頃とは変わってしまったという感覚があったと思います」と、ある衝撃的な行動の裏にあった繊細な心情を紐解く。ラモンへの愛と憎しみを募らせていく一方で、自分とは大きく隔たりのある価値観に軽蔑を抱き、ますますカルリートスは孤独感を深めていくのだ。

心の変化を如実に伝えるのは、作品の冒頭と終盤に挿入されるダンスシーン。同じように伸びやかな動きで、ポップなダンスを見せるカルリートスだが、彼を取り巻く環境は取り返しのつかないほどに変ぼうしている。フェロは「カルリートス自身が最初と最後では同じ人間ではなかったから、ダンスは似ているけれども違う部分があったと思います。最後のダンスはよりヘビーな感じになっている」と語る。

デビュー作にして強烈なキャラクターを演じ上げ、「次はもっと普通の人の役をやってみたいな」と笑い交じりに呟くフェロ。大の映画好きだそうで、「映画を愛していますから、たくさんの作品に出てみたいと思います。人々の視点を変えられるような映画、教育になるような映画をやってみたいです。映画も含むアート全般は素晴らしい教育だと思っていますから」と言葉に熱をこめる。「アルモドバル監督ともまた一緒に仕事をしてみたいですし、アルゼンチン人の素晴らしい監督と一緒にやってみたいです」と、さらなる野望をのぞかせた。10代にして掴んだ難役を見事に演じ切り、美しくも妖しいオーラで世界中の人々を魅了したフェロは、真っ直ぐな瞳で今後の飛躍を誓った。

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