「フェロはきれい」永遠に僕のもの suiさんの映画レビュー(感想・評価)
フェロはきれい
カルリートスから見た世界が描かれている点が良かった。
彼の外側は美しいが、内側は空洞で、世界を現実として捉えられないみたいだ。
犯罪の描写はあっさりしていて、大した意味のない光景に思える。
盗んだ歓びもなく、殺した手応えもなく、
きれいな物を手にとっては手放し、何かにびっくりしては撃放す。
そんな透明な世界で、ひとりきりでいる寂しさ、みたいなものは映っていただろうか。
ラモンは魅力的だが、俗物だった。
結局は彼でさえ、カルリートスをこの世に引き留めるに値しない。
孤独を感じる時、世界が透明になる感覚というものがあるように思う。
自分の周りに水の膜が張っているように、外の世界のものが遠い。
遠いから現実感がない。
犯罪を美化することに少し抵抗を感じたが、
水に揺れる世界には、愛も憎しみも、憐れみも共感も、抱けないのだった。
イアリングをつけた自分に見とれる場面が、取り分けきれいだった。
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