「何を手に入れたかったのか」永遠に僕のもの yamappleさんの映画レビュー(感想・評価)
何を手に入れたかったのか
気になっていたのに見逃して、ギンレイホールで再演してくれたので観に行くことができました!
終始、カルリートスが本当に欲しかったものはなんだろう?と考えさせられる映画だった。
主人公カルリートスは犯罪を「悪い」と思っていなくて、「自由に楽しく大胆に」行動していたら、それが強盗であり、殺人であり、犯罪だった、という、物凄く不思議な青年。ただ、美意識は高くて、良いものや美しいものを愛でるのが好きだし、でもそれを人に気楽にあげてしまう。
純粋で子供のようで、でも悪いことを平気でする違和感。母親に本物の銃を突きつけて「本物をママに突きつけると思う?」と嘘をついて天使のように笑う恐ろしさ。悪いことを悪いと感じない、むしろ自由の象徴であり冗談や遊びなのだと捉えるような不思議な価値観で、なぜそんな人になったのだろう?ともっと深掘ってほしかったなあと思った。
そして工業専門学校でのラモンとの出会い。
カルリートスが野性味を持つラモンと仲良くなる姿は、とにかく絵になる。どこか同性愛的な雰囲気を醸し出していても、決定的なシーンはあまりない。でも、カルリートスがラモンをとても求めていることはわかる。
なのに、ラモンの窮地の時に彼は助けに行かなかったのだよねえ。後から「警察の罠だったから」と話しているが、本当にそれだけなのか?でもその結果、ラモンとの信頼関係が崩れてしまい、交通事故をあえて起こしてラモンを殺してしまう。なんというか、不器用というか、それすらも彼の中では一つの「自由」だったと感じさせられた。
最終的には、カルリートスは自分と同じ世界観で生きられる人がいないから、孤独だったのかな?脱走しても家に電話して、ラモンの旧家で踊るシュールさ。本当に手に入れたかったものは結局欲しい形で手に入れられなかったから、自由に自分のものにできるようにして(つまり殺して)、そしてその思い出の地で踊り、最大の自由を表現する。刹那的で、なんとも不思議な犯罪映画だった。
カルリートスを演じるロレンソ・フェロが本当に美しくて、映画でも「マリリンモンローみたい」と言われていたけれど、私はエマ・ワトソンを思い出してしまった。
ちょっとストーリーとしては間延び感があるし、人物像がイマイチわかりづらい構成だったけど、ロレンソがとにかく良かった。